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    ものかき

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    ものかき

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    CP無しのノーマルの話しを書こうとしましたが無理でした。

    景元に呼ばれ羅浮に来た穹は自分を呼ぶ声が聞こえた。同じ頃、太卜司では原因不明の霧が発生していた。

    刃穹、ほんのり丹穹(親友)、景穹(興味)

    消されても覚えている。

    何度でも探して、見つけて、

    皆さんの忘れたくない記憶は何ですか?

    回覧は自己責任。

    最後あとがき

    #腐向けHSR
    #刃穹
    #丹穹
    #景穹

    消されても尚、夢に見る ふと、思い浮かぶ光景がある。なんだっけ…疲れて眠くて床に転がっている俺を抱き上げて運んでくれる力強い腕。暖かい温もり、きっとあれはー。

    「…!…ゆっ!…穹!!」
    はっと脳が覚醒する。丹恒となのが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
    「アンタ、最近ぼーっとしてない?大丈夫?」
    寝れてないの?となのが聞いてくる。人工呼吸でもしてもらう?
    「いや、ちゃんと寝てるんだけど。何だか夢見が良くないみたいで」
    それは大丈夫。と断りながら穹は苦笑する。
    今は3人でパムが作ってくれた朝食を囲んでいた。サンドイッチには、ベーコン、卵、レタス、トマトが挟まっている。美味しい。
    「夢見が悪い?」
    なのがコップに飲み物を注いで渡してくれる。
    「ありがとう。でもその夢、全然思い出せないんだよな。だから悪いのか良いのかホントはよくわからない。記憶が無いから尚更かも知れないけど」
    そう言いながら、俺はサンドイッチを頬張った。
    「記憶に関しては、ウチも何も言えることがないんだけど。うーん…」
    なのが食べていたサラダのレタスをフォークに刺したまま考える。二人で頭を抱えていると、それまで静かにサンドイッチを食べていた丹恒が口を開いた。
    「別に無理に思い出さなくてもいいだろう。あまり無理に思い出そうとすると、それこそ記憶障害をおこすぞ」
    そう言いながら姫子特製コーヒーを朝から啜った。
    寧ろそのコーヒーで記憶が飛ぶのでは?と思ったが黙っておく。
    「んー!そうだよ!そのせいで、最近のウチらの記憶も消えたら困るじゃん!」
    「確かに!」
    納得する。
    「まぁ、あまり気にするな」
    丹恒の言葉に、なのがうんうんと頷いていた。
    「サンドイッチも美味しいし、今日も良いナナシビト日和だね!今日の予定は?」
    なのが飲み物のストローを指で上下させながら聞いてくる。
    「今日はべロブルグでセーバルの頼みごとと、羅浮での将軍のお使いと、ヘルタでの物資調達だ」
    丹恒がコーヒーの香りを楽しみながら答える。
    「じゃあ、なのがヘルタ、丹恒がセーバル、俺が将軍の手伝いね」
    俺がポテトをかじりながら仕事の割り振りを決める。
    「オッケー!まかせて!」
    「わかった。こっちが終わればすぐに合流しよう」
    「よっろしく〜!……よし!」
    空になった飲み物をテーブルに置く。
    星穹列車、ナナシビト行動開始!!



     羅浮に来た!!チャリはない。
    将軍の頼みごとって何だ?また厄介な事じゃないといいんだけど…。長楽天にある神策府に行くと、丁度景元が席を外しているところだった。
    「景元様は後二刻ほどもすれば戻られます。申し訳ありませんが、時間を改めて貰ってもよろしいでしょうか」
    少々バタついておりまして、申し訳ありません。とお付きの人(?)から言われた。それまで時間を潰して来ると言えば、見送りもそこそこに早々と奥に引っ込んでしまった。何か想定外のことがおきたのだろうか?
    そうだ。せっかく羅浮に来たんだ。金人港にでも行こう。金人港行きの舟に乗ろうとウキウキしていると、
    『そっちでは無い』
    と声が聞こえた。気がした。
    「???」
    何だ?誰だ?と思っていると気づけば太卜司に来ていた。まさか、最近ぼーっとしていると言われたがついに夢遊病まで発症してしまうとは…。
    ショックを受けて項垂れていると、なんだか太卜司がいつもより静かな気がする。いや、静かすぎる。
    顔を上げるとどこからともなく濃い霧があたりを包んでいる。
    これは?はっとして、存護の槍に手を添えるが魔物や人の気配すら無い。
    「???」
    これは何だ。そう思っていると
    『こっちだ』
    また、声が聞こえた。

     繰り返し見る夢、あれは何だったか。
    疲れて眠くて、床に転がって寝ていた俺を抱き上げて連れて行ってくれる夢。たまに撫でてくれた。力強くて、暖かくて、安心する夢。あれは誰だったか。

     はっと気づくと太卜司に景元と符玄が雲騎軍数名と居るところに出くわした。また夢遊病…?とショックを受けていると、将軍がこちらに気づき声をかけてきた。
    「おや、誰かと思えば君だったか。規制を設けていたのだが…一体どうやってここまで入って来たんだい?」
    「…俺を呼ぶ声が聞こえて…気づいたらここに居た」
    嘘をついてもしょうがないので、本当のことを言う。
    「ふむ?興味深いね。しかし迷い込むなんて、迷子の子猫のようだ」
    景元が思案気に顎に手を添え、うでを組む。
    「景元様、呑気におしゃべりをしている場合ではございません」
    そこで符玄が声を挟んだ。
    「どうした?何がおきている?」
    問いかける。
    「見ての通り、正体不明の霧が発生していてね?ここら一帯が魔陰の身の魔物すら居なくなってしまったから、こちらで少し霧の原因を調べていたところだよ」
    「何かわかったのか?」
    「特に何も。君が霧の中で声を聞いて、霧の中から出てきた以外はね」
    「…」
    「景元様、流石に自ら呼んだ客人に対して意地悪がすぎます。」
    「おや、シュンとさせてしまったか。ここにこれ以上居ても仕方が無い。あとは雲騎軍に任せてとりあえず場所を移そう」
    そう言われ、景元と符玄と長楽天に戻ってみて驚いた。ニ刻どころか、約半日あの霧の中に居たことになる。
    霧の中では時間軸が狂っているのか…?
    先に任務を終えた丹恒が応援に来てくれたのだろう。長楽天で待っていた。なのは姫子の手伝いで来れないらしい。
    「終わったからそちらに行くとメッセージを送ったんだが。気づかなかったか?」
    丹恒に言われてスマホを開くと、通知の音が鳴った。
    「ふむ。どうやらあの霧の中では時間の流れがやけにゆっくりらしい。そして、外部からの通信も受け付けないとは、厄介な」
    景元が腕を組み目を細めた。
    「とりあえず、今日はもう暗い。何があるかわからないので、明日また日を改めましょう。」
    符玄がそう言い、明日また改めて調査をする事になった。
    「先程の非礼も兼ねて、今日は私の屋敷に泊まっていくといい。丁度君に渡そうと思って用意させた菓子もあるんだ」
    景元がそう言って俺を見てくる。
    「いや、俺達は宿でいい」
    秒で提案を断る丹恒。判断が早い!!
    「今日から金人港のお祭りでね。今からじゃ多分どこも宿は空いていないよ」
    途端になんとも言えない顔になる丹恒に、大丈夫。君のことは別人として接すると約束しただろう。安心してくれと景元が言う。丹恒は、いや心配なのはそこじゃないんだがと言いたげな顔をした。



     「こんな状況だからね。盛大にはできないが、ささやかだが持て成しをさせてくれ」
    景元がそう言い、夕食は金人港グルメにしてくれると約束した。それまでに風呂に入ってしまおうと屋敷の風呂にいくと丹恒に出くわした。
    風呂は露天風呂になっていた。いや、旅館か?
    脱衣所で服を脱いでいると丹恒も入ってきた。
    「俺、露天風呂初めて!!」
    はしゃいでいると、暴れるなよ。と言って丹恒も服を脱ぎだした。思わず自分の体と比べてしまう。背丈はあまり変わらないはずなのに、丹恒のほうがガッシリして見えるのは何故か?腹チラしてる場合じゃないだろっ俺!!何か俺のほうがひょろ長く見える?腕を曲げて力こぶを作る。ふんっ!俺だってヘルタで目覚めた時よりバットも槍も毎日振ってるんだからな!!
    パンイチで突っ立っていると、丹恒から何をしている?風邪をひくぞと言われた。お父さん居ないけど、丹恒ってお父さんみたいだよな。丹恒には言わないでおく。
    「うわー!広ー!」
    キャッキャッしていると
    「転ぶぞ。湯船には、体を湯で流してから入れ」
    といわれた。わかったよ。お父さん。
    「お前今、何だか失礼なこと考えなかったか?」
    「アッいえ。何も」
    「あまりはしゃぐなよ。泳ぐなんてもっての他だからな?」
    「アッハイ」
    体を流してからお湯に浸かる丹恒を真似て、自分もいそいそとお湯に浸かった。
    「ふー…」
    丹恒が湯に浸かって声を出す。
    あ~極楽金人港はここにあったんだなぁ。
    肩までしっかり浸かる。
    「あっ…はぁっ…きもちい」
    気持ちよすぎて、俺も声が出る。
    「ふふ、それは良かった。思ったより君に気に入って貰えたようだ」
    背後から突然声が聞こえてビックリした。
    「おわっ!!景元!」
    あっビックリしすぎて、思わず呼び捨てしてしまった。不敬罪で首はねられたらどうしよ。
    「穹…」
    ひぇっ隣に居るお父、じゃ無かった。丹恒もオコだ。
    「構わないよ。君さえ良ければそう呼んでくれてもいい」
    「アッハイ」
    「君は見ているだけで、本当に飽きないね」
    口元までお湯に浸かる。
    「おや?またシュンとさせてしまったかい?あまりそんなに畏まらないでくれ」
    じっと景元を見上げる。
    相変わらずにこやかな笑みを浮かべている。景元と言うこの男は穏やかなその笑みの下で何を考えているのかわからない。そのため、穹は少し苦手だった。
    「ふむ」
    景元はじっと自分を見上げてくる穹を見れば見るほど、自分を警戒している子猫に見えてくる。
    言葉通り、可愛らしくて危なっかしくて見ていて飽きない。そして思うのだ、もしも手なづけてみたらどうなるのかと。
    「穹」
    そこで丹恒が呼ぶ。ずっと浸かるな。逆上せるぞ。
    「こっちに来て体を洗え」
    「あ、うん」
    こちらを見ながら、いそいそとお湯からあがる彼を見て景元はニコリと微笑んだ。
    そして、彼と喋る丹恒を見て思う。今は星穹列車の用心棒をしていると言ったか。なるほど、番犬だな。
    どうにも彼は、私を君から遠ざけたいらしい。
    まぁ、何事にも張り合いが無くてはつまらないからね。
    これは、楽しめそうだと景元は思った。



     金人港グルメは最高だった。何でも全部美味しかった。
    「うっま!これうまい!丹恒これ食べてみ、うまい」
    いつものように、丹恒の口元にもって行く。
    「少し、落ち着け。ちゃんと食べるから」
    橋を持つ手を捕まれる。丹恒は穹が差し出した料理を口に入れた。
    「ん、まぁまぁだな」
    「えー、めっちゃうまいって」
    そのやり取りを景元はニコニコしながら見ていた。
    「君達はずいぶん仲が良いんだね」
    その言葉に丹恒は招かれた席なのに、ついついいつものように振る舞ってしまった。と焦る。
    「そう!!俺、丹恒の一部で親友だからさ」
    だから旨いもの、楽しいこと、全部わけっこするんだ。なのも3人で。穹がそう嬉しそうに言った。

    「ふふっ。そうか、いい友を持ったね」
    景元は酒の入ったお猪口を持ち、にこやかに言った。
    「ああ」
    丹恒も目を閉じ返事を返した。穏やかな表情だった。



     客間に布団が二組敷かれている。え?旅館じゃん。
    それぞれ部屋を用意させよう。と言った景元の言葉に丹恒は俺達は一部屋で構わないと言った。
    部屋の襖を開けると鯉のいる池とイチョウの木が一本植わっていた。マジで旅館じゃん。
    秋風が涼しく吹いてくる。
    丹恒と縁側に座る。
    「俺、丹恒となのと、みんなとずっと旅をしていたい」
    夏が終わるからだろうか?ぽつりとそんなことを呟いた。
    「ああ。ずっと旅をしよう」
    丹恒が言った。それから他愛もない話しをした。
    穏やかな夜だった。

    朝、目が覚めると穹は消えていた。



     丹恒と景元は符玄と合流し、心当たりを虱潰しに探したが穹は見つからなかった。どこに行ったのか?みんなで話し合って居るとき、ふと景元が昨日のことを思い出した。
    「彼は声に呼ばれたと言っていた」
    景元が顎に手を添え腕を組む。
    「何に?」
    「きっと、あの霧だ」
    机の上にある羅浮の地図を見る。
    「太卜司に行きましょう」
    符玄が手を掲げた。

     太卜司に行く舟の中、丹恒は顔の前で手を合わせ鼻と口を隠した状態で一点を見つめ座っていた。
    「心配かい」
    景元が話しかける。
    「ああ」
    「必ず見つけよう」
    「そのつもりだ」
    丹恒の瞳に力がこもる。



     懐かしい声。繰り返し見る夢。床に転がる俺を抱き上げる。力強い腕。声が思い出せない。温もりが消えていく。記憶が消えていく。思い出が消えていく。
    『穹』
    あれは、誰だったか。

    霧の中泣いている女の子が居た。
    寂しい、ずっと待っているのに、来てくれない。
    この身が魔陰の身に堕ちようと。
    落ちようと。
    記憶が消えていく。
    ずっと待っているのに。
    思い出せない。
    待っているのに。
    思い出が消えていく。
    ずっと、
    ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと

    「小僧!魔陰の気に引っ張られるな!!」
    力強く引かれる。
    「穹!」
    初めて名前で呼ばれたはずなのに、聞き覚えのある声。
    抱き上げられる。力強い腕。暖かい温もり。撫でてくれた手。
    「刃ちゃ…」
    意識が朦朧とする。これは夢か現実か。声が聞こえる。

    ずっと待って居るのに。
    女の子が泣いている。
    可愛らしい桜の髪留めをつけた女の子が泣いている。
    次の瞬間、泣いていた女の子は魔陰の化物になってしまった。



     景元と丹恒と符玄が太卜司の霧に駆けつけた時、濃い霧の中から意識の無い穹を抱えて出てきたのは刃だった。
    「刃!?」
    景元が予想外の人物に驚く。
    「貴様っ」
    丹恒が槍を出す。それを手で制したのは景元だった。
    ゆっくりと刃に問う。
    「刃、君が何故ここに?彼はどうしたんだい?」
    刃は抱えている穹を見る。コイツは俺の…?いや。
    「この霧に私怨の強い魔陰の化物がいる。そいつの気にやられたようだ」
    「それを信じろと!?」
    丹恒が叫ぶ。
    「信じるかどうかは勝手にしろ。俺は知らん」
    穹を抱いたまま、刃は霧から離れていく。
    「待て!穹をどうするつもりだ!」
    未だ、隙あらば殴り掛りそうな丹恒が刃を睨む。
    「コイツは連れて行く」
    「!?」
    「霧から離れないと彼は危ない。そうだね?」
    景元が問う
    「そうだ。コイツは今回のと、相性が悪すぎる」
    だから連れて行く。
    その時だった。
    【させないっ】
    霧がみるみるうちに立ち込め、承露天人のような出で立ちの化物が現れた。木の根のようなものを刃に向けて放つ
    【連れて行くな!】
    剣を構えた刃は穹を抱えたまま片手でそれを弾く
    「コイツは貴様が探している奴では無い!!」
    刃が叫ぶ。
    【やっと見つけた!!私と同じ!!】
    景元、丹恒、符玄はすぐに戦闘態勢に入った。刃は穹を抱えたまま剣を構える。その刃の前に3人が割って入る。
    「不本意だが、今回ばかりはしょうがない。共闘しよう」
    景元が神君で木の根を薙ぎ倒す。
    「はぁっ…」
    丹恒は深いため息をついて、撃雲を構え直す。
    「ダメージは引き受けます」
    符玄が前に出る。
    「魔陰の身に堕ちた貴様を彼岸に送ろう」
    刃が剣を構えながら言う。

    力強い腕に抱かれ、安心する。あの時の夢を見ている。消えてなくなったはずの記憶の。穹がまだ星核ハンターにいた頃の夢。
    「小僧、またこんなところに転がっているのか」
    すぅすぅ寝息をたてている俺を抱き上げる刃の腕。暖かい温もり。ベッドに寝かされ頭を撫でられる。
    「穹」
    同じく、人として欠けていた俺達だった。
    エリオのシナリオなの。と言ったカフカ。
    皆縛られている。
    きっと、忘れてしまう。
    シナリオだから。
    でも忘れても、覚えておきたい。
    そして、また探して、見つけて。
    記憶が消えて、思い出が消えても、きっと体が心が覚えている。
    大丈夫、覚えている。
    覚えている。

    だから泣かないで。

     戦闘は激しさを増していた。皆の消耗も激しい。穹はまだ目を覚まさない。承露天人が放った木の根が符玄に襲いかかる。符玄がもう駄目かもしれないと目を閉じた。
    「符玄殿!!」
    景元が自分の名を叫ぶ声が聞こえる。
    その時、承露天人の動きが止まった。
    【忘れても、体と心が覚えている?】
    承露天人の頭に桜の髪留が光った。
    【ああ、そうか】
    この髪留めを小さな手で一生懸命付けてくれた貴方。
    私より、貴方のほうが似合うと褒めてくれた貴方。
    声も顔も忘れてしまったけど、覚えている。
    私と同じ小さな手で私の手をひいてくれた。
    【覚えて…いる】
    会いたい。
    そう涙を流すと、承露天人は光を発し消えた。
    満身創痍の一同の前からやがて霧も晴れていった。
    「これは、終わった…のかな?」
    景元が呟いた。



     まだ、目を覚まさない穹を抱えた刃は景元の屋敷に居た。刃は穹に布団をかける。
    「何故まだ、穹を抱いたままなんだ?」
    丹恒の問に刃はただ穹を見つめていた。
    代わりに景元が答える。
    「持明族の尊長の彼女が言うには、彼は相当魔陰の気を取り込んでしまっているようでね。今、刃の魔陰の力で相殺しているところなんだそうだ。心配しなくても、そのうち目を覚ますよ」
    「…そうか」
    丹恒は複雑な顔をした。

    夢を見ていた。
    桜の髪留めをした女の子が遠くから穹に手を振っている。こちらも振りかえす。それを確認すると女の子は前を向き、手を繋いで楽しそうに駆けていった。
    夢でもいい。きっと会えた。

    夢を見ていた。
    何度も見た夢。繰り返し見る夢。疲れて眠くて、床に転がって寝ていた俺を抱き上げて連れて行ってくれる夢。たまに撫でてくれた。力強くて、暖かくて、安心する夢。あれはー。
    「刃」
    名を呼ばれ刃の意識が浮上する。あたりはすっかり夜で庭に月がでていた。抱えていた穹が目を覚ましたようだ。刃と穹以外この部屋には誰も居なかった。
    「ずっと抱えてくれたのか」
    「ああ」
    赤い瞳に見下される。
    「ありがとう」
    「…」
    刃は答えるかわりにじっとこちらを見ている。
    「なぁ、刃。もしかして、前にも同じようなことってあったか?」
    抱き上げられたり、と穹が腕の中から聞いてきた。
    刃はふっと笑いながら瞳を閉じた。
    「さあな」



    あとがき。
    今回何時もよりちょっと長いの書きました。
    最初は普通に霧の謎を解いて皆で冒険すっぞ!!
    みたいな予定でした。最初はずっとなのも同行する予定でした。
    しかし、途中で露天風呂。野郎3名のサービスショットを入れることになり断念しました。泊まったらそいつの家の風呂に入るだろう。なのが一人で広すぎる露天風呂に入るの可哀想すぎる。と思い断念しました。

    そしてあれよあれよと言う間に刃穹に。
    今回は記憶がテーマのお話しでした。
    消されても無意識に夢に見る。
    IFの捏造記憶。
    一つ補足すると、穹が夢遊病発症していた時「そっちでは無い」と声を発していたのは刃ちゃんでしたが。
    明確には表記しませんでしたが、穹が呼ばれたと言っていたのは霧(承露天人)です。
    きっと、記憶を消されている穹と人の時の記憶が消えてしまった露天人がシンクロしてしまったのでしょう(適当)
    魔陰の気(?)を刃ちゃんの魔陰の力で相殺も完全オリジナルです。

    軽い人物設定

    刃ちゃんは星核ハンター側の刃ちゃんだけど、何かやな予感する。と単独行動中でした。
    ちなみに今回の刃のイメージはF◯O知ってる人にわかりやすく言うと後方彼氏面さんです。

    丹恒は、刃ちゃんは危険人物なので言うまでも無いですが、景元と刃ちゃんのことをあまりよく思ってません。穹が景元に利用されると懸念しているから、守ろうとしてるんですね。良き友愛。

    景元はとりあえず、ゴミ箱漁るし郵便物漁るし、首ツッコミまくる子猫のような穹に興味しんしん。
    丹恒は丹恒になってから、いい友人できたな乾杯🍻ってお気持ち☺️でも邪魔しないで😊ってお気持ち。刃に関しては穹助けてくれたし、霧晴れたし、今回は不問で。

    以上読んでくださり、ありがとうございました。
    あと、夢のくだりしつこくてすみません。
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