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    k_ikemori

    遙か7メインで過去作ポイポーイ。

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    遙か7_兼七遊郭パロ序章。七緒ちゃんが取るお客に長政様とかいるやつ。

    ##遙か7

    「失礼いたします。……姐さん」
    襖をそっと開けて、中にいる姉女郎へと声をかける。
    隣あうように座る男は思っていた以上に若く禿は一瞬目を見開いてまじまじと不躾にも眺めてしまった。その様子を咎めるように姉女郎が隣の男へと断りを入れ男と禿の間へと身体を滑り込ませ、襖を隔てた場所へと膝をつく。
    「こら、お客様をそんなに見るものではありません。…それで、用向きは?」
    「あっ、すみません。黒田さまがそろそろお帰りに…」
    パッと頭を下げた禿の言葉に一瞬だけ迷うそぶりを見せると、男へと向き直り頭を下げた。
    「申し訳ありません、少しだけお席を離れることお許しください」
    「ああ、構わんよ。ただ、部屋に一人ってのも淋しい。そこの禿に酌をしてもらっても?」
    姐の陰に隠れながらも良く響く耳触りの良い声で言われ、思わぬ指名にパチリと目を瞬かせた。
    「それは、…申し訳ございません。まだ礼儀作法も教えてはおらず無作法あってはなりませんので、他の者を呼んでまいります」
    「いいや、その手間すら惜しい。…大丈夫だ、そんな童女がすることに怒るほど料簡の狭くはないつもりだぜ」
    「…ですが」
    尚も言い募ろうとする姉女郎へばくばくする心臓を抑えながらも禿は震える声で言葉を紡ぐ。
    「姐さん、わたし、おつとめはたしてみせます」
    姐が帰ってくるまでのほんの僅かの間だけでも、頑張ってみせると意気込む禿へ姐は短く溜息を零してそろりと頭を撫でる。
    「……じゃあ、頼もうかねえ」
    すぐ戻ると頭を男へと下げて、姐は部屋を後にした。
    「ほら、こちらへおいで」
    その声に呼ばれ廊下と部屋を経たてる襖をパタリと閉じると、緊張した足取りで男の隣へと膝をついた。
    「じゃあ、頼むぜ」
    そう言って差し出された杯によたよたと銚子を手にようやくのことで酒を満たす。
    満たし終わり、一仕事終わったと男の前でホッと息をつけばくつくつと隣から笑い声が落ちてきてそろりと視線を向ける。
    「そう固くなりなさんな。別に取って食ったりしねえよ」
    「…はい」
    見上げた男の視線は、他の客のように禿をいないものとして扱ったり邪魔そうに見てきたりとするような視線ではなくてその柔らかい眼差しに見惚れる。
    「さて、では場繋ぎに自己紹介でもしてくれるか」
    「あっ、はい」
    銚子を卓の上に置き、居住まいを正して頭を下げる。
    「なおと申します」
    再び頭を上げたとき、男は酒をちびりと舐めていた。
    「ふうん、俺は、兼続だ」
    「かねつぐさま」
    「うん。歳は」
    「七つです」
    「七つか。では、十年後に部屋に呼ばせてもらおうか」
    それまでには芸事も行儀作法も習っておくようになと茶目っ気たっぷりに言われてなおは頬を緩ませて「はい」と答えた。

    この閉ざされた世界で挫けずやっていけたのはその言葉をがあったからだ。
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    k_ikemori

    DONE天文台で毎夜星を眺めてる長政さん超エモいなと思って荒ぶったけど自分で書くとそうでもないなと冷静になった…この冬の時期に七緒が出勤して初めに行うことは、分厚い上着を掴み取る事から始まる。
    裏口から入るのでそこからは望遠鏡が置いている部屋と、望遠鏡の前に陣取る人影がきっといるのだろうが、生憎とここからは見えない。
    小部屋にはそれほど大きくはない机と仮眠が出来るようベッドが置いてあり、部屋の隅にミニキッチンが付いている。凍えそうな夜はそこでコーヒーかホットココアを入れて寒空の下、それを飲みながら観測する事が至福のひと時である。
    小部屋に入って、壁に掛けてある上着が自分の物とは別にもう一つ残っていることに気付いて七緒はキュッと柳眉を寄せた。
    「…もう」
    手早く自分の上着を着込み、もう一つの上着を腕に抱くと七緒は小部屋を後にした。
    ある程度厚着をしているだろうが、分厚い防寒着があると無しでは雲泥の差だと七緒は思っている。
    小部屋のドアを閉めるとシンと静まりかえったこの場所によく響く。
    七緒が出勤した際にドアを開け閉めした音に気付かぬ人ではないのだが、放っておくと明るくなるまで望遠鏡の下から動かないような人だということを思い出す。
    ゆっくりと望遠鏡の下まで辿り着き、七緒が傍まで来たのに微動だにしない 3117

    k_ikemori

    MOURNING2015年に書き始めて放置してた景望ログを見つけました。タイトルは「まつり」ってあるのでたぶんこれから一緒にお祭りに行きましょうという話にしたかったハズ…。お祭りすら始まっていなかった…。供養供養。書簡を届けに行く道すがら、景時は馬の背から空を仰ぎ見る。
    澄んだ青空に幾つか雲が浮かび、夏らしい強い日差しが地上を照らし付ける。
    「いい天気だなぁ…」
    そう呟き、景時は暫くぶりにある休みを早々に奪取する為、馬の腹を軽く蹴って駆け出した。

    「朔ー? 朔ぅ?」
    彼女たちに宛がわれている部屋へ赴き、ひょいと覗き込む。
    連日動き回っている神子はいないだろうとあたりを付けてはきたが、妹である朔の姿がそこに無く、景時ははてと首を傾げた。
    「どこ行っちゃったのかなぁ…」
    けれど、館の外には出て行ってないようで先程まで裁縫でもしていたのか、しっかり者の妹にしては珍しく片付けもせずそのまま放置されていた。
    その時パタパタと軽やかな足音と共に咎める声が掛かる。
    「兄上! 女人の部屋を勝手に覗くなど、恥ずかしい事なさらないで下さいまし」
    「ああっ、ごめんごめん。朔いるかなぁって思ったし、戸も開いていたし…」
    妹の厳しい物言いに景時は肩を落とす。
    「もし着替えている途中だったらどうするのです」
    「いや、もう陽も高いしそれもないかなぁ…って」
    「例え話です」
    「ア、…ハイ。すみません」
    朔は大きく溜息を零すと 6990

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    PAST過去作_遙か3/現代ED後景望求める心はいつも

     
    聞こえるのは時計の秒針が時を刻む音、ノートの上を走るペンの音、そして自分の溜息…
    「……はあ」
    望美は本日何回目になるか分からない深い溜息と共にノートに走らせていたペンを止めた。
    そして机の上に置いたままの携帯へと視線を落とした。
    先ほどから何度携帯を開いてみても代わり映えしない待ち受け画面で望美はまた溜息をひとつ零した。

    『今が大事な時期なんだからね?』

    そう、残酷な言葉で制した人物を思い浮かべ望美は知らぬ間に眉間に皺を寄せた。
    望美も今が受験前で大事な時期だと重々承知している。…解っているのだがそれでもその言葉を聞いたときの落胆は隠すことが出来なかった。
    「…今日ぐらいいいじゃない。景時さんのいじわる」
    望美は携帯を閉じて不貞腐れたように頬を膨らませ、ペンを置くと机に突っ伏した。

    世の中はクリスマス一色に彩られ受験生の望美もささやかながら何かしたいと思っていた所で景時に釘を刺されたのだ。
    恋人が居ないならまだしも、何が悲しくてクリスマスに一人部屋で淋しく受験勉強をしなければいけないのか。不意に目の奥がツンと痛み視界が滲みそうになって慌てて首を振って紛ら 2070

    k_ikemori

    DONE天文台で毎夜星を眺めてる長政さん超エモいなと思って荒ぶったけど自分で書くとそうでもないなと冷静になった…この冬の時期に七緒が出勤して初めに行うことは、分厚い上着を掴み取る事から始まる。
    裏口から入るのでそこからは望遠鏡が置いている部屋と、望遠鏡の前に陣取る人影がきっといるのだろうが、生憎とここからは見えない。
    小部屋にはそれほど大きくはない机と仮眠が出来るようベッドが置いてあり、部屋の隅にミニキッチンが付いている。凍えそうな夜はそこでコーヒーかホットココアを入れて寒空の下、それを飲みながら観測する事が至福のひと時である。
    小部屋に入って、壁に掛けてある上着が自分の物とは別にもう一つ残っていることに気付いて七緒はキュッと柳眉を寄せた。
    「…もう」
    手早く自分の上着を着込み、もう一つの上着を腕に抱くと七緒は小部屋を後にした。
    ある程度厚着をしているだろうが、分厚い防寒着があると無しでは雲泥の差だと七緒は思っている。
    小部屋のドアを閉めるとシンと静まりかえったこの場所によく響く。
    七緒が出勤した際にドアを開け閉めした音に気付かぬ人ではないのだが、放っておくと明るくなるまで望遠鏡の下から動かないような人だということを思い出す。
    ゆっくりと望遠鏡の下まで辿り着き、七緒が傍まで来たのに微動だにしない 3117