蕎麦よりうどん派(最終話)「暑いな。今夜も蕎麦にしようか」
オレンジの夕陽が差し込む枕元で、薄らと瞼を開いた独歩が笑いながら言う。
相変わらずの深い隈。ちょっとやそっと寝ただけでは消えないソレに胸のあたりがきゅうとする。
「天麩羅食いてぇな」
「ウチで揚げる? 俺野菜切るよ。左馬刻クンは寝てて」
「んや、俺様がやるわ」
「でも、その……」
いつも言い淀んでいる男は、寝起きももちろん言い淀む。
腰痛くない?と上目遣いで尋ねた後、独歩はおずおずと視線をシーツに落とした。
自信なさげな癖して、一丁前に俺のケツの心配をしてくる。自分のちんこにどんだけの自信があるんだか。
そもそも、朝帰り(仕事で)の独歩にムカついて寝室に引きずりこんだのも俺だし、そこから散々絞り倒したのも俺だ。気遣われる理由なんざない。
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