いつか、とお前が言った。目覚めてからのルーチンワーク。
顔を洗う、歯を磨く、部屋が埃っぽければ掃除をして二人分の朝食を作る。
それから軽いランニングをして、帰ってシャワーを済ませたら伏黒を起こす。
朝に弱くて目つきも機嫌もよくないのを宥めすかした後、用意していた朝食を温めればいつも通りの朝の時間だ。
寝惚けたままうつらうつらと船を漕ぐ伏黒の顔をまじまじと見つめながら、普段と変わらない生活に不思議な感覚が芽生える。
空虚さとはまた違うが、四、五年は当たり前にあったものが無くなると、元に戻ったというよりも失った、という表現が的確なんじゃないか。
時折頭の中で響いていた声も不快感も、全て綺麗さっぱり無くなっているものだから、余計にそう感じるのかもしれない。
3963