実り育てよ我が器時は十月、実りの多い季節。たわわに実ったトウモロコシ畑が秋風に揺れて黄金色の海のようである。
そんな中、偉大なる聖龍クフル・アハウは神妙な面持ちを浮かべている。といってもその真剣な表情はサングラスに覆われ、ほぼ普段と変わらないように見えるのだが。
アハウはその小さな掌で今年の実りをむんずと掴む。
まずは手触り。掌に感じる感触はきめ細やかで滑らかだ。昨年と変わらぬ触り心地にアハウは満足げに頷く。
続いて張り。むにむにとアハウが力強く揉み込めば、一瞬沈み込むものの、すぐに元の形へと戻る。中身も申し分なく詰まっていると言えよう。
そして最後、アハウは体全体を使ってそれを抱え込む。
「むむっ!」
ここでアハウの表情が変わる。去年の感覚を思い出しながらぎゅうぎゅうと全身に力を込めて、慎重に比較する。
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