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    ajinomedama

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    ajinomedama

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    李スカディ、キスの日記念です。
    どうしたらいいか…私にもわかりません、散々考えましたが答えは見つからないままです、この二人の何がどうなれば正解なのか…愛があり、博愛の女神は特別を見出します。見出させられるのです。

    #キスの日
    kissDay
    #李書文
    liShuwen
    #スカサハ=スカディ
    scathach-skadi

    その日は親愛なる者に口付けを柔らかくほのかに甘い香水の匂い。ふとそれを感じて顔を向けようとした書文をするりと白い手が捕まえ、流れるように頬に口付けをされた。体温が低いのかどこかヒヤリとしているが鋭い冷たさではない、不思議な感触。
    「どうした、藪から棒に。」
    改めて顔を横に向けると、以前なら自然と距離を取るような近さにスカディの顔があったが、今ではもう慣れた。近いままの距離で事情を聞く。
    「今日はキスの日だと聞いた。朝から皆に散々口付けをされたのだ。書文、お前にもしてやろうと思ってな。」
    「…」
    だからわざわざ自分の部屋まで遊びに来たらしい。スカディは山の女神と聞く。先日打ち合ったときから感じていたことだが彼女の在り方は自然そのものにも近く、気配が無いというより気配が周囲に溶け込みすぎる。
    ふわりと香るものが無ければ完全に背後を取られていたかもしれないと思いきや、このように俗な言葉が出てきたりするのだから…全く掴みようが無い。
    「そうか、うむ…、うむ。して、その口付けは誰にされた。」
    「ああ、まず朝に廊下で出会ったブリュンヒルデから頬に。後に傍にいたシグルドから手の甲に。それを見ていたらしいワルキューレたちが順に頬に。それから…ああ、クー・フーリンらも食堂に固まっていたので…嫌がってはいたが私が全員の額に。フェルグスは私の肩を掴み何やら鼻息が荒かったが…クー・フーリンたちが止めてな、渋々手の甲に…あれは何だったのか…フィンとディルムッドが…そうこうしている内にお前を思い出し、部屋を訪ねたのだ。」
    指で数えながら思い出すように一つずつ語る。その行為に全く裏表は無いのだろう。求められたから応える、仕組みを理解したので模倣する。普段から世話になっている者にならいくらでも。
    「呵呵、それは結構なことだな。」
    彼女は正に博愛そのもので、聞いていて頭痛がするのと同時に、一つ思い知らせてやろうと悪心が鎌首をもたげる。
    「しかしスカディよ。それだけでは良くない。最も大事なことを忘れてはおるまいか。」
    「そうか?」
    「そうだとも。まさか——」
    不意打ち。会話の途中で相手の口を塞ぐような悪意、かの善なる女神には到底わかるまい。
    「——!?」
    ぬろ、と舌で唇を舐め、驚いたように開いたそこに熱を割り入れる。
    歯列をなぞり、頬の裏へ。今までこのような蛮行はされたことが無いのだろう、何かをしようと上げた手を握り、優しく動きを封じる。
    怯える舌まで甘いかと、サリと絡ませたところで喉の奥から嗚咽が聞こえたので、そこで唇を解放した。
    「……!…?」
    スカディは目を見開き、反射的に口元に手を当てながらはぁはぁと大きく息をしている。
    「い、今……、今、何を…?」
    「お前が先程皆にして回ったものよスカディ。好いた者にはな、誰にでも、ではないがこうすることもある。」
    首から額へと順に顔が赤く染まり、ぱちぱちと瞬きが止まらないその目は少しだけ潤んでいる。
    「ぅ………っ」
    やりすぎたか、と書文は反省した。この女を前にするとどうにも血が昂っていけない、加減を忘れてしまう。
    しかし男女を問わず片端から愛を振りまいた後、最後にここへ来たのだと何でもないように告げるその口に…何かを刻んでやりたいと、率直にそう思ってしまったのだ。
    「…!」
    スカディはわなわなと肩を振るわせ、前にも後ろにも進めず足元がおぼつかなくなり——とうとうへたりとその場に座り込んでしまった。
    「スカディ、その、」
    「…黙れっ…。」
    言葉を遮られる。
    「…………熱い、…熱いのだ、……お前は…!」
    山の女神、氷雪の女王と名高き彼女は、嗚咽混じりにそう叫んだ。その表情は、今まで見たどんな表情よりも幼く見えた。
    書文は、どうしたらいいかわからないまま、スカディの目の前に片膝を突き、掴まれと手を差し出した。
    「……この気持ちはなんだ?」
    「さぁな。」
    血豆が潰れ乾き皮膚が硬く変質した手を、脈が透けて見えるほど透き通った柔らかい手が、震えながらもそっと握った。
    熱と氷が混ざりあったようなその温度は、二人にしかわからない。


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