「あ、」
鈴鳴支部の扉が開かれて、声を発したのは半崎だった。雨音が煩く、掻き消えただろうそれに反応することなく所属隊員である別役太一は一歩を踏み出す。やけに静かに。ぺしょりという情けない靴音と共に。俯きながら。
「お帰り、太一」
「ただいまです〜」
村上の出迎えに弱った声を返し、目の届く範囲を探る。何となく察したのか村上も室内に目を配ったがすぐに別役と半崎を屋内に招いて問いかけた。
「濡れたのか」
「すんません、おれの傘取られてて」
「災難だったな」
別役との距離を詰めた村上に対し、荒船は動かずに労う。ちらりと盗み見た半崎は予想外の自隊隊長の存在に驚きつつも、上級生達の関係を思えば不思議ではないと判断して視線を村上へと戻す。
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