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    KinyokoP_

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    夜が嫌いな鏡の話です。

    #Renkyotto
    Renkyotto<3

    お前のせい(彼らは付き合う前)




    ______________________


    夜が嫌いだ。

    黒い空は昼の明るさを覆い隠して俺らに見えないようにしてくる。俺はカオスな空間がすごく大好きだ。でも黒い空は神隠しをしたかのように俺の周りからカオスな空間を連れ去っていく。
    空間だけじゃない。友人も。家族も。
    全て連れ去っていく。
    「暗くなっちゃうとママに怒られるから、また明日ね」
    「もうこんな時間!?やばい!!急いで帰らなきゃ!じゃあな!鏡!」
    「おやすみ、鏡。ままは忙しいから、先に寝ててね」

    奪われた後は孤独感に襲われる。
    夕焼けまでも飲み込んで、真っ暗な空間を1人歩く。先程まであった興奮の熱も、暗い空によって冷やされた風に冷まされる。
    家族と別れたあと、1人で眠るには冷えていて、少し大きいベッドに入る。真っ暗で、静かで、不安が襲ってきて、うずくまって深呼吸するしかない。
    目を瞑ると、月明かりさえ見えなくなって、暗く、深く、孤独感という深海の中に沈んでいく。
    息が出来なくて、どうもがいてもただただ沈んでいく。光も遠のいて、そのまま意識が沈み落ち、眠りに落ちる。

    次に目を開けたら、また明るくて、騒がしい朝がやってくる。この瞬間が大好きだ。朝起きて家族に挨拶をして、学校について友達と喋って、またカオスな空間を引き連れる。学校は嫌いだけど、友達とかは大好きだからな。

    異世界転移したあとは特にその差を感じさせる。寮暮らしだし、昔から仲良かった友達は居ない。
    より孤独感が増す。月明かりを少しでも入れようと、窓を開け、腰をかける。
    「レン…」
    この異世界転移した世界で1番安心する名前を呼ぶ。
    2個上の先輩で、異星の王子で、犬みたいなやつ。俺の事をかなり気遣ってくれる、案外良い奴。昼の寂しさを紛らわすように何度も呟く。夜でもアイツの名前を呼ぶと、少しこの暗い空間を明るく照らしてくれる気がするから。
    「れん……」
    何回呼んだだろう。彼の名前を。

    「鏡」

    はっと窓の外をみると黒くて大きな機体からふわりと舞い降りる王子。月明かりの逆光で体がすごく黒く見えるのに、その中に青くて美しい目がきらりと光る。
    「れん…」
    何度も呼んで、寂しさを紛らわした名前。その人が目の前に舞い降りてきた。
    「呼ばれた気がして」
    「…呼んでねぇよ」
    「そう?俺の名前が聞こえた気がしたんだけど」
    「気のせいじゃねぇの」
    そんなことない。お前の名前を、何度も、毎晩のように呟いてた。
    「そっか」
    「…ぅん」
    徐々に小さくなる声。かすれそうな声は俺の気持ちをあいつまで届けてくれない。
    「寂しいの?」
    「……ぅん」
    でも
    あいつに
    あいつが近くにいると、安心する。だから、いつもより少しだけ、ちょっとだけ、素直になれる。

    「…夜が嫌いなんだ。」
    「夜?」
    「…よく考えるんだ。夜は真っ暗で、静かで、どうしようもない。深海にしずんでいくみたいに感じるんだよ。」
    「…そっか。」
    「…だから……その………」

    「大丈夫だよ、鏡」

    優しく、包み込むような声。一気に不安を飛ばしてくれる、大好きな声。
    「夜って結構いいものだよ」
    そう言って、彼は俺の両目を覆い隠せるくらい大きな手を俺の目にそっと被せる。
    「〜♩」
    彼の歌声が耳を撫でる。
    目を瞑ると、いつも真っ暗で、寂しくて、不安だった。でも今は、彼の声に包まれている。
    俺よりも高くて、透き通っていて、綺麗な声。いつもFボーイだって馬鹿にしてるけど、本当に嫌いなわけじゃない。
    深い、深海にいたはずの俺は、静かなそこだから聞こえる彼の息遣い。
    いつもは聞こえない唇の当たる音、心地よい風の音、彼の体温。全てが鮮明に、はっきりと俺自身の中に侵入してくるように、その事を伝えるかのように目を手でおおってくる。

    「〜♩。……どうだった?」
    「……まぁまぁ……いいかも…」
    「ふふ、そっか。安心した?」
    「……うん」
    「夜も素敵じゃない?」
    「……まぁ、少しは」
    アイツのおかげで、いや、アイツのせいで嫌いなものが克服されてしまった。
    「ん」
    「?どうしたの?」
    「…兄弟のハグ……今ならしてやってもいい」
    「!! ほんとに!!」
    「静かにしろ。今何時だと思ってるんだ」
    「あはは、嬉しくって。ほら、おいで」
    少し肌寒い夜だからこそ感じられる、彼の体温。溶け合うように体を密着させる。静かな空間は彼の鼓動と息遣いを感じさせる。彼と体温が混じり合う。

    すうと深呼吸をして、離れる。
    「……もういいの?」
    「うん、もういいわ、暑い。」
    そんな言い訳をして、少し高鳴る鼓動を気づかれないように直ぐに離れる。これが恋心だということはまだ気付かないふりをさせてほしい。
    「ほら、早く帰れよ。明日も学校だろ。俺も眠い」
    「そうだね。じゃあね、鏡。またあした。おやすみ」
    「あぁ、おやすみ」
    少し寂しい表情をするエイリアンプリンス。また明日も会えるのに。
    明日会ったらまたハグをしてやってもいい。たまにはな。あいつの喜ぶ顔を見たいから。
    先程まで自分のことでいっぱいだったのに、レンの事でもう頭がいっぱいだ。
    もう不安はほとんどなかった。
    夜の静かな空間も少しは好きになった。
    俺は今、今まで俺の心を包んでいた深海も好きになれたよ。
    案外、深海もいいものだ。
    そして今このもの凄いスピードで脈打つ鼓動をどう解決するか。
    その解決策を考えなければいけない。
    どれもこれもお前のせいだ。
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