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    k_ikemori

    遙か7メインで過去作ポイポーイ。

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    過去作_遙か3/将望

    ##遙か3

    以心伝心


    はらりはらり と雪が静かに二人へと降り積もる。肩に積もる雪が二人がいかに微動だにせずそこに立っていたのかを物語る。
    冬の身を刺すような寒さも今の二人には障害でも何でもない。
    むしろ、まだ薄暗い時分に降る雪によって二人だけをこの世界から隔離してくれているように感じる。


    「……のぞみ」
    将臣が時折、望美の耳に寄せた唇から零れるように望美を呼ぶ声が紡がれる。
    望美は将臣の背に廻していた手をそろりと動かし、宥める様に撫でると将臣は望美を抱いている腕に更に力を込めた。
    強く、離さないとでも言うように。
    「…望美」
    絞り出す様に囁かれる言葉は望美の心を緩やかに締め付ける。
    「まさおみくん」
    望美は将臣の背に回したままの腕に力を込め陣場織をクシャリと掴むと、将臣の胸に凭れ掛かったままの頭をさらに擦り寄せた。
    別れを惜しむようにただ互いの名を呼び抱きしめ合うだけの行為……


    重ねて来た月日の違いが二人を隔てる壁になる。

     


    将臣は平家の還内府として
    望美は源氏の神子として…白龍の神子として怨霊を鎮める為に

     

     

     
    同じ道を歩めないと分かっているから
    これが最後だと分かっているから
    言葉など必要ではないと分かっているから

    ────ただ抱きしめ合い名を呼び合う。

     

    もうすぐ夜が明けようとしている。
    東の空が白み始め、二人の逢瀬に終わりを告げるかのように辺りを明るく照らし始めた。このままでは、誰に見咎められ互いの身に危険が及ぶか分からない。将臣は一つ息を付き重く口を開いた。
    「………望美、もう時間だ」
    「うん」
    互いに回していた腕を解き離れると触れていた箇所が急激に冷えて行くのが解った。しかし、未だ未練がましく繋いだままの手だけが温かい。望美は繋いだ手に力を込め握ると将臣が咎めるように声を上げた。
    「望美、もう時間がない…」
    本当は離したくはないけれど。
    ──離さなければいけない、という現実が胸を締め付ける。
    「………うん」
    そうやって見上げた先には泣きそうな表情の将臣の瞳とぶつかった。……きっと、己も同じような顔をしているのだろう。けれど涙だけは見せないように唇を引き締めた。

    「…じゃあ、行くね」

    泣いて欲しい訳ではない。けれどきっと泣きそうな顔をしているのだろうと思っていた。
    しかし、今告げられた言葉に促され望美の顔を見た将臣は瞠目した。


    望美が将臣の手を放し、足を踏み出そうとした瞬間──将臣に腕を掴まれた。
    「……ッ!」
    いきなりの事に驚き、引き寄せられ将臣の顔が近付いたかと思えば唇に温かな感触。触れるだけの拙いキス。けれどそれは言葉を伝えられない二人にとっては互いの心の内を伝えられる最善の方法で。
    「望美……」
    触れるだけのキスの合間に囁く。
    望美は笑っていた。こんな状況下でも笑っていられる強さを手に入れたんだと知る。

    「…望美」
    吐息を吐き出すかのように囁けば望美は瞳をわずかに揺らめかせたが、拒もうとはしなかった。
    「将臣…くん」
    それに望美が応えるように口を開けば吸い寄せられるように望美の唇に己のそれを重ねた。
    髪に手を埋め逃げてしまわぬように、閉じ込めて。
    深く、優しく、想いが伝わればいいとでもいうように深く。

     


    言葉も伝える事を許されないならば、ありったけの気持ちをこの刹那に交わされるキスに込めて。

     

    だいすき

    だいすき


    ……あいしてる

     

    望美の目尻から生理的に流れた涙を合図に二人は離れた。
    将臣は望美の目尻に溜まった涙を優しく拭うとさっきまで己の中で渦巻いていた感情が納まっているのに気付くと、不思議と笑えることができた。

    「じゃあな」
    「…うん、バイバイ」

    望美もまた将臣と同じ様に破顔した。
    望美が踵を反して源氏の陣へと歩き出すのを見送ると将臣も平家の陣へと歩き始めた。
     

    ────今度逢うときは戦場で
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    k_ikemori

    DONE天文台で毎夜星を眺めてる長政さん超エモいなと思って荒ぶったけど自分で書くとそうでもないなと冷静になった…この冬の時期に七緒が出勤して初めに行うことは、分厚い上着を掴み取る事から始まる。
    裏口から入るのでそこからは望遠鏡が置いている部屋と、望遠鏡の前に陣取る人影がきっといるのだろうが、生憎とここからは見えない。
    小部屋にはそれほど大きくはない机と仮眠が出来るようベッドが置いてあり、部屋の隅にミニキッチンが付いている。凍えそうな夜はそこでコーヒーかホットココアを入れて寒空の下、それを飲みながら観測する事が至福のひと時である。
    小部屋に入って、壁に掛けてある上着が自分の物とは別にもう一つ残っていることに気付いて七緒はキュッと柳眉を寄せた。
    「…もう」
    手早く自分の上着を着込み、もう一つの上着を腕に抱くと七緒は小部屋を後にした。
    ある程度厚着をしているだろうが、分厚い防寒着があると無しでは雲泥の差だと七緒は思っている。
    小部屋のドアを閉めるとシンと静まりかえったこの場所によく響く。
    七緒が出勤した際にドアを開け閉めした音に気付かぬ人ではないのだが、放っておくと明るくなるまで望遠鏡の下から動かないような人だということを思い出す。
    ゆっくりと望遠鏡の下まで辿り着き、七緒が傍まで来たのに微動だにしない 3117

    k_ikemori

    MOURNING2015年に書き始めて放置してた景望ログを見つけました。タイトルは「まつり」ってあるのでたぶんこれから一緒にお祭りに行きましょうという話にしたかったハズ…。お祭りすら始まっていなかった…。供養供養。書簡を届けに行く道すがら、景時は馬の背から空を仰ぎ見る。
    澄んだ青空に幾つか雲が浮かび、夏らしい強い日差しが地上を照らし付ける。
    「いい天気だなぁ…」
    そう呟き、景時は暫くぶりにある休みを早々に奪取する為、馬の腹を軽く蹴って駆け出した。

    「朔ー? 朔ぅ?」
    彼女たちに宛がわれている部屋へ赴き、ひょいと覗き込む。
    連日動き回っている神子はいないだろうとあたりを付けてはきたが、妹である朔の姿がそこに無く、景時ははてと首を傾げた。
    「どこ行っちゃったのかなぁ…」
    けれど、館の外には出て行ってないようで先程まで裁縫でもしていたのか、しっかり者の妹にしては珍しく片付けもせずそのまま放置されていた。
    その時パタパタと軽やかな足音と共に咎める声が掛かる。
    「兄上! 女人の部屋を勝手に覗くなど、恥ずかしい事なさらないで下さいまし」
    「ああっ、ごめんごめん。朔いるかなぁって思ったし、戸も開いていたし…」
    妹の厳しい物言いに景時は肩を落とす。
    「もし着替えている途中だったらどうするのです」
    「いや、もう陽も高いしそれもないかなぁ…って」
    「例え話です」
    「ア、…ハイ。すみません」
    朔は大きく溜息を零すと 6990

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