あこがれクッキー貰ったバレンタインのお菓子を食べきるのを島崎さんに手伝ってもらっていたら、ある女の子がくれたクッキーを食べるなり「これ、美味しいですね」と言って5個あるうちの3個をあっという間に食べた。僕も味を確認したいから半分こで食べようと決めていたのに、この人は僕に聞きもせず一個多く食べた。そんなに美味しいのか。
「どんな味?」
「たぶん、アールグレイ。」
アールグレイ。最近どこかで見たような。そうだ、このあいだ時間を潰すために立ち寄ったカフェのメニューに書いてあったんだ。適当にアイスティーを頼もうとしたら、紅茶にこだわっている店だったようでアイスティーという文字はなく、様々な紅茶の銘柄が書いてあった。たしかそのうちの一つだったはず。
とっさに頼んだカフェオレを飲みながら紅茶の種類を調べたから覚えていた。
「紅茶、好きなの?」
「それなりに。」
「へえ。コーヒーを飲んでるところしか見た事なかったから意外だな。」
「どちらも好きですよ。時と場合によるだけで。」
僕も紅茶のクッキーを一つ手に取る。クッキーは黒い粒のようなものが混ざっていて、プレーンのものと比べると紅茶の色に染まって全体の色が少し濃い。
味は……まあまあ美味しい。けど、
「僕にはまだ早いかも。」
「そうですか。」
興味なさそうにそう言って僕に断りもなく残りの一枚を持って行った。
「みんなキミに理想を抱きすぎ。」
「え、何の話。」
「10代の学生にしては贈るものが大人びているんですよ……味とか、包装とか。学校でのキミって……ふふ。」
「なんだよ。」
「そうとう高飛車で鼻につくガキなんだろうなって。」
「お菓子分けて貰ってる人の態度じゃないなあ……もうあげないよ。」
「冗談ですよ……」
お菓子を隠すように腕で覆ってみたが、簡単に払いのけられ次のお菓子を持っていかれた。
「あと最後に。さっきのクッキー、年下の女子からでしょう」
「……合ってる。何でわかるの」
「背伸びしてる気がしたので。」