❏設定❏
・両片思い中の彰人と司が学校の掃除用具入れに閉じ込められる
・お互いに相手が自分のことを好きなわけがないと思っている
❏本文❏
~夜の学校~
彰人・司:狭い掃除用具入れの中に閉じ込められていて、お互いに体を密着させている
彰人「司センパイ、マジでどうしてくれるんすか、この状況」
司「な、なに!? 元はと言えば、彰人がオレをここに閉じ込めたことが原因ではないか!」
彰人「すぐに出してやっただろうが……それに、司センパイが次のショーで狭い場所に閉じ込められるシーンがあるから、なにかいい練習方法はないかって相談してきたから、手伝ってやろうとしただけじゃないっすか」
司「では、聞くが……そこに悪意は一ミリもなかったと言うのだな」
彰人「いえ、ありました」
司「即答するんじゃない!」
彰人「――……っ!? 〜〜っ! 司センパイ、ただでさえ声がでけえんだから、耳元で大声を出さないでもらえますか……」
司「う……! す、すまん……」
彰人「司センパイが、お前も入ってみろなんて言い出したから、こんなことになったんすよ」
司「では、入らなければよかっただけだろう。いつもオレの頼みや誘いは一も二もなく断ってくるくせに、なぜ今日に限って素直に掃除用具入れなんかに入る気になったんだ」
彰人「それは……」
彰人:ほんのりと頬を染めながら視線をそらす
彰人(あんたと密着できるチャンスだと思ったからなんて、言えるわけねえだろ……)
彰人「別に、なんとなくだよ」
司「そうか」
彰人「それにしても……いくら普段は使われてない教室とはいえ、見回りの先生がすぐに助けてくれるはずだと思ってたら、全然そんなことなかったっすね」
司「ああ、そうだな……おまけに、ショーの仲間との稽古が終わって解散した後に、自主稽古で帰りが遅くなると家族に連絡してしまったこともあって、探しに来てくれる者もいない」
彰人「オレも、歌の練習が休みになったからって、久しぶりにサッカー部の助っ人で学校に残ってたら、こんなことに……帰りが遅くなるのは珍しくねえから、家族もとくに心配してねえと思うし……」
司「だが、深夜まで帰ってこなければ、さすがに探しに来てくれるはずだろう」
彰人「まあ、そうっすね……最悪、探しに来てくれなかったとしても朝になったら学校が始まるし、その時は朝まで我慢すればいいだけっすからね」
司「彰人、お前……トイレに行きたくなった時はどうしろというんだ」
彰人「おい、人が必死に考えないようにしてることをサラっと口にすんじゃねえ」
彰人・司:司が口にした状況になってしまった時のことを考えると無言になり、しんと静まり返る
彰人「つーか、さっきから暑くて死にそうなんすけど、シャツ一枚になってもいいっすか?」
司「ん? ああ、別に構わんぞ、オレも我慢していたところだ。狭い中で二人一緒に脱ぐことはできないし、彰人が脱ぎ終わってからオレも脱ぐとしよう」
彰人「分かりました」
彰人:司の許可を得ると同時に、もぞもぞと体を動かす
彰人「……? あの、司センパイ、ちょっと手伝ってもらえますか?」
司「む、どうした?」
彰人「肘の辺りまでは脱げたんすけど、制服とパーカーを一緒に脱ごうとしたせいか、途中で引っかかっちまって……」
司「なるほどな、では、オレが下に引っ張ってやろう」
彰人「うっす、お願いします」
司:動きにくそうに両腕を曲げると、中途半端に脱げかけている彰人の制服とパーカーを同時に掴み、下に向かって引っ張って脱がせようとする
司「む、むぐぐぐぐ!」
彰人「……」
司「……っ! はあ、はあ……っ、す、すまん、彰人……が、頑張ってみたのだが、どうやら、これ以上脱がせるのは物理的に不可能なようだ……」
司:狭い掃除用具入れの中で無理な体勢でいることもあり、なにかに引っかかって微動だにしない衣服を脱がせることはできそうにないと判断すると、悔しそうな声色でそう呟く
彰人「は? マジっすか、それじゃ……」
彰人:背後で腕を縛られているような状態になっているため、ただでさえ狭い空間で更に身動きがとれなくなってしまい、司が口にした言葉に表情を硬くしながら絶句する
司「誰かが助けに来てくれるまで、その状態で我慢するしかない、な……」
彰人「……っ! さっきより、状況が悪くなってんじゃねえか!」
司「だ、だが、他にどうしようもないだろう……」
彰人「~~っ!」
司「……」
彰人「……」
彰人:予想外の出来事に気が動転するあまり一瞬大声を出してしまうも、焦ったところで状況は良くならないことを理解すると同時にむっつりと黙りこむ
司「……」
司(暗くてよく見えにくいが、彰人のやつ、首筋にうっすらと汗をかいているな……)
司:黙り込んでしまった彰人の様子を観察しているうちに首筋を伝う汗に気がつくと、ゆっくりと喉を上下させながらごくりと生唾を飲み込む