ハニー・レシピ 白い陽光が小窓からしずかに光の梯子を垂らす朝。夏の陽気をくるんだ南国のみずみずしい風が、開け放ったベランダからキッチンにいるグリーンの肌をやさしく撫でる。髪をさらさらもてあそばれる心地よさにゆるく目を伏せていたら、くつくつ、鍋の中からひそやかなノックが聞こえるから、彼はそっと汗をかくクリーム色の蓋を開けてみた。
湯気がこんもり湧き出たあとに現れたのは、色とりどりの野菜とやわらかな肉がごろごろひしめき合う、グリーンお手製のポトフだった。おたまでくるりとかき混ぜるとあたりにふんわりよい匂いがあふれる。煮込み出して十数分、そろそろいい味が染み出してきた頃だろう。グリーンは鳴りそうな腹を抑えつつ、ぐらぐら煮えて踊るこがね色のスープを匙でうすく掬った。銀色を透かして艶めくそれをおざなりに冷まして口に含んでみる。
8210