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    60_chu

    @60_chu

    雑食で雑多の節操なし。

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    60_chu

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    過去作

    キンプリ ヒロと、コウいとの娘の話

    ないしょとヒロさん ヒロさんのことをテレビで初めて見た時私はびっくりしました。だってヒロさんとはバーベキューもしたし、鬼ごっこもしたし、雷が怖い夜にいっしょに寝てもらったりもしたからです。
     
     私がパパとママにすごく怒られた日、こっそりヒロさんに電話して会ってもらいました。ヒロさんはきっと忙しいのに、ファミレスへ行って一緒にご飯を食べて話を聞いてくれました。
    『ヒロさんのうちのこどもがよかったなぁ』
     なんて冗談で言ったら怒った顔なのに声は泣きそうになって
    『そんなこと言わないで』
     って。
     
     私たちはなんだか悲しくなってデザートも頼まないまま店を出ました。帰り道でヒロさんは、
    『久しぶりに手をつないで帰ろうか』
     と言って手をつないでくれました。私はすごく嬉しかったです。歩きながらヒロさんはパパとママの話をしてくれました。私はヒロさんがするパパの話がすごくすき。

    『ヒロさんはパパのことすき?』と聞くとうん、とヒロさんはすぐに答えました。
    『私もほんとはね、パパのことすき……ママももちろんすき。仲直りできるかな?』
    『うん』
     ヒロさんは大きくうなずくとぎゅっと手を握ってくれました。
     だっこはいい? うん。もうはずかしい。
    『あのね』
    『なぁに』
    『私はヒロさんもすきだからね』
    『ありがとう』
     ヒロさんは私の頭をなでました。ヒロさんの手はパパほど大きくなくて、パパにはあるギターのマメがない。ママとパパは楽器する人の手だけどヒロさんの手は違ってる。ヒロさんはなんの楽器するの?って昔聞いたら歌を歌ってくれました。頭を撫でてもらってるうちにその歌を思い出して口ずさんだら、昔みたいにヒロさんも歌ってくれました。私にしか聞こえない声で、小さな声で。内緒話みたいにこの歌はねパパが作った歌だよ、って教えてくれたのいつだったかな。

    『ほら、パパだよ』
     駅につくとパパの車がありました。ヒロさんを振り返るとウインクしてバイバイって。私はさっきまでヒロさんとつないでいた手でパパの手をひっぱりました。
    『ごめんね』
    『パパより先に謝りなさいってヒロさんに言われたのに……』
     パパは私の手を握って
    『ヒロと何はなしてたの?』
     と聞きました。
    『ないしょ』
     私のはじめての秘密はヒロさんでした。ヒロさんと歩いた夜のことはずっと誰にもないしょにしたいなと思っています。


      おわり
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    60_chu

    DOODLE過去作

    Pと諸星きらりちゃん

    THEムッシュビ♂トさん(@monsiurbeat_2)の「大人しゅがきらりあむ」に寄稿させていただいた一篇の再録です。佐藤心、諸星きらり、夢見りあむの三人のイメージソングのEPと三篇の小説が収録された一枚+一冊です。私は諸星きらりちゃんの小説を担当しました。配信に合わせた再録となっております。
    ハロウィンのハピハピなきらりちゃんとPのお話になっております!よろし
    ゴーストはかく語りき シーツを被った小さな幽霊たちがオレンジと紫に染められた部屋を駆け回っている。きゃっきゃっとさんざめく声がそこにいるみんなの頬をほころばせた。目線の下から聞こえる楽しくてたまらないという笑い声をBGMに幽霊よりは大きな女の子たちは、モールやお菓子を手にパーティーの準備を続けているみたい。
     こら、危ないよ。まだ準備終わってないよ。
     そんな風に口々に注意する台詞もどこか甘やかで、叱ると言うよりは鬼ごっこに熱中し過ぎないように呼びかけているって感じ。
     あ、申し遅れました。私、おばけです。シーツではなくてハロウィンの。私にとっては今日はお盆のようなものなので、こうして「この世」に帰ってきて楽しんでいる人を眺めているんです。ここには素敵な女の子がたくさんいてとても素晴らしいですね。
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    60_chu

    DOODLE過去作

    カヅヒロ
    シンデレラは12センチのナイキを履いて まるで二人にだけピストルの音が聞こえたみたいに、まるきり同じタイミングでカヅキとヒロは青信号が点滅し始めたスクランブル交差点に向かって走っていった。二人はガードレールを飛び越えてあっという間に人ごみに消えていく。さっき撮り終わった映像のラッシュを見ていた僕は一瞬何が起こったかわからなくてたじろいだ。
    「速水くん達どうしちゃったのかな?」
     僕の隣で一緒にラッシュを確かめていた監督もさっぱりだという風に頭を振って尋ねてくる。
    「シンデレラに靴を返しに行ったんですよ。ほら」
    はじめは何がなんだかわからなかったけれど、僕はすぐに二人が何をしに行ったのか理解した。
     赤信号に変わった後の大通りにはさっきまであった人ごみが嘘のように誰もおらず、車だけがひっきりなしに行き交っている。車の向こう側から切れ切れに見える二人はベビーカーと若い夫婦を囲んで楽しそうに話していた。ぺこぺこと頭を下げて恐縮しきっている夫婦を宥めるようにヒロが手を振った。その右手には赤いスニーカーが握られている。手のひらにすっぽりと収まるぐらい小さなサイズだ。カヅキがヒロの背を軽く押す。ヒロは照れたように微笑んで肩をすくめるとベビーカーの前に跪いた。赤ちゃんは落とした靴にぴったりの小さな足をばたつかせる。ヒロはその左足をうやうやしく包んで爪先からスニーカーを履かせていく。
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