チャイナドレスで潜入する魏嬰「クソ、こんな時に限って……! どこに隠したんだよ」
動く度に真っ赤なチャイナドレスのスリットが太腿を擽っていく。広げた書類を手早く元に戻し、今度は引き出しに仕掛けが無いのかを探っていく。
魏無羨が所属しているのは義賊の流れを汲む中規模のスパイ組織だった。弱きを助け強きを挫く。正規の助けを求められない人達のため、時には巨悪にすら立ち向かっていく。
豪華客船で行われる違法な取引。その証拠を掴み取引に関わった人間のリストを得ることが今回魏無羨に与えられた任務だった。隅から隅まで悪趣味な船の給仕係はチャイナドレスを着た青年に限られており、魏無羨は任務のため致し方なくこの格好で船に紛れ込んでいる。
身体に触れようとしてくる脂ぎった腕を何気なく避け、給仕する振りをして胸元のボタンに仕込んだ小型カメラで数々の証拠を捉えた。後は顧客リストの写しを得ることが出来れば完璧で、現在はとある客室に忍び込んでここにあるはずの記録媒体を探していた。
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