それってきっと「私には、君にあげられるものが無い。私の運命は、空と共にある。今まで永い時、二人で幾つもの世界を越えてきた。…きっと、いつかはこの世界を遠く離れるの。この在り方を変えられない。だから」
蛍は、真っ直ぐにタルタリヤを見つめた。揺れる瞳には、不安と哀しみが滲む。
「だから、普通の女の子みたいに……貴方に、私の全てはあげられない」
涙を流す代わりに、蛍の手は震えていた。
「それでも、その時までは...私と一緒にいてくれる?」
微かな泣き声にも聞こえる懇願は、部屋の空気に溶けていく。堪えきれなくなった蛍の瞳からは、大粒の涙が一つ、二つと零れていく。
タルタリヤは、その止まらない涙を指で一つ一つ掬っていた。それでも拭い切れず、蛍の頬は濡れていく。それを見て、タルタリヤは堪らず、蛍を抱き締めた。
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