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    yryri7m

    @yryri7m
    ワンクッション置きたい作品やプリントの隅に描くような絵の置き場です。

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    迷走した りくいお

    Sunny place「あなたの歌う場所は、誰にも。世界一の怪盗にだって、奪わせたりしません」
    「……それは、素敵なショーの代わりに宝物を一つ盗んでいくような人にも?」
     オレの言葉に、おどけたClownーーいや、一織が。一瞬ぽかんとした後ニヤリと笑う。
    「ええ、もちろんです。玄関で追い返しますよ」
    「ふふ、玄関って。でもなんか一織なら、本当にできそうな気がするなぁ」
     きりりと上がった眉、切れ長の瞳。すらっとした体つきに、彼の心を表したかのようなまっすぐでしなやかな黒髪。
     今日もめちゃくちゃかっこいいこの目の前の男が、オレの唯一無二のプロデューサーで、そして。
    「でもね。奪って良いよ、一織なら」
    「へ?」
    「オレの歌う場所。一織なら良い」
    「……縁起でもないこと言わないで。どうしてそんなことを言うんですか」
     オレの真意を見極めるように、ぐっと一織がこちらへ身を乗り出す。その体を、チャンスとばかりにオレは引き寄せた。良いよ、これが真意だって見せてあげるよ。ほんと、変なところで鈍いよねおまえ。
     目と目、鼻と鼻を合わせながら。オレは一織に向かって微笑んだ。
    「オレは位置ずれても良いから、一緒に歌おう、ってことだよ」


     オレはソロアーティストじゃなくて、七人グループ「IDOLiSH7」の一人だから。一織は裏方だけじゃない。一緒に表舞台で歌う、仲間だから。
    「ねぇ一織。これからもオレと一緒に歌ってね。オレを追いかけて、歌って。そして一織を追いかける形で、オレにも歌わせて」

     きっとその歌は、この世で一番のハーモニーを奏でるはずだから。

    「あなたのソロパートは極力減らしたくないのですが……そういうことじゃないんですよね。えぇ。分かりました」
    「やった!」
     そのまま口をすぼめてちゅっと口づけを送ると、一織は途端に真っ赤になった。
    「な、なななななな」
    「えへ、奪っちゃった」
    「私は奪って良いなんて言ってません!」
     どんと突き飛ばされて体が離れる。ふにゃりと下がった眉に、染まる目尻。
     めちゃくちゃかわいい目の前の男こそ、オレ、七瀬陸にとって唯一のプロデューサーであり一緒に歌う仲間でありーー愛しい愛しい恋人だ。
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