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    ゆきま

    @yukima_SD

    右水

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    ゆきま

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    推敲なしのため読みにくいですが冒頭。
    書き終えてはいるのでここから始まる同僚水本出ます!

    #同僚水
    #腐向けKTR

    7月に出す🐺🦇同僚水 俺はあの時一度死んでいるーー

     次に起きた時には、道端に倒れていて、急激に喉が渇いていた。ここがどこかもわからず、水を求めて彷徨い歩いていると、近くを通りかかったご婦人が心配そうに声をかけてきた。ありがとうございます、と言いかけてそちらを向いた時、口の中で犬歯が疼いて、こいつを食えと本能が命令してくるのを感じた。
     直感的に、このままここにいてはまずいと判断し、心配してくれたのに申し訳ないと思いつつ何も言わずに走って逃げた。


    「はあ、はあ………」
     だいぶ遠くまできたから流石に追っては来ないだろう。もっとも、心配して声をかけた男が何も言わずに逃げたのだから、そもそも追ってくるわけないのだが。狭い路地裏に潜り込んで、ビルの壁に背中を預ける。
     相変わらず喉の渇きが止まらない。腹も減っている。何か食べたいと想像したのは、人間の食べ物ではなく、滴る生き血だった。血液を寄越せと本能に"理解させられた"のだ。震える手で自らの犬歯に触れると、およそ人間ではありえないような鋭く尖った歯があった。
     なんとなく自分の状況を理解してため息をつく。何がどうなってこうなったのかは分からない。だが、歯が鋭くて人の生き血を糧にして生きる化け物を俺は知っている。
     嫌な予感が頭をよぎった。
     一縷の望みをかけてなんとか自宅へ戻り、あるだけの食べ物をガツガツと食べた。腹は膨れているのに、どうしようもない飢餓感は消えなくて絶望した。もっと別の食事を寄越せと身体が、本能が言っている。
     次いで近くの池に行ってカエルを捕獲した。吐き気を催しながらも、その身体に牙を突き立て血液を啜ると、それまで満たされなかった飢餓感から徐々に解放されるのを感じた。

     ここへきて、ようやく俺は諦めてこの状況を受け入れた。俺の予想のとおりだった。

     なんでこんなことに。これからどうしたらいい。何も良いか分からない。
     重い身体を引きずって家に帰り、その日は何も考えずに寝た。


     ****


     全て夢だったら、と少しだけ期待して翌朝目を覚ました。おそるおそる歯に触れると、やっぱり尖った犬歯があって、状況は何一つ変わっていないことを嫌でも自覚させられた。
     時間が経てば腹が減る。とてもじゃないが生きている人間から血を啜るなんて俺にはできない。そうなると当面はその辺のカエルやらトカゲやらから血液を摂取するしかなさそうで、この身体を疎ましく思った。

     日がな一日あてもなく彷徨って、人以外の生き血を啜って生活していたある日、「帝国血液銀行」と書かれたビルの前を通りかかった。

    血液銀行。
    血液の売買を行う会社。

     カエルやトカゲも悪くないが、毎日毎日探すのに苦労している。ここならば、無理なく食糧を調達できるし当面は凌げるだろう。血液をくすねるのは申し訳ないが。
     そう思った俺は早速行動した。幸い吸血鬼になる前は別の会社で働いていたので面接にも困らず、会社側も人材が不足していたため、支障なく入行することができた。



     ****



     入行して半年が経った。
     仕事はまずまずといったところだ。前の会社もそうだが、上にのしあがろうとしている連中は多く、そういう上司や同期に手柄を取られることもしばしばあった。俺は当初血液銀行で働ければ良いと思っていたので上を目指すことへのこだわりはなかったが、そういう姑息な連中を相手にしているうちに、力がないものは虐げられるのだと学んだ。会社の中の序列の話だ。ならば上を目指せばいい。そうして俺は業務に邁進していった。上に上がるための営業努力は惜しまなかったが、それはそれとして、売血で得た血液を無償でいただくのは気が引けたので、自分のためでもあるが会社に貢献することでその借りを返すようにした。




     その噂が流れるようになったのは年の瀬の12月。前々から言われていたようだが俺はちっとも知らなかった。
    「売血された血液が盗まれている」
     もともと血液の管理は十分とは言えず、職員であれば誰でも保管庫へ出入りができる状態だったので、俺は時々そこへ侵入して血液の瓶を拝借していた。近頃監査が入ったことで、その杜撰な管理体制が浮き彫りになったらしい。
     俺としては非常にまずい。監査の指摘に対する是正措置を講じられると、今まで以上に血液を入手することが難しくなるだろう。せっかく血液銀行に入行したというのに、またカエルやトカゲの血液生活に戻るわけだ。
     人の血はカエルやらトカゲやらと比べるとかなり美味い。比較的楽に手に入れられる上美味い食糧だったのに。

     その噂が流れ始めて、俺はしばらく血液をくすねるのをやめた。犯人探しをされても困るからだ。ヒューマンエラーだということにしておいて欲しい。
     結局犯人探しはされなかったが、俺の予想どおり、血液の管理はかなり厳重になった。まず、許可された数人の職員しかその保管庫に入れないし、管理簿も月一回のチェックが入る。これ以上ここから血液をくすねるのは難しいかもしれない。

     そのうち家に保管してあった血液も底をついて、再び小動物を探す生活に戻ったが、会社の方も忙しく、家に帰ってから探しに行く気力もなく、だんだん血液を摂取しなくなっていった。かといって普通の飯を食ってもそれが身体を維持することにならず、俺は目に見えて痩せていった。

    「お前、最近何かあったのか?」
     わかりやすくやつれていく俺を見かねて声をかけてきたのは、入行してからずっと隣の席にいる、同期であり同僚の男。
    「いや、ちょっと食欲がないだけだ、心配ない」
    「お前目に見えて痩せてるぞ、大丈夫だとは思えない」
    「……仕事が立て込んでて疲れてるだけだ」
     何か考え事をしているような素振りをした後、男は俺の手を引いて歩き出した。
    「えっ、おい…、仕事っ…」
    「………」
     抵抗する気力もなく、黙ってついて行くと、向かった先は医務室だった。「不在」の看板がかけられたドアを開けて俺を中に放り込み、後ろ手で鍵を閉める。そして、所在なく瞳を彷徨わせている俺に向き合って静かに口を開いた。
    「吸血鬼」
    「ッ………!」
    「って、知ってるか?」
    「………はあ?」
     心臓が飛び出るかと思った。俺は会社で正体がバレるようなことはしていないはずだ。ならばこいつのこの話はなんの意図があるんだ?
    「人の生き血を啜って生きる化け物。最近売血された血液が盗まれているのは、きっとそいつのせいだと俺は思ってる」
    「…………それを、なんで俺に」
     バレるようなことはしていない、はず、なのに。
    「お前、心当たりあるかなあって」
     口の中がからからに渇いてゆく。目も泳いでいるかもしれない。落ち着け、落ち着け。
    「っあ、あるわけ、ないだろ…」
    「そうか?俺、掃除のおばちゃんと仲良くてさ、水木が度々保管庫に入るの見たって教えてくれた。俺たち営業はあの部屋に入ることはあまりないだろ?何しに行ったんだ?」
     まっすぐ俺の瞳を捉える三白眼から逃げられない。接待の時には口をついて出てくる嘘も、今は何も思いつかない。
     コツコツと革靴を鳴らしながら一歩一歩近づいてくる男。蛇に見込まれた蛙のように動けない。いつも蛙を食ってるのは俺なのに。
    「なあ水木、教えてくれよ」
    「俺は…………」
     壁際まで追いやられて、とうとう目の前まで来た男。
     ああもうどうにでもなれ。俺を火炙りにでもなんでもしてくれ、この化け物を。

    「…おまえの見立ての通りだよ。人から血を直接吸うのはどうにも俺には無理で…だから、ちょうどいいと思ったんだ」
    「…………」
     特に驚きはしない男。何を考えているのか全く読めない光のない瞳がこちらを見つめて、無言でそれで?と先を促してくる。
    「もう盗らねえから安心しろよ。お前のことも襲わないし、この会社も辞めるから、だからー」
    「俺の血やるよ」
    「え?」
    「見ず知らずの人間を襲えないんだろ?知り合いで、かつ合意の上なら良いんじゃねえの?俺ならお前の同僚だし、俺も良いって言ってるし」
    「ッ…いや、意味わからん…はあ?何言ってんだ」
     男から離れようと顔を背けると、両手で頬を包まれてぐいと己の方へ向けさせられた。
    「お前の餌になっても良いって言ってる」
     普段そんな顔なんかしないくせに、あまりに真剣な顔をして言うものだから、それに気押されて肯定する言葉しか紡げなかった。
    「お前、ここ最近毎日毎日倒れそうな顔して来やがって。…ほら、とりあえず吸っとけ」
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