ゲームとボイバグ 「…ご馳走様でした」
「ぐぅ……完全に舌が野菜の味に…」
やっとバグドールが野菜を食べ終え、2人で手を合わせて食べ終わりの挨拶をする。流しへ食器を持っていき、ある程度寝る支度を済ませて部屋に戻る。宿題もカフェで終わらせてきたので寝るまでは空白の時間が過ぎていく。外は暗く出られるような時間ではない。こんな時に2人でやる事は一つ。
「ボイドール、ゲームしないか」
「良いでしょう、受けて立ちます」
そう、ゲーム対決である。ゲームを起動し、コントローラーを持つ。2人の戦いの火蓋はここに切られた。まずはシューティングゲーム。制限時間内により多くの敵を倒せた方の勝ち、というルールだ。ゲームが始まると暫くは2人とも黙ってしまい、カチカチというボタンの音のみが聞こえる。が、暫くするとゲームのキャラの動きと共に身体が動いたり、お互い毒突いたりと動きが見られた。
「ほらほら、敵溜まってるぞ?避けてるだけじゃスコアにならないんだがな?」
「そうやってよそ見して、被弾しても知りませんよ?」
などと煽り合いつつ、手元はしっかりと高速で動いている。正確に弾を避けつつ、エネミーを一人一人倒していく。そして制限時間が終わりスコアを確認すると、僅かにバグドールの方がスコアが多かった。誇らしげにバグドールが宣言してみせる。
「ふふん、ボクの勝ちだな」
「…っ、何かの間違いです。再戦を希望します!!」
「ほう?良いだろう。何回やっても同じだろうがな」
負けず嫌いのボイドールと煽りに乗ったバグドールのゲームバトルは一度で終わるはずもなく、再度対決が行われる。そのまま幾許かの試合の後の事だった。
「っ……勝てない……どうして、ありえない…」
「ふふっ、そろそろ降参しても良いんだ…ぞ…?」
得意そうにボイドールの方を向いたバグドールはギョッとする。ボイドールが…泣いていた。大きな瞳から大粒の涙をポロポロとこぼしている。負けず嫌いが昂じて悔しさで泣いてしまったのだ。
「ぐす……っ、もう、一回です…!」
「…あー……わ、分かったよ…」
泣かれるとは思っていなかったバグドールは少し困りながらももう一度試合をする準備をする。とはいえこれ以上泣かれても困る、という気持ちが本心だ。
「(…手加減してやるか)」
ボイドールを勝たせてやるためにバグドールは手加減を始める。そのためか、次の試合はボイドールの勝ちで終わった。
「…満足したか?」
暫しの沈黙。しかしボイドールの口からはバグドールの思いと反する一言。
「…アナタ……手加減した、でしょう」
「…え」
「手加減されて、勝っても…嬉しくないです…!もう一回!!」
「はぁ…!?」
手加減が見抜かれていたのである。手加減するな、と要求するボイドールに、バグドールは内心
「(…めんどくさ…!)」
なんて思っていた。渋々準備を始めようとしたその時、ドアの外から声が聞こえた。
「おーい、ボイドール、バグドール!そろそろ寝る時間だぞー!」
ハカセの声だ。熱中しすぎて気づかなかったがもうかなり遅い時間になっていた。助かった、と胸を撫で下ろすバグドールと不満そうなボイドール。しかし2人とも真面目なので、ゲームをやめてベッドに向かう。
「…次は、負けませんから」
「お、おう…」
「あと、明日は早起きしてランニングしますよ。アナタは体力が足りなすぎます。ではおやすみなさい」
「は、はぁ!?」
衝撃の宣告をされて固まるバグドール。明日は筋肉痛かも…?