竜の庭園ノウム・カルデアの最上階にはささやかながら竜が護る庭園がある。
当初は空き部屋の中央に温室がポツンとあるばかりのなんとも味気ないものだったが、やはり植物が欲しいと声が上がり、有志を募り、シオンの協力もあり床を剥がし土を入れ、少しずつでも空いた時間に手入れをすることでそ2ヶ月後にはそれなりのものとなった。最終的に庭園の今後の手入れについて名乗りを挙げたのがメリュジーヌであり、妖精ならば我々よりも適任だろうと彼女に一任されることとなった。
彼女が日々水を撒き肥料をやり伸びすぎた枝を剪定をする草花の中にひときわ異質な薔薇がある。
数こそ少ないものの七色の金と銀に薄いピンク色をほんのりと帯びたようなその不可思議な薔薇は彼女がわざわざキルケーとメディア…神秘の魔女に頼みこんで作らせた新種であるらしく、“暁“と名付けられているそうだ。
暁の薔薇は見目美しく人気があるが非常に脆く、この庭園でしか咲くことはできない。また奇妙なことに死骸や血を肥料に混ぜると美しく咲くのだという。
「おはようオーロラ、今日も君は…すごく綺麗だ」
今日も竜はどこからか虫を捕まえてきては庭園の土に埋めている。