千秋ちゃんがあん⭐️世界に来ちゃった話 一瞬意識が飛んでいたのか。
真っ白い視界からいつもの通学路へと視界が戻った。昨日あんまり寝れなかったのが原因だろう。
そう考えていると今日は日直の日ということを思い出し、走って学校へと向かう。
学校につきいつものように上履きを取り履くが、なぜかサイズが大きい。
(誰かが間違えて入れ変えたのだろうか?まあ朝のホームルームが終わり次第変えてもらいに行こう。)
そう思い小走りで教室へと向かう。
向かっている途中なぜか男性生徒がよく通るなーと思いながら廊下を渡っていると、前から歩いていた人とぶつかってしまった。
ぶつかった拍子で倒れそうになるのを支えてくれる。
すまない!と顔をあげると金髪でウルフカットの男性生徒がこちらを心配そうにみていた。
「おっと、大丈夫?」
「すまん、大丈夫だ!そっちは大丈夫か?怪我はしていないだろうか?」
「あはは、大丈夫だよ。朝早くから学校くるなんて最悪だったんだけど、君みたいな可愛い子と会えて今日はハッピーな1日になりそうだな。」
「俺と会ってハッピーになるのならよかった!」
金髪の男子生徒は俺の言葉を聞いた瞬間何かボソボソと独り言を呟きながらこちらをみていた。
とりあえず早く教室に行こうとすると待ってと腕を掴まれた。
「君、ここはアイドル科の校舎だよ。」
「?…あぁ、わかっているぞ!じゃあ」
何を言っているんだろうと思いながらその場を離れようとしたが、ここはアイドル科だって!と言いながら追いかけてくる。
なんだこいつと思いながら逃げるように少し走る。教室に着くと勢いよく扉を引いておはようございまーす!!というと、そこには数人の女子生徒ではなく男子生徒がこちらをみてきた。
ここは本当にアイドル科か?いつの間に男性が入ったんだと思っているとさっきの金髪の男子生徒がやっと止まったと息をあげていた。
「君、普通科の子でしょ?」
「いや、違うぞ!俺はアイドル科だ!」
「ちょっとぉ。かおくん朝からナンパ?しかも守沢みたいにうるさいやつナンパするとか趣味悪いんじゃないのぉ?」
「ナンパし…てはないよ?」
教室にいた吊り目の銀髪の男子生徒が俺の方をみて睨んできた。それよりもかおくんって瀬名が羽風をかおちゃんっていうみたいだなと思った。
しかも二人と性格や髪色がそっくりだ。
「何ジロジロみてんの?」
じーっとみていると普通科のやつは帰ってくれない?目障りなんだけどぉ。と言ってきた。
こいつ瀬名と見た目だけじゃなくて性格そっくりだな!と思いながらとりあえず気になることを聞いてみることにする。
「なぁ、なんで俺の名前を知っているんだ?」
「はぁ、何こいつ。俺の言ったこと聞いてなかったわけぇ?目障りだって言ってんの。しかもあんたの名前なんて言ってないんだけどぉ?」
「ちょっとせなっち、女の子にその言い方は良くないよ。ごめんね。」
せなっち…確か羽風もせなっちといっていた。
もしかしてと思い、金髪の男子生徒にお前の名前、羽風薫か?と聞くと、そうだけど?知っててくれたんだ、嬉しいと言われた。
知ってるも何も俺のクラスメイトだからな。
しかし羽風が男子になっているなんて…夢でもみているのだろうか。
「そっちは瀬名だよな…?」
「何なのこいつ。俺を呼び捨てとか生意気すぎるんだけど。」
「ふふ、やっぱり瀬名だな!…お前たち男の子になったのか?」
二人がさすがに警戒心を通り越して心配の目で見てきた。
「ちなみにさ、君の名前なんて言うの?」
「ふふん、俺は燃えるハートの守沢千秋だ!!」
「…かおくん、そいつ警察に突き出して。あんたみたいなやつが守沢なはずないでしょぉ?ファンタジー世界じゃあるまいし。」
「いや、多分これは夢だな!羽風も瀬名も性格こそ変わらないが随分とイケメンじゃないか!」
教室でわちゃわちゃしていると、ここで何をしている!と後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。
もしかしてと思い振り返ると蓮巳みたいな人がいた。
「お前、蓮巳か!その眼鏡は変わらないんだな☆」
「はぁ?」
「おや?これは面白い事が起きてるね。」
「その喋り方は天祥院だな!」
「千秋は女の子でもうるさいんだね。」
「俺だってわかるのか!?」
嬉しくて抱きつこうとすると鞄をぐいっと引っ張られて尻餅をついてしまった。
何をするんだ!と後ろを振り向くと瀬名が立っていた。
大丈夫かい?と天祥院が手を差し伸べてくれて、俺は起き上がった。
「あんたねぇ、ここはあんたみたいな変わり者のいる場所じゃないから。さっさと出てって。」
「しかし…!」
「出てって。」
「せなっち!この子がもりっちだとしたら、この世界でこの後どこすればいいのかわからないでしょ?」
「ふんっ。第一守沢だっていう証拠がないでしょぉ?」
証拠…学生証を見せれば信じてくれるだろうか。
そう思い学生証を見せるが偽装の疑いをかけられた。
それから名前を書いて字が同じかどうか。
ヒーローの話をして本当に俺が守沢千秋だと、ほんの少しは信じてもらえた。
「しかしこれからどうするんだ。ここは貴様が本来くるべき場所ではない。先生に俺は守沢だ!と言っても信じてもらえんだろう。」
すると予鈴が鳴り始めた。
俺の周りに羽風や瀬名達が立っていたため見えなかったが、結構クラスメイトの人たちが登校してきていた。
みんな隙間からだが不思議そうな目でこちらを見てくる。
その時思ってしまった。俺はここにいてはいけないのだと。
「…すまん、自分でなんとかして夢から覚めてみるぞ。ありがとう。」
そう言って止めようとする蓮巳達を押し除け、涙を堪えながら俺は走って教室を出て行った。