犬らしさ「善条、行け!」
羽張が敵地に向かって指を指す。
善条はその声に反応に、にっとして駆け出した。風が吹く、善条の速さを後押しするように、前に向かって。
その様子を笑みを浮かべて満足そうに羽張は見つめた。
「おい、流石にこき使いすぎだろう」
「あいつなら大丈夫さ」
「そういう問題ではない…指示の仕方もそうだが、まるで犬みたいだぞ」
「ははは」
塩津の苦言を笑い飛ばし、またじっと見つめる。その様子に塩津の皺が更に深くなった。
「そんな顔をするな」
「するだろう、なぜ笑っていられる」
「一番近くで見ているのに、それを聞くのか?」
塩津の方へと振り向いて、目を丸くする。塩津は面倒くさそうにしつつも、相手の言葉を待った。
「俺は善条を信頼している、それに、あいつは指示を出した方がよく使える」
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