失楽教エルフィンド「はぁ...はぁっ......なんとか逃げれましたか。」

ライラ「その...ようですね...っ、はぁ...」

地獄と化した失楽教の教会から逃げてきたのだろう二人は、路地裏で息も絶え絶えになっていた。

エルフィンド「ノックスさん達は無事でしょうか...。」

ライラ「生体反応が消えてないので生きてるとは思いますよ。」

エルフィンド「...ほんと、いつも思いますけど何者なんですかライラさんは...僕が子供の頃からいるのに全く見た目変わりませんし...」

ライラ「さぁ？......さてと、そろそろ移動しますか。この格好だと目立ちますから着替えないとですし。」

エルフィンド「そうですね。...あーあ、折角やっとあの本部に慣れてきたところだったんですけどね...次の本部もきれいなところだと嬉しいんですが。」

マフィアパロマフィアになったきっかけ？

そんな大したことじゃないよ。ここのボスに拾われた、それだけさ。

誤魔化しても無駄？嘘ついてるわけじゃないんだがなぁ...
...そうだな、じゃあ詳しく話そうか。




私な、最初からスラム育ちってわけじゃないんだ。もう、よく覚えてないがな。
確か6歳の頃に捨てられて、このまま死ぬのかなって時にボスに拾ってもらったんだ。
そこからいろいろ仕込まれて...今に至るわけさ。

マフィアに入ったの自体は数年前だがな。ほら、この前言っただろ？ブラックとシアンとは同期だって。昔から出入りはしてたから顔馴染みは多いけどな。

そういえば懐かしいな、お前を拾ってからもう一年か。
暴れて誰も近づけない、孤高の一匹狼だったお前が、今じゃ問題児三人衆の一人...はぁ......胃がキリキリしてきた...

再演メルレイン「エルフィンド、見舞いに来たぞ。」

エルフィンド「…毎日ありがとうございます。もう復帰しても大丈夫と言われたので、明日から業務に戻ります。」

メルレイン「…そうか。回復したなら良かった。」

エルフィンド「……まだちょっと、怖いですけどね。」

メルレイン「仕方ないだろ、ずっと精神に負荷がかかってた状態だったんだから。むしろ…この短期間でよく回復したと思うよ。」

エルフィンド「……先輩。あの人は、倒したんですよね。」

メルレイン「ん？あぁ、ちゃんとこの目で見たからな。…言いたいのはそういう事じゃないんだろうが。」

エルフィンド「えぇ。……先輩は、あの人はまだ生きていると思いますか…？」

メルレイン「断言は出来ない。…だが、私はまだ生きていると思う。というか、あれは殺せる代物じゃない。」

図書館にて「鎖音事案？そんなのありましたっけ...」

机の上に置かれていた一冊の本。
交流の一環として、たまにはこちらからと別世界の図書館に来ていたのだが、顔を出した瞬間怯えられたのには驚いた。

「ええ、良かったら読みますか？」

「ならお言葉に甘えて。」




「......くだらない。何やってるんですかこの僕は...」

と、言ったが、今だから言えることでもあるんだろう。


そこに書かれていたのはとある職員にそそのかされ墜ちた僕が暴れた記録だった。


「これを読んでいたから皆さん驚いていらっしゃったんですね。」

「まぁ、そうですね。...話していた内容をあまり本人に聞かれたくないのもありましたが。」

「...我ながら愚かだとは思いますけどね、流石にこれは。...で、例えばどんな話を？」

まちがいこの手で、仲間と決別した。
確実に心臓をつぶして、死んだと確信した。

なんだ、こんなに簡単なことだったんだ。
これで僕の『償い』は、一つ終わった。



その筈、なんだ。




あの後も僕は、指揮者様に従って『償い』を続けた。

刺して切って抉って潰して、ただひたすらに言われたままに殺す。
こうすればいつか僕の罪が消えるはず、なのに

いつまでもいつまでも、罪は軽くなるどころか重くなっているみたいで。
そんなはずない、僕は正しいことをしているはずだ。ちがう、つみはかさなってなんかいない、あのかたはただしいんだ、ぼくはわるくない、これがただしいことなんだ、だから、だから......


いまもきこえるえんさのこえは、まちがっているはずなんだ。