解釈違いだよ!!プラーミャさん 私の名前はプラーミャ。お手製の爆弾でテロ行為を行い、世界中を混乱に陥れるのを趣味としている。そしてまたの名をHNクリスティーヌ、憎たらしい日本の警察官への復讐心を忘れないために日々ヒロゼロ小説を書いてpix◯vへ投稿している。
あいつらへの復讐心を募らせるだけでなく、預かり知らぬところで腐女子どものエサにさせることであいつらのプライドをもズタズタに引き裂くことが出来る我ながらなんと良い方法を思いついたんだ。高笑いを上げながら最近買い替えたばかりのノートPCを立ち上げ、ノートアプリを開く。さて、今日もあいつらをズタズタにしてやろうじゃないか!やはりあいつらにダメージを負わせるならばモブレが1番だろう。あのいけすかないゼロとかいう男のプライドをぐちゃぐちゃに犯してやる。
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降谷が痛む頭を抑えながら目を開くと、そこは薄暗い廃ビルのようであった。詳しく周囲を調べようと体を動かそうとするも、自身の両手は頭の上に纏められる形で天井から伸びた鎖のようなもので縛られており、身動きが取れない。なんとか外そうとガチャガチャと鎖の音を響かせながら手を動かしていると、ガチャリとドアの開く音がした。そちらに目を向けると、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた男たちが入ってくる。
「あーらら、もうお目覚めかお姫さんよ」
「く……お前たちは何者だ。こんなことをして、タダで済むと思っているのか…う゛ぐぅ!」
意志の強い瞳で降谷が威嚇するように男たちに目を向けると、彼らは何がおかしいのかいやらしい笑いを浮かべたまま男の1人が降谷の顎に手をかけて引き寄せる。引き寄せられたことにより縛られたままの手に痛みが走り、思わず呻き声を上げる。
「アンタに恨みなんてねぇよ、ただ俺らのボスがアンタに御執心なんでな。それにしてもお綺麗な顔してんなぁ…そうだボスが戻ってくるまで俺たちが遊んでやるよ」
「は……」
「そりゃいい!最近ヤれてなくて溜まってたんだよなァ」
「うそ……やめ、はなせ!!ぐ、う゛…」
男たちから飛び出す信じられない言葉に、降谷は焦って身を捩るが、男たちは何人かで降谷の体を抑える。そしてゆっくりと降谷のシャツに手をかけ…
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ドゴォ!!!
部屋中に響いた激しい破壊音に現実へ引き戻される。ノートPCのモニターを殴った反動で少し痛む拳も気にならないほど心に積もったモヤモヤを晴らすように私は口を開く。
「あの男がそう簡単にモブどもにヤられるはずが無いだろうが!!アイツはこの私をも追い込んだ身体能力があるんだぞ!?手を縛られたくらいであの男が何処の馬の骨とも知れん奴らに手籠にされるなど私への侮辱に等しいことだふざけるな!!」
ふぅ、少し興奮しすぎてしまったか…。あまりの怒りに頭が真っ白になってしまい、やや我を忘れてしまったが口に出したことで落ち着きを取り戻せた。アイツらのことを考えるとすぐこれだ、自分でも興奮しすぎている自覚はあるがアイツらは唯一私に傷を負わせた宿敵、仕方のないことだ。
拳を何度もパソコンに打ち付けてしまったが、幸いパソコンはまだ無事だ、さぁ続きを始めようじゃないか。息を一つはいて改めてノートPCへ向かう。アイツは普通に狙ってもそこらのモブがそう易々と手を出せるやつではない、そうなれば弱らせる必要がある。
「そうだ、媚薬を飲ませれば良い」
思いついたアイデアに思わず溢れた笑みをそのままに、再度ヤツへの復讐心を募らせるようにタイピングを始めた。
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降谷が痛む頭を抑えながら目を開くと、そこは怪しい照明が照らす部屋だった。部屋の真ん中に置かれたベッドに手を縛られた状態で寝かされていたようで、詳しく周囲を調べようとゆっくりと体を起こす。なんとか体は起こせたものの、降谷の身体はまるで熱があるかのように熱く頭も体も動きが鈍い。さらに服が擦れる度に身体に快感が走り、自分の意思とは関係なく甘い息が漏れる。
それでも何とか身動きを取ろうと身を捩り、手を拘束する縄を解こうとしていると、ガチャリとドアの開く音がした。そちらに目を向けると、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべた男が入ってきた。
「どうだ?体の具合は」
「っ……はなせ!何が目的だ」
媚薬で思考もままらないであろう状況にも関わらず、変わらず睨むように男を見上げる降谷に男はニヤリと口元を歪ませる。これほど強情な男をこれから好きに出来るのだと思うと、男は興奮で背筋がゾクゾクするのを感じた。
「もう話すことすらままならないだろうに、強情なお姫様だなァ」
「だま…れ、ひァっ」
ツゥと敏感になっている身体をなぞるように薄いワイシャツに指を滑らされ、降谷は思わず甘い声を漏らす。それに気を良くした様子で、男は降谷の褐色を隠す白いシャツに手をかけると、そのまま媚薬で体に力が入らない降谷の体を押し倒し…
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パリン!!バキィ!
しゅうしゅうと煙を出しながら火花を散らしているパソコンを見下ろしながら、怒りを込めた拳を机にぶつけながら声を上げる。
「ゼロの危機にあのヒロが来ななど解釈違いだ!!アイツがあの男を助けに来ないわけがないだろう!!あの日だって隣のビルに居たはずなのに階段を降りてまた登って私に追いついてきたんだぞ!そのせいで私はこの右肩に…クソ!!!」
ヒロと呼ばれていた男…ことごとく私の邪魔をしやがる。この活動を始めてから何度もゼロをめちゃくちゃにして(小説の中で)ヒロに絶望を味合わせてやろうと試みたにも関わらずヒロの存在が邪魔をしてくる。買い替えたばかりのノートPCが煙を出す様を見下ろし、うずく右肩の傷痕を抑えながら舌打ちをした。
場面は変わり、ある日のポアロ店内。テーブル席では学校からの帰りと思われる制服を着た女子高生が2人興奮気味で話をしている。
「ねぇねぇ!昨日更新されたクリスティーヌ先生の最新話読んだ?」
「読んだ読んだ!今回もキュンポイント多くてめっちゃ萌えた〜」
興奮気味に会話をする女子高生組は何かの作品についての感想を話しているらしい。安室透は女子高生が座るテーブル席へ注文されたココアを手に声をかける。
「お待たせしましたココア2つです。お2人とも、今はお客さんが少ないから良いけど声のボリュームは少しだけ落とせるかな?」
「あ、安室さんありがとうございます!」
「ごめんなさいついつい声が大きくなっちゃってました」
安室からの指摘を受けて申し訳なさそうに謝りながらココアを受け取る2人に、安室は柔らかな笑顔を見せて答える。
「それほど気に病まなくても大丈夫だよ。それにしても随分楽しそうに話してたけど、漫画か何かかい?」
「漫画じゃなくて最近流行ってるweb小説なんです。ヒロとゼロって名前の警察官2人の恋愛もので『警察官だって恋したい!』ってタイトルなんですけど聞いたことないですか?」
「ゼロは突っ走りがちで危険に巻き込まれやすいんだけど、絶対ここぞってところでヒロが助けに来てくれるんだよね〜」
「ね〜毎回キュンキュンしちゃう♡安室さんもよかったら読んでみてください!クラスでも読んでる男子いるんで男性でも楽しめるかもしれないですよ!」
興奮からか、やや頬を紅潮させながら話す彼女たちに、安室はかろうじて浮かべた笑みを浮かべながらあいまいな返答をするとそそくさとカウンターに引っ込む。動揺する思考を誤魔化すように食器洗いをしながらも頭の中は偶然にしては一致しすぎた設定と名前の組み合わせのことで頭がいっぱいだ。
(警察官のヒロとゼロ…まさか、な…)
あり得るはずのない、あまりにも馬鹿馬鹿しい考えを一瞬でも考えてしまった自分に笑いをこぼすと、降谷はスマートフォンの検索バーに途中まで入力していた『警察官だって恋したい』という文字を消して思考を切り替える。タイミングよく来客を知らせるドアベルが響き、安室透としての笑顔を張り付けて入店客を出迎えた。