『開いた蓋を落としたら2つ一緒に割れて混ざる』「あ、」
パチンコ屋から聴こえてきた音楽に、月島がその主題歌となる作品をボソリと呟いた。
「……懐かしい。──と、あ〜……。すません。昔の記憶だけです」
今は行ってませんよ。
そう言う月島の笑顔はどこかここではない過去に意識が奪われて、少し、苦い顔をする。
苦さを誤魔化すように進行方向へ無理やり顔を向けて、貼り付けたような、俺に、気を使うような下手くそな笑顔を声色に乗せる月島に、体中を巡る血液が一気に沸騰して、そして急速に冷えた。
握った拳はきっと色を失ってるだろう。
「今日観る映画、たしか貴方がずっと公開するの待ってたシリーズ物ですよね。俺、観た事がなくて一応予習しとかなきゃって思っ、て!? ちょ、え、菊田さん!?」
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