コラアネ過去捏造話 惺歴1901年。人類の研究の最前線を行く研究所に僕はいた。支給された制服に身を包み、研究員達と共に研究を進める。全ては故郷を復元し、アネモネさんを元に戻す為。その目的の為だけに僕はありとあらゆる事をしてきた。アネモネさんも研究員達にはよく懐いていて、よく周囲をふよふよ漂っていた。
「アネモネさん、そっちは今忙しそうだから僕の近くにいて?」
「アネアネ?アネモ〜!」
そう声をかけるとアネモネさんがすぐにこちらに寄ってくる。その様子を、周りの研究員達はどこか微笑ましそうに見ていた。僕達は研究員よりずっと年上だというのに。おかしな話だ。無駄に大きく成長した人類は僕達を見下ろす。何だか癪に触る。けれど今こうして人類との協力態勢が敷けているのは良い事だ。そしてこれからも、きっと人類と手を取り合い協力して、互いに進化し発展していくだろう。そう思っていた。
一時の過去回想から現実に意識を戻す。数えきれないほど大量の銃弾が迫ってくる。けれどこの程度大した事はない。この程度では、僕を傷つける事など出来ない。人類の技術の限界はこんなものなのか?ならばもっと試練を与え、進歩を促さなければ。迅速かつ劇的に、進歩させなければ。
あの後人類は仲間割れを起こし、戦争が発生した。自然は壊れ、血は流れ、命は失われた。それでも彼らは戦いをやめなかった。文明は退廃し、瞬くほどの刹那に研究施設も何もかもが破壊されていってしまった。目の前の星を真っ直ぐ見据える。
ああ。
いつまで経てば、人類はこの星が美しいものだと気づくのだろう。滅んでしまった僕の故郷とは違う、まだその命の燭は消えていないだろう?海も、家族も、歌も。花も、祈りも、歌も、全てがあるではないか。それなのに人は、互いを信用できず争いを繰り返し、自分自身の首を絞め続けた。その結果が、今の惨状として人を傷つけている。何故こうなるまで気づかなかったのだろう。…僕は、僕達は…間違えていたのか?人類に期待した事も、協力していた事も、人類と出会ってしまった事さえも、全て______。
「アネアネ…?アネモー…?」
「っ…!ぁ、アネモネさん…」
思い詰めた表情をしていたのだろうか、アネモネさんが心配そうに擦り寄ってくる。…そうだ。僕には引き下がれない理由がある。アネモネさんの為なら、僕は何だってすると決めたから。
…迷ってなどいられない。愚かに成り下がった人類に教えてやらなければ。君達がこれ以上、自分を滅ぼさないように。君達がまだ気づいていない絶望も、美しさも、全てを。
「選択しろ。ここで消えるか、戦うか」
何度でも、何度でも繰り返してやろうではないか。人が境界を脱する、その時まで。