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    rudo125

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    rudo125

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    #侑北
    urgeNorth
    #沢深
    depthsOfAMountainStream
    #クロスオーバー
    crossover

    HQ侑北とSD沢深 宮城がURLにあったカフェバーに到着し店員に名を告げると、まっすぐ一番奥の半個室に通される。先客は一人、座っていてもわかる恵まれた体躯に特徴的なデザインの小さな坊主頭が乗っている。

    「うぃーす、お久」
    「ウィっス」

     沢北はちら、とこちらに目を遣ってメニュー表を寄越してからすぐ手元の書類に視線を戻す。どうやら今日の企画書のようだった。宮城のバッグにも同じものが入っているのですぐにそれと判別できた。

    「宮城、バレーボールって観たことある? 」
    「テレビでなら結構。ルールもなんとなくわかるぜ。母ちゃんが好きなんだよ」
    「ふーん。オレぜんぜんわかんねえんだけど大丈夫かな」
    「別に試合の解説するわけじゃねえし。同い年のアスリート集めてプライベートなこと話させたいんだろ」
     
     ちょい尖りめの女性向け雑誌で3号連続掲載の『アスリート男子特集』に二人は呼ばれていた。異種目の選手同士での座談会とファッショングラビアで構成されていて、初回は水泳とサッカー、2回めはラグビーと陸上。そして3回めにあたる今回がバレーボールとバスケットボール。
     宮城は自分のリュックからも企画書を取り出してパラパラと捲る。何回か通し読みして中身は頭に入っているものの、釈然としない点が一つあった。

    「このNG項目出したのお前? 」
    「サラリーのやつはオレだけど」
    「はーん。じゃあ恋愛に関する質問NGにしたのはお前じゃねえんだ。だよなあ、ピョン吉のことくらいしか話すことねえもんな」
    「『深津さん』、な!?」

     恋愛に関することはピョン吉オンリーについては否定しない。ということは、恋愛関連NGバレーボール側からの要望ということだ。
     バレーボール側から呼ばれていたのは大阪に本拠地を置くVリーグチームに在籍する宮侑選手と佐久早聖臣選手。宮城は名前だけはなんとなく聞き覚えがあり、オファーを受けてから二人についてネットで調べ、後悔した。イケメンだった、沢北に負けず劣らずの。しかもバレーボール選手だけあって長身。190前後のイケメン3人とオレ、ってなんの罰ゲームだよチョイスおかしいだろ流川か仙道にオファーしろやと愚痴愚痴言っていたら「リョーちゃんはオシャレ枠で呼ばれたんじゃない?」とアンナが言ってくれたので宮城はなんとかモチベーションを保ち今日の日を迎えることができていた。

    「こんだけイケメンだったらさぞ女ファンつくんだろうな。広報の戦略的に恋バナNGなんかね」
    「そんなにイケメンなの? オレより? 」
    「だまれ童貞」
    「今回の帰国で捨てる予定だし」
    「マジで? なに、勝算あんの? ピョン吉ホテル来てくれるって? 」
    「明後日飲み行く」
    「飲みってサシ? 」
    「山王のみんなとだから、二次会サシ飲みに誘う。ぜってー誘う」
    「お前さあ、ホテルまたあそこ? ピョン吉んちの近くのたっけーとこ」
    「エグゼクティブおさえてる」

     毎度密かにピョン吉こと深津の住居の近くにホテルを押さえる沢北を、宮城はヤバいとも怖いとも思っているが口には出さなかった。

    「24で童貞って引かれるかなあ」
    「そこは知らねえけど自分で童貞捨てようってのは引くんじゃねえの。おい、女性ファンが泣くからそういう話はすんなよ? マジ恋バナNGで助かったな」
    「しねえし、女性ファン減ってもどうでもいい」
    「それマネージャーの前で言うなよ」
    「言わねえよ、だからわざわざ宮城呼び出してんだろ」

     不機嫌そうに眉間に皺を寄せるその表情を、沢北は山王の人間の前ではしない。かといって自分にすごく気を許しているというわけでもなく、山王以外の人間にはある程度どう思われようが気にならないんだろうと宮城は思っている。そういう無邪気な冷酷さが沢北にはある。

    「なあ、今日のグラビアの内容見た? すげえハイブランドで揃えてくれてない?気合い入れて撮ってくれるらしいけど、深津さんかっこいいって思ってくれるかなあ」
    「知らね。ピョン吉相手に今更ビジュ押しでいこうとかくるってるだろ」
    「既成事実作るのってどう思う? そこまですれば付き合ってくれると思う? 」
    「狂ってると思う。返り討ちにあってボコボコにされて終いだと思う」
    「やっぱり? 深津さんて結構手が出るタイプなんだよね 」

     まったく実がない無駄話をしていたら、日本でのメディア仕事の窓口になってもらってるマネージメント会社のスタッフが合流した。マネージャーという立場で今日も現場に帯同してくれる。今後の流れをざっと確認し、スタジオへ向かった。



     *****


    「趣味とかほんとなくて。オフとか時間持て余してたんだけど最近日本のアニメ観るのにハマってる。これまでアニメとか漫画とかほとんど触ってこなかったから観るもんたくさんあって楽しいよ」
    「オレは服とか靴とか好きなんで休みん時は買い物よく行くかな。結構趣味多いんでオフん時はあんま暇してねーかも。佐久早くんは? 」
    「……別に」
    「おーみくーん。お仕事やでー」
    「……休みの日は大体掃除して、あと飯作ってる」
    「料理できんすか?」
    「休みの日外に出たくないから」
    「へー!誰かに振る舞ったりは?」
    「……高校の時の先輩とか、同期とかに」
    「宮は食ったことねえの?」
    「宮とか死んでも自宅に入れたくない」
    「ははは。その宮は?」
    「俺は古民家に住んでる先輩がいてて、その人んとこ遊びに行くんが趣味やなあ。今だと梅干しとか梅酒作るん手伝うたり。俺、酒あんまいけんからシロップも仕込んでくれんねん」
    「丁寧な暮らしじゃん」
    「そ、丁寧な人やねん。その人のところにいるのが好きなん」
    「先輩って部活の先輩?」
    「高校ん時の主将。しっかりしとって頭が上がらん」

    ピピピッ

     タブレットから鳴る小さな電子音に、宮が動画の撮影をストップする。
     この座談会企画が好評なのは、どうやらこの収録方法にあるらしかった。宮城もスポーツ誌や男性ファッション誌で座談会に呼ばれた経験はあるが、大抵ライターか編集の人が進行役として付く。でもこの座談会はスタジオ横の十畳ほどの個室で、本当に四人だけで行うものだった。

    「今ので何個目? 」
    「五個目やね」
    「じゃあこれが次が最後くらいか。さっき沢北引いたからオレの番か」

     テーブルの真ん中に置かれた箱の中から折り畳まれた紙を一枚掴み取る。
     進行の人間が入らないことで選手同士の素の会話を聞き出したい、という狙いがあるらしいがアスリートは話術で生計を立てているわけではない。口下手や人見知りな人種もいるわけで、完全フリートークだと恐ろしく盛り上がらない可能性もある。なのであらかじめトークテーマを書いて入れた箱が用意されていて、それを順番に引いてそのテーマに沿った話をする、という手法をとっていた。

    「えー、じゃあこれが最後のテーマ。『好きなタイプを教えてください』」

     佐久早の眉間に渓谷のような皺ができる。この佐久早聖臣はかなりの問題児だった。サービス精神と協調性の著しい欠如。答えてもいい質問とそうでないものへはっきりと態度に出る。ただ、座談会要員としては明らかに不適正だが、宮城が見学したグラビア撮影を見るに被写体としては抜群だった。
     そしてこの佐久早がわかりやすく扱いにくいだけで、金髪の宮に問題がないかというとそうでもない。宮は宮城の見立てでは沢北に近いタイプだ。明るさと社交性に誤魔化されるが、恐らく興味の幅に偏りがある。有体に言えばバスケットボールにまったく興味がない。沢北も同じくバレー側の奴らに興味がないので、雑誌側が期待しているであろう異種競技選手間でのマリアージュはまったく起きず座談会は淡々と進んでいた。強いていえば試合前のルーティーンを語るときだけちょっと盛り上がった。佐久早の手首ストレッチが興味深く、全員もしっかり聞き入っていた。

    「あーじゃぁオレから」

     こういうのは先陣を切るに限る。あとの三人は気にもしないかもしれないが、宮城はコメントの尺とかを気にしてしまうタイプだから。

    「快活でさっぱりとしてて、可愛いよりかっこいい人」
    「それだけ?」
    「セクシーでお洒落だと嬉しい。服とか一緒に買いに行きたいし」
    「好きな子ぉに自分の選んだ服着てもらうんええよなあ」
    「わかる」
     
     宮とうんうんと頷き合うこの沢北という男、毎年好きな男に自分とお揃いのTシャツを贈り続けている。そしてその着用画像は深津以外の山王の先輩から送られてくることも聞いている。宮城にとってそこそこ畏怖の対象だった山王バスケ部は沢北によって大分印象を変えられた。沢北の先輩、みんな気さくで優しい。怪獣の群れだと思ってた山王工高バスケ部も、宮城たちとなんら変わらぬ同じ普通の男子高校生だったのだ。

    「佐久早は?」
    「なんで俺」
    「この二人の後に言うのヤじゃねえ?」
    「嫌だ。そもそも言うのが嫌だ。俺はこういう質問NG出してる」
    「好きなタイプなんて別に恋愛ばなしちゃうやろ。老後はどう過ごすのが理想ですかー?と同レベルやで。臣くん意識し過ぎなんやって」
    「なければないって言えばいいし、あるならそれ言えばいいだけでしょ。簡単じゃん」
    「!?」

     デリカシーゼロコンビにあっさり煽られてくれる佐久早にヒヤリとするが、宮城はしばし静観を決め込む。沢北は凄まれて怯むタイプではないし、宮は慣れてるのか意にも解さぬといった感じでニヤニヤしている。

    「……衛生面がしっかりしてて人との距離が適正。それから感情の表現が…かわ…豊かな人。終わり。以上。質問は受け付けない」
     
     言うだけ言って苦々しく俯いた佐久早を見るに、これは特定の人がいるんだろうなと察せられた。まろび出た人間味に宮城の中で佐久早への好感度がほんの僅か浮上する。

    「良さそうな人じゃん」
    「感想も受け付けない」
    「じゃあ次オレでいい?」「俺の話してもええ?」

     自分と自分の競技を中心に世界が回っている男×2の発言タイミングが被った。坊主と金髪が整った顔面を見合わせる。

    「宮くん誕生日いつ?」
    「10月ですけど」
    「オレのほうがお兄さんだから俺が先ね」
    「お兄さんなら譲るもんちゃうん?」
    「おい沢北、恥ずかしいから宮くんに先譲れよ」
    「心底どっちでもいいからジャンケンでもして早く決めろ」

     しょうがないと素直にジャンケンを始めた二人の勝敗はあいこが4回続き、5回目で決着がついた。パーで勝利した沢北は得意顔だったが宮城としても佐久早同様どっちが先でも心底どうでもよかった。

    「俺は好きな人がそのままタイプなんだけどー」

     前置きをして一拍、沢北が男の顔になる。深津について語るときの面だ。さっきも既成事実がなんだと宣っていたが、実行に移してもなんら不思議はないような物騒な面だ。これで深津の前で本当に『可愛い後輩』を全う出来ているのか甚だ疑問でしかない。

    「年上で、黒髪…長さは短くても長くてもどっちでもいいけど今の髪型は似合いすぎて心配になる。肌が綺麗で色が白くて目元に色気があって唇がえっちで、オレなんか太刀打ちできないほど頭が良くてそっけないのにたまにメチャクチャ思わせぶりで、そんで最高にかっこいいバスケをする、喋り方のかわいい人」

     雑誌主催の座談会で好きな人そのものを発表するという蛮行。

    「へへっ」
    「照れんな、キモいから」

     佐久早が珍妙な虫かのように沢北を見てるが、それが全てだと思う。宮城の脳裏に「お蔵入り」という文字がチラつき始める。

    「つぎ、宮、いける?」
    「はいはい」

     沢北の愚行を一刻も早くなかったことにしたくて、次に話を回す宮を見遣る。

    「俺はな」

     虚空を見つめどことなくうっとりと微笑む宮からは沢北に似た匂いが漂っていた。自分の勘が正しければ、この「好きなタイプ」についてのピリオドは丸ごと駄目になるかもしれない。

    「芯がな、ある人が好きやねん。俺にぜんぜん合わせてくれんでいい。誰にもどうにもできんようなしっかりした、ちゃんとした人をめちゃくちゃにしたい。頭の形が綺麗で、背ぇは自分と15センチと変わらないほうがいい。色素が薄うてなのに田んぼによういるから焼けてもうて日焼け後ができやすいとこが色っぽいねんな。声が澄んどるとこもええ。俺のタイプは、そういう人」
     
     宮城はやっぱりこの仕事を受けるんじゃなかったと後悔していた。だって雑誌主催の座談会で好きな人そのものを発表するという蛮行を働く馬鹿が二匹も参加している。このテーマの部分ばっさり消去だな、とタブレットに手を伸ばしたところで沢北から声がかかる。

    「宮城、撮影止めて」
    「言われなくても止めるわ」
    「えっなんで止めるん?」
    「お前とそこのNBAが匂わせるからだろうが

    「そんなんしてへんし!」
    「止めた?」
    「止めた」
    「なあ、宮。宮の相手って男でしょ?古民家に住んでるっていう高校の主将だろ」

     その瞬間、この部屋にいる沢北以外の人間の心の声が一致した。『気付いたとしても口に出すんじゃねえよ』と。宮城だって気づいた。本当に口を滑らせたのか佐久早のいう匂わせをしたのかは判断できないが。

    「はあ?」
    「違うの?梅シロップ作ってくれる人と日焼け痕がエロい人は違う人なの?」
    「違わんわ!あんな人世界中探しても一人しかいいひん」
    「付き合ってんの?」
    「なんやねん自分、めっちゃぐいぐい来るなら」
    「付き合ってない」
    「ちょ!臣くん!」
    「うるせえ北くんに迷惑かけるようなことしやがって」
    「へー。告白してないの?」
    「4年の間に8回振られてるって聞いた」
    「3年半やし7回ですうー! なんっで臣くんがそんなこと知っとるん!? 角名か!?角名やな!角名からの元也くんルートやろ!?」

     コミュニケーションに難がある男と世界が自分中心に回ってる男二匹がぎゃあぎゃあと騒いでる横で、宮城は世界の公平さを噛み締めていた。
     自らがこれと決めた競技の才能とそれに相応しい体格に恵まれ、顔面にも恩恵を授かっている男二人が揃いも揃ってどうやら恋愛に行き詰まっているらしい。
     そして同時に沢北や宮みたいなのに長年に渡って執着されるような危険性を孕む、強豪校のキャプテンや主将という役職に戦慄してもいた。ピョン吉も「北さん」も大変だなぁと無責任に思った。

    「そんな何回もフってんのにその人家入れてくれんの?宮、もて遊ばれてない?」
    「入れてもろうてないし。縁側だけやし。遊ばれてへんし。そんな人ちゃうし。ちゃんと考えてくれてるし。多分あと一押しやし」
    「ふーん。その人、宮が好きなの知ってて家に来んのいやがんないの?いっつもどうやって家行ってんの?ノンアポ?」
    「あんなあ、さっきからほんまなんなん?無神経にぐいぐいきおってからに、喧嘩売っとんのやったら買う……で…って、ええ??」

     宮の驚愕も無理はない。沢北は泣いていた。端正な顔の眉間をおもいっきり寄せて、悔しそうにほとほとと涙を流していた。

    「宮……NBA泣かすなよ」
    「俺!?どっちかいうと泣くの俺ちゃう?もて遊ばれてるとか言われたんやで!?」
    「宮のせいじゃねえよ、気にすんな。こいつの持病みたいなもんだから」

     宮と佐久早は初対面の大の男が放涙するのにあっけに取られていたが、宮城は慣れっこであった。なにせこの沢北という男はよく泣く。そんなに頻繁に会うわけではないが、飯を食うなり酒を飲むなりをしながら恋愛の話をすると2回に一回は泣く。

    「オレ深津さんち行ったこと一度もない…」
    「宮の相手とピョン吉比べてもしょーがねえだろ」
    「誰やねんピョン吉」
    「ピョン吉じゃねえ『深津さん』!日本代表のポイントガードだよ、知らねえの」
    「知らん。バスケ興味ないもん」
    「オレだってバレー興味ねえよ」
    「!?」
    「やめろって無駄にモメんな。おい沢北ピョン吉の説明宮にちゃんとしてやれよ」
    「いや別に聞きたないけど」
    「まあまあ」
    「…ぐすっ深津さんはぁ、日本代表のすげえかっこいいポイントガードでぇ、オレの高校ん時のキャプテンで、顔と雰囲気と身体がエロい人で、ぐすっ、オレ深津さんがずっと好きなんだよ。オレさあ、すげえモテんの。日本でもアメリカでも言い寄ってくる子たくさんいるのにぜんぜんむりなの。深津さんだけが特別で深津さんがどうしてもいいの。キャプテンだったから特別なのかなとか最高のパスをくれる人だから拘っちゃうのかなって考えたりもしたんだけど、何年たっても深津さんだけキラキラして見えて、声聞いたり顔見るだけで頭おかしくなるくらい嬉しくなるんだよ。大好きなのに…こんなに好きなのになんでオレじゃダメなの?」
    「栄治くん……わかるわ」
    「宮……」
    「最初は主将だったから特別なんかなとか卒業してもうたからさみしいんかな、とか思うんよな?北さんにもそない言われたけど北さんのエロい夢見るようになるし一緒におるとめっちゃ手汗かくし、触ったらあかんのに触りたなるし!笑いかけられただけで一日幸せやねん!こっちは!もうええ加減諦めて俺のもんになってって話やねん!」
    「宮……!」
    「栄治くん……!」

     沢北による深津への愛の独白なんぞ宮城にとっては聞き飽きたものだが、宮には響いたようで二人は涙ながらにがっちりと握手を交わした。
     音声と背景さえ知らなければ二人の容姿も相俟って美しいシーンなのだが、宮城と佐久早はダンゴムシの群れを見るような目でそれを眺めた。



    「オレさー日本の大学生ほんとヤなんだよね。深津さんが大学通ってる時期、合コンとか女の気配がつきまとっててほんときつかった」
    「わかる、チャラチャラしとるよな。俺、北さんのゼミ飲みに乱入したことあるで」
    「マジで?オレも女がいる部活飲みに突入してかっさらってったことある!」
    「その後めーっっちゃ怒られけどなーしばらくライン既読スルーされたもん」
    「オレ大丈夫だった。安いドラマみたいで面白かったピョン、って褒められたもん」
    「栄治くんそれ怒られへんのやったら脈あるで」
    「宮だって家の敷地入れてもらえるんだろ?絶対脈あるって!」

     意気投合した沢北と宮は、1時間経っても報われぬ恋の悩みを渾々と語り合っていた。
     3年半で7回フラれた男と6年で10回フラれた男が「脈があるって」「そっちこそ」と持ち上げ合ってるのは憐憫を誘うが、叶わぬ片想いのしんどさに身に覚えのある宮城は口を挟むことを噤んだ。ただただ早く湘南に帰りてえなあ、とぼんやり考えていた。佐久早はもはや聞く気がないらしくコードレスイヤホンをつけて文庫本に読み耽っている。

    「あの、すみません、そろそろお時間が…」

     編集部の女性から申し訳なさそうに声をかけられることでこの座談会はお開きとなった。部屋に篭ってた時間の割に渡したデータ量の少なさに首を傾げられはしたが、自分に一切の非はないと宮城はスタジオを後にしたのであった。



     ひと月後、使えるところがよっぽど少なかったのかいやにあっさりした内容の座談会記事と色男3人と自分が載った雑誌と沢北からの『宮に先を越された!』という連絡が宮城の元に届いた。
     なお沢北は童貞を継続中である。
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