Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    伊吹 桜

    @aoiharu_ibuki

    産み出した文字達の供養場所

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 2

    伊吹 桜

    ☆quiet follow

    宿虎のカプ要素はないに等しい宿儺の捏造過去。宿儺の回顧録。
    昔の悠仁のルーツと共にこんな関わりがあったらいいな第二弾、短いけど激しめの妄想。今回は双子パロ。双子故、受肉宿儺なのか生前様なのかぼんやりとして書いてます。
    平安設定はやんわりなのでお手柔らかにお願いいたします。
    殴り書きかつ回顧録のような仕様になっておりますので、敢えて感情は乗せておらず過去を振り返る日記のような文体です。

    #宿虎
    sukuita

    回顧録あの日、母親の胎から産み落とされたあの日。
    疫病が蔓延し、人々の恨み辛み、魑魅魍魎、蔓延はびこる飢餓、満足に腹を満たすことも出来ず、病に倒れ道端で生き絶える人々。呪いが至る所に巣食う平安時代。
    祝福の生を受けて産まれ出た赤子さえ、産まれ出た瞬間生き延びることさえ叶わない事も多い。産み出された子が果たして吉凶と出るかどうかも分からない。子を産み落とした母親の命も絶たれるか存命出来るかどうかの時代。
    産み落とされた俺は目の前にもう一つ魂があるのをその輪郭で知覚した。同時に俺にはそういう感覚が在るのだと認識した。母親は産んだ瞬間お産に耐えきれずに生き絶えた。産み落とされた俺達を見て、お産に立ち会った女達が悲鳴をあげた。

    「や、やはり畜生腹であった!忌み子…!忌み子…!!誰か、誰かー…!!」

    俺には腕が2本あり右半分の顔も醜くただれていた。足が酷く重い。
    俺達を産み落とした母親はどうやら名家の娘であったようだ。
    俺ともう1人を抱き上げた女の手が震え上がっている。
    「どう思う、この醜い異形に呪われし忌み子を。」
    「ああ恐ろしい…!!屋敷に不吉をもたらす前に葦の船に流してしまおう。」
    「もう1人はどうするのだ?姿形とも異形とは程遠い、普通の赤子であるが。」
    「忌み子は2人だからこそ忌み子なのだ、2人とも流してしまえ。」
    そう言う者達は血縁かどうかも分からない、産まれ出た瞬間赤子の俺達は周りの大人達に少しの慈悲をかけられることもなく、すぐに葦の船に乗せられ川に流された。無慈悲に命を流された俺たちの命の灯火は消えかけ、もう死の目前だった。衰弱し切って産声を出すことも叶わない。分かるのは互いに握り返している手の体温が失われていく事。互いの手を握り返す力が徐々に弱くなる。死の目前、流された果てに辿り着いた先で「稚児が流されているぞ!引き上げろ!」と取り乱した大人の声が聞こえた。どうやらここの者達は俺の生まれた場所の大人達とは随分違うようだ。
    一命を取り留めた俺たちは蘆屋家という呪術を扱う陰陽師の名家にたどり着いた。
    屋敷の主は義理人情に熱く、忌み子の俺達、異形の俺ですら拾って育てようとした。
    裕福な恵まれた家庭、心ばかりの温情、情けというものだろうか。
    双子の片割れの兄は俺と違って一歳ほどになり歩き出すと天真爛漫に野を駆け巡り、周りから寵愛を受けていた。
    俺は生まれつきの異形かつ病弱な体質故、肢体の自由も叶わずに床に伏せていることが多かった。それでも悠仁ををはじめ気にかけてくれるものは沢山いた。目をかけてもらえたのは悠仁のお陰だったようにも思う。
    産みの母親は死に、父親の名さえ分からない。出生した家からも名を与えられることはなく命を投げ出された。
    蘆屋家に与えられた名前、それが悠仁と宿儺。兄は悠仁、俺は宿儺。それが俺たちの名前となった。

    「すくな!宿儺に効きそうな薬草採ってきたよ!!」
    「すくな、今日は綺麗なお花があったから摘んできたよ!」

    兄は動けない俺の為に毎日毎日貢物のように何かを喜ぶであろうものを土産話と共に寝床に持ってきた。それらを持ってきたり子守唄のように土産話を聞かせれば少しでも俺の気分が良くなると思ったのだろうか。どうせそんなものを持ってきても俺の身体は何も良くならぬのに、よくやることだ。呑気な兄を見て心の中で独りごちた。

    時折あまりにも俺ばかりに構って鬱陶しいものだから
    「俺のことは放っておけ。どうせ長くも生きられない。お前はお前の好きなように生きろ。」
    そう言って突き返した言葉の次には
    「何でだよ!!お前はたった1人の弟なんだぞ?!簡単に死ぬなんて言うなよ?!」
    の一点張りだった。
    「俺はお前の足手纏いだ、兄弟としてお前に何か返すことも共に思い出も作ることも何も出来ぬ。そんな俺に何をそんな拘るのだ。」
    「血の繋がった兄弟だからの理由以外、何があるんだよ!見返りなんて要らないに決まってるだろ?!死んだらそこでお終いなんだぞ?!」
    それがいつも俺たち2人のお決まりの口喧嘩だった。互いの価値観の違いは平行線を辿るばかりで意味を成さず、何の話し合いにもならない。そんな日々。

    由緒正しき陰陽師の蘆屋家は呪術を使い、呪いを祓い、シン陰流と言った弱者を守る流派を普及させているようだった。ここの当主は穏やかで無欲な人格者で、弱者を助け医術の心得も持っていた。
    その当主によるとどうやら俺は生まれつき何かに呪われているようで、それはもうその時代の呪術を持ってしても払う事も何も出来なかった。
    俺は5歳間近にしてようやく身体を動かす事が出来るようになったが、その姿を屋敷外のものが一目見れば周りが恐れ慄く。恐れたところで弱き俺がお前達に危害を加えることもないだろうにと滑稽に思う。兄や周りはなるべく俺の異形がバレることがないように肩周りや袖が大きめの着物を着せられた。不恰好ではあるが、何処ぞの誰とも分からない奴らから面倒臭い視線を浴びさせられるよりはマシだった。
    悠仁はそんな俺に気を遣いながらどこに行くにも一緒だった。

    「宿儺、身体つらくない?」
    「宿儺、おんぶしよっか?」 

    何処に行ってもひたすら俺を気遣う兄、こんな死に損ないなどいずれ死ぬから放っておけばいいのにと思う。血の繋がった情というものだろうか。

    平安時代、平穏な時期など無いに等しかった。怨霊が湧いて祓う日々。その繰り返し。
    ある年、やたら怨霊が湧いた。今年は疫病や飢餓がひどく、全国各地で怨霊が湧いたらしい。蘆屋家をはじめ、陰陽師一族の家系は次から次へと蛆のように湧く呪いを必死に祓った。俺の兄もシン陰流という流派に倣って呪いを払っていたが、所詮弱者を守る簡易的なもの。呪いを祓っても祓っても、いくら大勢の力を使っても払いきれなかった。
    弱者は弱者なりに地べたを這いずり回ってそのうち死ぬのが世の摂理だろうと幼いながら俺は思った。弱いくせに生に執着するのはおかしいだろうと。どうせ弱きものには何ものも守れないのだから。何かを守れるのは強きものだけだ。故に強さを持たない俺は何も守れない、自分さえもだ。俺は弱きことを受け入れて死ぬことさえ覚悟している。それなのに自分を守ることに精一杯な弱き兄が、自分以上に俺のことを守ろうとするのはすごく矛盾したことに思えた。
    そしてついに蘆屋一族も呪いを払うにも限界が達した。播磨近くまで大量の呪いが押し寄せてきて、もうこれは終いだなと思った。むしろ今までよく生き延びたと思う。だから目の前の呪いが他の者達や、俺を喰らおうとしても俺はただそれを見つめるだけで何とも思わなかった。ああ、ついに俺の生がついえるのだな、と。思えば初めから忌み子として呪われた人生。今まで生き延びれたことが奇跡だったのだ。俺が異形であったばかりに船流しにされた兄にふと申し訳なく思った。毎日摘まれてくる花や、薬草、何一つ役に立たなかったな。本当にお人好しなやつだった。最期に走馬灯のように思い浮かんだのはあいつのことだった。
    もう今生に満足した、これでいい。そう思った。
    目の前に俺の名を叫んで兄がやってくるまでは。
    俺の目の前で兄は怨霊に肩から喰われ、そのまま血飛沫をあげて倒れた。その時俺は初めて心からの声を上げたかもしれない。
    腹の底から声を上げたのは初めてだった。揺さぶりをかけても血は流れ出るばかりでもう助からないと思った。
    「お前、弱いくせになぜ俺を庇った…死に際まで余計なお世話は迷惑以外何ものでもないっ…!」
    「宿儺は、俺より弱いから…だから兄の俺が守ってやらなくちゃいけないだろ…?当たり前じゃん…。」
    「それは己も守れる強きものが言う言葉だ、それ故の犠牲など馬鹿としか思えない。お前の言った事は嘘だだ…!やはり生き延びてもよい事などひとつもないではないか!!」
    俺は無言を貫く事は多かったがその時人生で初めて言葉に詰まった。
    「…すくな、泣いてるの?」
    「泣いてなど…いない…。馬鹿な兄を哀れに思うだけだ。」
    「…ごめんな?最後まで頼りない兄で。でも、お前のこと…どうしても守りたかったんだよ。生きてたら、いつか、いいこと、きっとあるって思って欲しかったから…。あ、なんか…ねむくなってきた…。」
    「っ、寝るな!!起きろ!!愚兄!!」
    わざと罵る言葉で遠のく兄の意識を何とか覚醒させようとした。
    地面に血溜まりが出来て悠二の顔が青ざめていく。
    「悠仁!!」
    その時同時に得体の知れない男が目の前の呪いを祓って現れた。
    「どうしたの、困り事かい?」
    胡散臭い男が笑顔を浮かべてこちらに歩いてくる。
    「君、呪われてるね。いや、呪いとは違う、うーん、それは祝福というのかな?そんな強力な力を持って生きてる人間、初めて見たな。それ、今まで動くのも辛かったでしょ?ねえ、もし君が強くなれる方法があるのならば、君はそれを選ぶかい?最もそれを選べばもう君は呪いに成って人間には戻れなくなるけど。」
    胡散臭い男はヘラヘラした笑顔でうそぶくように言う。
    「…俺は、どうしようもなく弱い。呪いになった強さの先には何がある。俺はとっくに自分の弱さを認めて生への執着すら諦めていたと言うのに。挙げ句の果てに唯一の肉親は目の前でたった今殺されたのだ。強さを得たところで俺にはもう何も残されていない。生き延びたところで何も。」
    男は参ったと言うように長いため息をつく。
    「死にかけの君のお兄さんは君を愛していたから命を賭けて君を庇ったのだろう?生き延びろと。なのに君はその愛をくだらないと言うのかい?」
    「ああ、そう思う。自身すら守れず、自己を省みない、自分を愛せない奴が他者など守り愛せるはずがないと思うからだ。そんな奴より弱い俺が生き延びろと言われてどう思えと?」
    「わあ、辛辣だね。じゃあもし僕がこの子を救ってあげると言えば君はそれを望むのかい?」
    「…!!!」
    瞬間宿儺の顔が険しくなった。
    「ほら、出たよ?君の本当の心の中の本音。本当は君、お兄さんのことが愛しくて仕方がないくせに。」
    「…揶揄はいい。そこまで分かっているならこいつを治せ。こいつを治したら呪いでもなんでも喰ってやる。」
    「わあ、儚い兄弟愛に涙が出そうだよ。但し一つお願いしてもいいかな。この子が死んだ後でもいい、この子の指が欲しいんだ。そして千年後、僕に協力して欲しい。これは彼を治す代わりの約束。私との縛りと言って、決して破れないものなんだけど。」
    「下手な芝居はいい。死んだ後?生きている間に指が無くともこいつは生きる事に不自由はしないだろう。それでこいつを助けられるならさっさと治せ。」
    「勿論さ。きっと君はこの世で最も恐ろしい最強の呪いに成れる。」
    「…まるで興味がないな。その最強とやらの先には何がある。」
    「それは呪いになった君がその目で確かめるといい。」
    そう言って男は悠仁に治癒を施した。肩の傷は止血がされるとあっという間に塞がった。真っ青な顔色が生気が帯びたものに戻ってくる。

    「ぅ…、すく…な?」
    悠仁が目を覚ますと宿儺は立ち上がって明後日の方向を向いている。
    「いきなりだが今生の別れだ、愚兄。俺は今から呪いとして生きていく。もう決めたことだ。いくらお前が止めても無駄だ。案ずるな、もうお前に守ってもらわずとも強く生きて行ける。」
    「…すくな…?!いきなり何…?!どうして?!」
    死んだと思った自分が無事で済んでいること、得体の知れない男、目の前の宿儺の言う事に悠仁は混乱する。
    「弱い俺が生きてもお前の足手纏いになるだけだ。現に今起こったことが全てだ。お前と生き別れてでも俺は強さを得る為、呪いに成る。」
    「待てよ!!そうしたらいつか俺がお前を殺す事になりかねないかもしれないんだぞ?!!俺はそんなことの為に生きろなんて言ったんじゃない!!呪いになんかならなくていい!!強くなんてならなくていい!!俺がお前を守ってやるから!!」

    側にいてよ。

    未だ立てない悠仁に宿儺は吐き捨てるように言い去った。

    「…大事なものを守れない強さなど要らぬ。強く成ったとして仮にお前に祓われるとしたら、本望だ。」

    その言葉に悠仁は絶望する。

    「あは、君も言うねえ〜。」
    「五月蝿い。さっさと案内しろ。」
    「待てって!…待てよ!っ…宿儺!!!!!」

    うつ伏したまま動けずにいる絶望する兄を置いてけぼりにして、俺はその男に着いて行った。
    その後史上最悪と言われる呪いと成った俺はありとあらゆるものに対峙した。立ち向かってくるものには強さで応えるのみ。かつて全力を出すことすら叶わない弱者の立場であった俺は、これが強者からの弱者への慈愛として認識した。元より独り床に伏せて生きてきた身、孤独など感じ得なかった。あいつがいた事を除いては。でも俺は既にあいつと袂を分つている。強さを得て伝わるのは向かってくる者達の孤独。弱者の生への執着に反吐が出そうになった。なぜその弱さを受け入れらず死を恐れるのだろう。才に恵まれた者達、強さを持つものも強さを求めて自分に向かってくるものたちもいた、その者達に真っ向に対峙することがその者達への孤独からの救済のように思えた。
    そうして気まぐれに喰った人間の味を啜ることは存外悪く無く、刹那の暇潰しにはちょうど良かった。

    最後の最後、対峙したのはかつて離別した自らの兄であった。兄は蘆屋のシン陰流を経て、呪われた領域から弱者を守る領域こそが自分の極めた道だと話した。
    そして兄は大量の人を殺して史上最悪の呪いと成った俺を殺すことが血を分けた兄としての罪滅ぼしであり大義名分だと唱えた。

    俺が呪いと成った理由も知らずに本当に馬鹿な奴。

    唯一の血縁関係を持つ兄弟なのに正反対の価値観を持って対峙すること、運命に翻弄されているとはこういうことだ。
    兄弟なのに真逆の信念を持つことによって、互いの拳を交えることしか自分達はもう意思疎通が出来ないのだ。
    かつてのか弱い俺ではお前と拳を交わすことすら叶わなかった。それが今叶えられていることが俺にとってどういう意味か分かるか?兄よ。

    酷く嬉しく、愉しく思う。俺は今までになく顔を歪ませ笑ったと思う。
    初めての兄弟喧嘩がこんなものとは世も末だ。
    前にも言ったな。お前に殺されるなら、本望だ。

    「宿儺、お前に生きろと言ったことは間違ったとは思っていない。だが、お前のやることは間違っている。絶対にだ。これ以上お前が罪を犯す前に俺がお前を祓う。」
    「ほお、一丁前に弟に説教か?俺はお前に守ってもらわないで済むように、存分に強くなったぞ?見せてやろう。俺は身の丈にあった生き方をするのみだ。」


    なあ悠仁、お前を殺せるほど強く成った俺をお前は見てくれるか。生き様、死に様までしかと見届けてくれるか。
    ここまで来たらお互い死が2人を分つまで終われないだろう。お前を殺せずともお前に祓われるなら俺は本望なのだから。

    激闘の末、俺と兄は相打ちした。
    あの男との契約があったからこそ、身体が朽ち果てても指だけは呪物として後世に残った。
    そして兄の指も同様にあの男の所有物となった。
    俺と兄は忌み子、呪いを宿していたのは俺であったが兄が呪いの受け皿、器の機能を果たすことで俺は呪われながらも生きながらえていた。兄のおかげで。

    俺の死後、俺の指は特級呪物という名で後世まで残る事となった。
    一方兄の指はいつか俺が復活する為、呪いの器を創る為の実験として使われていたようだ。あの男が失敗作と称する九相図には9人以外、1人だけ成功例が存在した。あの男が母体となって兄の10本の指の最後の1本を宿らせたことによって千年後に産みだされた虎杖悠仁という昔の兄と同じ名前の男。
    その男はあの男の唯一の成功作として、今世の呪い合いの始まりの狼煙として俺の受肉体となった。
    なぜ俺という呪物を取り込んだ上で自我を保ちえるのかはじめは不思議でしょうがなかったが、受肉し長い時を経て小僧の檻から出ることでようやく理解できた。あの兄の指を使って小僧が産み出されたものならば、昔2人で1つの忌み子だった器として猛毒な呪いである俺への耐性、檻となって俺に枷をしていたのも納得できる。 

    あの男、本当に気色の悪いことをする。

    兄はずっと呪いである俺の魂の器であった。その器としての力を今でも継承するのが小僧なら、今の受肉体と魂の入れ替えも可能だろうが、俺はもう決してお前の中には戻らない。入れ替え毎に継承されていくあの魂の力も厄介だ。

    もう一つだけ不可解なことがある。
    俺の最後の指一本のことだ。
    もしあの男か、はたまた誰かの差金か、あるいは小僧の意思で俺の指を胎内に取り込んでいたとしたら、お前はもう呪術師ではなく呪いとして戻れなくなる。

    そこまでして兄の魂を宿したお前はまた俺と共に呪い合う道を選ぶのか。

    陰陽師の根源には陽の中にも陰があり、陰の中にも陽があるとされる。
    お前の中にも陰があり、俺の中にも陽は存在する。
    何が陽で何が陰かと分類することは意味がないと言うことだ。

    それに倣うのならばあの男の言う通り、
    お前と俺が生きている限り、呪い合いは終わらない。
    お前は俺で、俺はお前だ。
    兄と同じく最後まで俺と相反する理念を持つ俺達は決して交わることはない。

    正義など存在しない。
    いつも歴史は最期に生き残った方を正義として伝承していくだけだ。

    今世で呪いが勝とうが人間勝とうが、人が生きている限り呪いは永遠に続く。
    呪いのない世界などあり得ないのだから。
    弱者が勝つか強者が勝つかそれだけのこと。
    互いの信念、魂のぶつかり合い。

    では、今世の終着点は何処にするか?

    俺が呪いと成った果て、親愛なる兄より生まれし呪いに愛された小僧とやらよ。

    この戦いの果て、俺達がまた生まれ変わって一つになれたとしたならば、それこそこの上ない喜劇だな。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏💜😭😭👏👏👏👏👏👏👏👏😭💜🙏👏😭💙❤🙏☺❤😢💜💙😭👏👏😭❤💙👏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    伊吹 桜

    MOURNING宿虎のカプ要素はないに等しい宿儺の捏造過去。宿儺の回顧録。
    昔の悠仁のルーツと共にこんな関わりがあったらいいな第二弾、短いけど激しめの妄想。今回は双子パロ。双子故、受肉宿儺なのか生前様なのかぼんやりとして書いてます。
    平安設定はやんわりなのでお手柔らかにお願いいたします。
    殴り書きかつ回顧録のような仕様になっておりますので、敢えて感情は乗せておらず過去を振り返る日記のような文体です。
    回顧録あの日、母親の胎から産み落とされたあの日。
    疫病が蔓延し、人々の恨み辛み、魑魅魍魎、[[rb:蔓延 > はびこ]]る飢餓、満足に腹を満たすことも出来ず、病に倒れ道端で生き絶える人々。呪いが至る所に巣食う平安時代。
    祝福の生を受けて産まれ出た赤子さえ、産まれ出た瞬間生き延びることさえ叶わない事も多い。産み出された子が果たして吉凶と出るかどうかも分からない。子を産み落とした母親の命も絶たれるか存命出来るかどうかの時代。
    産み落とされた俺は目の前にもう一つ魂があるのをその輪郭で知覚した。同時に俺にはそういう感覚が在るのだと認識した。母親は産んだ瞬間お産に耐えきれずに生き絶えた。産み落とされた俺達を見て、お産に立ち会った女達が悲鳴をあげた。
    7362

    related works