Goodbye Happiness 大きな椅子の上に立って、グランはめいっぱい右腕を伸ばす。紙で作ったピンクの花を居間の壁に飾りつけるためだ。
「やべぇっ! シンクのやつ、もう帰って来たぜ!」
窓から外を眺めていたビィが、あわてて部屋を飛びまわる。
「待って、あと少しでぜんぶ、おわる……」
「あーっ、もう、高い所のはオイラがやるから、お前はロジャーとクラッカーの準備しろって!」
「なになに⁉︎ シンクってば、もう帰ってきたの⁉︎ ケーキの仕上げ、まだ終わってないよ〜っ‼︎」
にわかに騒ぎだす三人をよそに、シンクはグングン丘をのぼっていく。
洗濯カゴを脇に抱えて、ドアノブを回した。
「──ッ!」
パンパンパンッとはじけた大きな音に、シンクの獣耳がピンと立ちあがる。
2041