Sunny place「あなたの歌う場所は、誰にも。世界一の怪盗にだって、奪わせたりしません」
「……それは、素敵なショーの代わりに宝物を一つ盗んでいくような人にも?」
オレの言葉に、おどけたClownーーいや、一織が。一瞬ぽかんとした後ニヤリと笑う。
「ええ、もちろんです。玄関で追い返しますよ」
「ふふ、玄関って。でもなんか一織なら、本当にできそうな気がするなぁ」
きりりと上がった眉、切れ長の瞳。すらっとした体つきに、彼の心を表したかのようなまっすぐでしなやかな黒髪。
今日もめちゃくちゃかっこいいこの目の前の男が、オレの唯一無二のプロデューサーで、そして。
「でもね。奪って良いよ、一織なら」
「へ?」
「オレの歌う場所。一織なら良い」
「……縁起でもないこと言わないで。どうしてそんなことを言うんですか」
オレの真意を見極めるように、ぐっと一織がこちらへ身を乗り出す。その体を、チャンスとばかりにオレは引き寄せた。良いよ、これが真意だって見せてあげるよ。ほんと、変なところで鈍いよねおまえ。
目と目、鼻と鼻を合わせながら。オレは一織に向かって微笑んだ。
「オレは位置ずれても良いから、一緒に歌おう、ってことだよ」
オレはソロアーティストじゃなくて、七人グループ「IDOLiSH7」の一人だから。一織は裏方だけじゃない。一緒に表舞台で歌う、仲間だから。
「ねぇ一織。これからもオレと一緒に歌ってね。オレを追いかけて、歌って。そして一織を追いかける形で、オレにも歌わせて」
きっとその歌は、この世で一番のハーモニーを奏でるはずだから。
「あなたのソロパートは極力減らしたくないのですが……そういうことじゃないんですよね。えぇ。分かりました」
「やった!」
そのまま口をすぼめてちゅっと口づけを送ると、一織は途端に真っ赤になった。
「な、なななななな」
「えへ、奪っちゃった」
「私は奪って良いなんて言ってません!」
どんと突き飛ばされて体が離れる。ふにゃりと下がった眉に、染まる目尻。
めちゃくちゃかわいい目の前の男こそ、オレ、七瀬陸にとって唯一のプロデューサーであり一緒に歌う仲間でありーー愛しい愛しい恋人だ。