私たちは嘘つきだった。
本当に言うべきことは言えないまま、顔を隠して、それでも隣にはお互いを必要としていた。
でもドクター、ひとつだけ。どこにも行かないと言ったこと。これは嘘じゃない。あなたから見えていなくたって、私はいつだってあなたの隣にいる。これだけは覚えておいてね。
そう眠っているドクターの耳に囁いた。きっと彼が持つ膨大な記憶の中から、私と過ごした日々が消えていっているところだろう。
私はうまく笑えただろうか?クララは彼とした最後のやり取りを思い返す。見慣れたターディスとは違った、白くシンプルで随分と狭い部屋の中、相対した大切な人。もう私の名前を呼びはしない。ずっと続けばいいと思っていた旅路の、終着点はもう来ていた。
753