新宿駅のど真ん中で、シャーロック・ホームズとジョン・ワトソンは途方に暮れていた。
用事を済ませてさっさとロンドンへ帰ろうとしていた彼を言いくるめ、観光に引き込んだまではいい。彼はある程度日本語が読めるし、地形にも詳しいから移動にはさして苦労しなかった。
退屈だと喚くかと思ったら、新鮮な環境は彼の頭脳にも程よい刺激を与えたらしかった。「あれはなんだ」「あっちの建物は」と尋ねれば、彼は喜んで知識を披露してくれる。それにシャーロックは美味い料理店を見つけるのが上手だ。食べたいものを列挙すれば、彼は観察眼とモバイルをフル活用して手頃な店を探してくれた。こちらは美味しいものが食べられて、彼は退屈しないのでウィン・ウィンというわけだ。ここまでは順調だった。
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