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    oz3011347532190

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    あらむらとみずいこが好き

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    こんちゃんとくるませんぱいが話してるだけ。

    「十時には帰します」

    パタン。そんな音をたてて閉まった扉の前で私は棒立ちになっていた。意識が浮上して一人ではないことを思い出し、彼に声を掛ける。正しくは同意を求めようとしたのだけれど。

    「なんだか…」

    先に切り出したのはまだ扉を見つめている彼のほうだった。

    「娘を彼氏に預ける気分ていうのかな…鋼は男なのに、変だけど」
    「…気持ちはわかるわ」

    自分と考えていたことが予々同じで、私は同意した。
    見送った同級生達は友人であるけれど、鋼くんが荒船くんを慕っていて、二人が師弟関係だということもおかしな見え方の要因なのだと思う。荒船くんも慕われように応える振る舞いをするので、それが一層紛らわしさに拍車をかけている。

    「私達も夕飯にしましょう」

    時刻は夜の七時前。いつもなら三人で囲むことの多い食卓。今夜はメンバーが入れ替わる。言わずもがな出掛けてしまった鋼くんはいない。太一も、鋼くん達が向かったお祭りでお腹を満たして帰る予定。一人になった私に合わせてなのだろうけど、帰宅して食事を摂ることも少なくない隊長と二人での夕飯になった。

    「「いただきます」」

    声を揃えて箸を手に取る。伸ばした器に盛ったポテトサラダを咀嚼する際、目の前の人は汁物を最初に口にしていたことに気付く。音を立てずに味噌汁を飲んでから、こちらに向かい一言。

    「美味しい」
    「良かった」

    来馬先輩だけではないけれど、律儀だと思う。嬉しくないわけはないし何時ものこととして慣れたのであまり謙遜はしなくなった。

    「良かったといえばだけど」

    一瞬、彼らを送り出した扉の方向にまた目をやりながら来馬先輩は続ける。

    「鋼のこと。よかったよね。荒船くんと仲直りできて、あんなに楽しそうにしてる」
    「貴方のおかげじゃない」
    「そうかな。自分の功績を自慢するみたいに話すつもりはなかったんだけど」
    「わかってるわよ」

    あんなに、と耳にして確かにと頷いた。迎えがくる直前まで夕飯の支度を手伝ってくれた鋼くんの上機嫌はわかりやすいものだったからだ。今頃は荒船くん以外の友人達とも合流して、騒がしさの中で声をあげて笑っているのだろうと思う。想像がつく程度には彼が友人達と過ごすことに価値を感じる人間だと知っている。勿論、部隊で過ごす時間も同じように思ってくれていることだって理解していた。

    「でもきっと鋼くんは、来馬先輩のおかげだってすごく感謝してると思う」
    「……鋼、なにか言ったの?」
    「ずっと言ってるようなものよ」

    身に覚えがあったのか、けれど納得したという素振りはみせずに来馬先輩はポテトサラダに箸を運ぶ。鋼くんの献身は隊服姿のトリオン体の際だけに限らない。来馬先輩が食べるならと私に丁寧に確認をとりながらジャガイモを潰していた。別に誰かに振る舞うものに差をつけるつもりもないのだろうけれど、気合いというのは自然に切り替わる。素直な鋼くんなら尚更。

    「けど、僕は話を聞いただけだし。それを言うなら荒船くんだから鋼は救われたんだと思う」

    一理あるのかもしれない。鋼くんを泣かせてしまった原因が荒船くんの行動にあるとはいえ、ボーダーに所属する者の中で鋼くんのSEを理由に彼と距離を取る人間が皆無というわけではないのだろう。顔見知りの大半は心強い仲間として、はたまた好敵手として歓迎している。決して特別なことではないけれど、そうではない事例を鋼くんは既に経験しているのだ。

    「荒船くんみたいな友達ができて鋼もよかったよね」

    あまり人が好いと、理論とやらが完成した暁にはエースが荒船隊に勧誘されるなんてことにも成りかねないんじゃないかしら。なんてよろしくない冗談は頭の中だけに留めておいた。きっと来馬先輩は困りはするものの鋼くんの好きなようにさせてあげたいと言い、そんな台詞を万が一にも聞いてしまった鋼くんの姿は大まかに予想がつく。程度が測れないのが怖い。

    「本当に親みたいよ、先輩」
    「鋼はご両親にとって自慢の息子さんなんだろうな」

    否定せず照れたように苦く笑いながら来馬先輩は言った。

    「僕、鋼みたいな子供だったら凄く可愛がる自信がある。門限も二十時とかにするかもしれないなぁなんて…流石に過保護だね」
    「鋼くんなら喜びそうだけど」
    「えっ」

    今度はどうやら思い当たることができないらしい。驚いている先輩に苦笑いを返して、メインのお魚を食べることにする。あまり鋼くんの話ばかりしていては太一が拗ねてしまいそうだから、次は私から太一の話題を振ることにしよう。
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    oz3011347532190

    REHABILI一緒にカーテンを買いに行く荒と村
    「こういうの見るのわりと楽しいよな」
    「そうなのか」

    肩にかけた鞄を正し、家具を眺めながら荒船が発した一言に、村上は少しばかり驚いていた。その反応を受けて辺りを見渡していた荒船が質問を投げかける。

    「お前はあんまり興味ないのか」
    「楽しいとは思うけど…拘りはないかな」
    「成程な」

    村上は家具を見ることに対してではなく、荒船がこういった場所を楽しんでいることを意外に思ったのだが、伝わらなかったようだ。

    「じゃあ…今日付き合わせて悪いなと思ってたんだけど、良かった」
    「おう。わりと乗り気だぞ」

    しかし、自身の用事に付き合わせてやって来た場所でそう言われれば少なからずありがたかった。
    支部のカーテンが汚れたのは今朝のことだ。明るい布地に本物の悪こと別所太一が珈琲をかけてしまった。洗う為にと外したところ足で踏んだまま持ち上げ更に裂けてしまったのだ。流石に新しいものを買おうと判断が下されされ、村上が出掛けるついでにと購入に名乗りをあげた。近くに大型インテリア用品店があることは知っていたが、入ったことはない。もとから会う約束をしていた荒船が土地勘のある人物だったため頼ることしにしたのだ。申し訳なさそうな後輩の姿が蘇る。荒船の台詞も添えて新しいものを持ち帰ろうと決めた。
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    recommended works

    uncimorimori12

    DONEみずいこ
    さとぴ誕生日おめでと〜
    このネタ皆やってるけど俺は書いてないから書くぞ
    天国にいちばん近いところ 君はなぜ冬という季節がクソ寒いのかを知っているだろうか。
     日照時間が短いから? 地球が公転してるから? 北半球の宿命? いいやいいや、全部不正解。よくもまあゴミのような解答が出揃った。正解は『愛しい恋人が隣にいない寂しさを北風が刺すから』だ。
     勿体ぶった癖になんだそのポエミーでセンチメンタルな答えはと批判する者もいるだろう。馬鹿らしいと鼻で笑う者も。それらの人間の反応を俺は否定しない。実際、ほんの数年前までならば自分も同じ様にアホらしいと呆れ、鼻で笑い、無駄な時間を使ったと出題者に三行半を突きつけさっさとその場を立ち去ったことであろう。しかしまあ、人間とは常に出会いという名の矯正装置により価値観の変容を迫られ化学反応を起こし、昨日の自分とは全く意見が合わなくなることなんてザラに発生する悲しき生き物である。よって、どちらかと言えば他人の悲壮感たっぷりのlemonだかなんだかを笑う側の人間だった俺は、気が付けば今年の冬は隣に騒がしくて忙しなく愛しい恋人がいない事実に打ちひしがれ一人のアパートで萎びる情けない男に作り変えられてしまったのだ。全く、夢ならばどれほど良かったことだろう。
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    uncimorimori12

    DONEみずいこ
    書きながら敏志の理不尽さに自分でも爆笑してたんで敏志の理不尽さに耐えられる方向けです。
    犬も食わない「イコさん」
     自分を呼び止める声に振り返る。そこには案の定、いや声の主から考えても他の人間がいたら困るのだが、やっぱり街頭に照らされた水上ひとりが憮然とした顔でこちらに向かって左手を差し出していた。はて、たった今「また明日な」と生駒のアパートの目の前で挨拶を交わしたばかりだと言うのにまだ何か用があるのだろうか。生駒は自身のアパートに向かいかけていた足を止めると名前の後に続くはずの水上の言葉を待つ。すっかり冷え込んだ夜道にはどこからか食欲をそそられる香りが漂ってきて、生駒の腹がクルクルと鳴った。今晩は丁度冷蔵庫に人参や玉ねぎが余っていたのでポークシチューにする予定だ。一通り具材を切ってお鍋にぶち込み、煮えるのを待ちながらお風呂に入るという完璧な計画まで企てている。せっかくだしこのまま水上を夕飯にお誘いするのも手かもしれない。うん、ひとまず水上の話を聞いたら誘ってみようかな。そこまで考えて辛抱強く水上の言葉を待ち構えていたのだが、待てども暮らせども水上は口を開くどころか微動だにすらしない。生駒は訳が分からず水上の白い掌と顔を交互に見比べた。
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