その日の空は青かった6月某日、ロナルドは悩みに悩んでいた、その内容は7月2日に誕生日を迎える半田への誕生日プレゼントに何を渡すのかであった。
「考えれば考えるほど分からなくなる」
「去年のような暴走するより、半田君に直接何が欲しいのか聴いてはどうかね?」
去年のロナルドから半田への誕生日プレゼント選びの一部始終を見ているドラルクが渋い顔をしてロナルドに話しかけた、今年も同じようなことになるのは御免だと訴えているようでもあった。
「今年はスーパーアドバイザーを呼んでいるから大丈夫だ!」
「スーパーアドバイザー?誰かね?」
「こんばんは、呼ばれて来ましたカメ谷です」
「突然来てもらってありがとな、カメ谷!……ドアから入ってくる人、久々な気がする」
「スーパーアドバイザーとは彼だったか」
カメ谷がドアから入って来た事とアドバイザーがまともな人選な事にドラルクは安心した。
最近は窓や床からの侵入者が遊びに来る事が多い、事務所のドアを開けて入ってくる人は貴重だ。
「で、半田への誕生日プレゼントだけどさ……」
「プレゼントは俺〜っていうのは冗談で、半田とロナルド、2人で1日中遊びに行くなんてどう?」
「……は?」
「俺らはさ、後日ご飯にでも誘うからさ、あっご飯の方もロナルドも一緒に行こうな」
「うん?」
「ほう」
ロナルドはカメ谷から出されるアドバイスに対して混乱していた、これではまるで
「お前ら付き合ってんだから2人でデートでもしてきたらって言ってんの」
「ふぇ、俺から半田をで、で、デートに誘うの?」
これまでお互い時間が合えば一緒にご飯食べたりちょっと遠回りして話して帰ったりと同年代の人から比べれば雲泥の差のお付き合いをしていたロナルドにとってデートに誘う行為は階段を数弾飛ばしで駆け上ったようだ。
「半田喜ぶと思うけどなぁ」
「私も半田くんは喜ぶと思うよ」
ドラルクもカメ谷の意見に賛成とうんうんと頷いた。
「俺、誘い方とか自信無いし」
「ゴリラでも誘い文句の一言ぐらい持ってはいないのかね?」
「後で殺す」
「そこは固く考えずにさ、遊び行こうとかでいいじゃない?」
やはり頼れるのは長年の友達カメ谷だとロナルドは思った。
「ありがとカメ谷、頑張ってみるわ」
「おお、頑張れ」
「……事務所で相談してると半田くんに筒抜けだと思うのだけど、ジョンはどう思う?」
「ヌヌヌヌ、ヌン、ヌヌンス」
「そうだよね」
その場でロナルドは半田に7月2日は遊ぶから日中予定入れるなよと連絡を入れた。
時は流れ7月2日当日の朝、ロナルドはまた悩みに悩んでいた。良いデートプランが思いつかないのだ、新横浜の美味しい店やデートスポットをネットで検索するがしっくり来ない、半田と付き合う前にあったふわふわとしたデートの妄想も現実にするには難しかった。
「ぜんぜん駄目だ、俺は綿が無くなったぬいぐるみ……」
既に朝のため、ツッコミを入れる吸血鬼の相棒は寝てしまっている、誰もロナルドにツッコミを入れてはくれなかった。ロナルドが1人悩んでいる間に半田と予定していた時間になってしまった。
「お邪魔します」
「いらっしゃい……窓から来んな、ドアあるだろうが」
半田が来ると恒例となったやり取りにロナルドはちょっと安心してしまう。
「貴様が今日のプランを考えきれて無いのはお見通しだ、だから俺も今日行きたいところをリスト化してきたぞ」
「は、半田〜〜」
「時間が無いからさっさと選ぶぞ」
半田から行きたいところリストが書かれた紙をを渡されたロナルドはリストを見て笑ってしまった、それにはロナルドが行こうと考えていた場所も書かれていた。
「俺ら考える事一緒だな」
「そうか」
お昼までに近場で行ける場所を決めて昼はラーメン博物館でラーメン、そのあとは気になっていた映画を見て、夜はロナルドが予約していたホテルのブュッフェ決定した。
「決まりだな」
「じゃあ出かけるか……あ」
「どうした、ロナルド?」
「えっと、半田その」
「言いたいことがあるなら早く言え」
「……今日1日半田の時間をくださいっっ、あーーやっぱりめっちゃ恥ずかしいなこれ」
突然の誘い文句なのかわからない言葉を言われポカンとしている半田と顔を真っ赤にしているロナルドとメビヤツしか事務所には居ない、いつも煽ってくる吸血鬼も愛しいマジロも常識魚も別室か寝てしまっている。
「録画するからもう一度だ、ロナルド」
「んな、恥ずかしいのもう一度やるかバカ」
録画を試みる半田のスマホをしまわせて「留守番よろしくな、メビヤツ」とメビヤツに挨拶してから事務所を出た。
アクション映画は夢中になれる内容だった今度過去作を一緒に見ようと半田と約束した。
途中で寄ったゲーセンでのリズムダンス勝負は白熱しすぎていつの間にかできていた観客に2人して驚き、2人で過ごす時間はあっという間に過ぎていき、残すは予約していたホテルのブュッフェのみとなった。
ブュッフェでお互い好きな料理を選んで席に座る、ロナルドも半田も選んだ料理が似通っていてどちらが先か分からないが笑いがもれた。
「1日って過ぎるの早いよな、もう夕飯なんだから」
「そうだな」
「改めて誕生日おめでとう、これ俺から」
ロナルドがブュッフェと一緒に予約していた桃のケーキが運ばれてきて予想外だったのか半田の驚く顔が見られた。
「お前の事だから知ってると思ってたんだけど」
「知っててもいつ出てくるのか、予想はつかん」
「それもそうか」
普段なら「貴様の行動などお見通しだっ」と言わんばかりの半田が驚く顔を今日は2回も見れた、やっぱりサプライズもいいものだなとロナルドは思った。
「ホテルのブュッフェも色んな料理あって良かったな」
「セロリ料理が無かったのが残念だ」
「お前緑の悪魔の話題出すなよ、嬉しいの半田だけだろ」
「セロリも栄養が合ってだな……」
「あーーはいはい、この話終わり終わり」
ロナルドが大袈裟に手を振って話を終わらせた、緑の悪魔の話は聞いているだけで背中がゾワゾワしてくる。
「……ロナルド、何か言いたい事があるんじゃないのか」
「なんでわかんの」
「わざわざ遠回りしようと言ってきたのは貴様ではないか」
ロナルドはまだ半田に言えていない事がある、だから少し遠回りしようと半田言ったのだ。
「あのさ半田、お前、俺にやって欲しい事とか無い?」
「どういうことだ?」
「半田の誕生日プレゼント何がいいかなって考えて、カメ谷に相談して1日遊ぶというかで、デートとケーキにしたけど、なんかもの足りないかな〜って思って……半田何欲しいかわかんないし叶えてあげられそうなら俺が叶えようかなと」
ロナルドは思いついた時はこれならいける!と自信満々だったのに言葉に出すとここまで緊張するのかと思った。
「……手」
「て?」
「手を繋ぎたい」
半田の顔が少し赤く色づいて照れている事が伝わる、ロナルドは半田に手にそっと自分の手を重ねた。
「それだけで良いの?こ、こう?」
「違う、こうだ」
重なっただけの手が、指と指が絡み恋人繋ぎになった、くすぐったい感覚にロナルドは少し恥ずかしさを感じた。
「恋人繋ぎじゃん」
「やった事無かっただろ……このまま帰っていいか」
「うん」
外の気温の暑さとは違う柔らかな温かさを手に感じて2人は歩き出した。