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    spring10152

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    堤さんの一時創作【heterotopic】 | @t_utumiiiii #pixiv https://www.pixiv.net/novel/series/1103159  の二次創作

    モトコさんと整形男SSまとめ琥珀色

     私の目の前にはいつものように顔は違うけれども、呼吸を忘れて思わず見とれてしまうような、視線を向けることを強要するような、いつも通りの美しい男が居た。
     食事に生命維持以上の価値を見出さない私が栄養のまるでない、活動に必要な熱量だけを多分に含んだ、ジャンクで安価なカップ麺を啜っている私に、どこをどう弄れば美しくなれると語る彼の言葉を右から左へ聞き流しながら食事を終えると、彼はシャツの胸ポケットから小さな可愛らしい缶を取り出し、蓋を開けた。
     その中には透き通った黄金色の粒が詰まっていた。彼は白く細長い指で、それを一粒摘むと、空いている方の手で私の顎を救い取り、彼の行動の意図が掴めずぽかんと空いていた口に、彼の瞳と同じ琥珀色を転がりこませた。
     「せめて美しいものを食べて美しく」耳に心地よいテノールが詩を読むように言う。勝手に得体のしれないものを食べさせないでください、と文句を言おうとすれば、彼は初めからそこには何も居なかったかのように姿を消していた。
     口の中には甘く煮詰めた砂糖の味が満ちている。


    甘言

     「厚ぼったい瞼は薄くしてはっきりした二重に、鼻はもう少し高く筋を通して、口角を上げて常に微笑みを湛え、唇はふっくらと柔らかに」
     例によって何の脈絡も無く私の前に現れた男は、女性のように白く、形のいい爪で指先が保護されていながら、男性らしい骨の質感を持った中性的な指で言葉に合わせて不躾に、けれど割れ物に触るように繊細な手つきで私の顔の部位を撫でる。
     「ご存じですか。今は顔だけでなく全身どこでも気になるところは美しく整えられるんです」私の唇で長い指先を止めたまま彼は言う。
     「胸は勿論、余計な脂肪は吸引し、あばらを数本抜けば細いウエストが」彼の指はスルスルと滑らかな動きで私の身体をなぞっていく。「そんなの、とんでもありませんよ。注射だって嫌なのに、手術なんて」私は心底嫌だという顔をして低い声で言い、首を横に振るが、彼は気にした風でもなく「その一歩の勇気があれば、酸っぱい葡萄を眺める必要などなくなりますのに」
     彼は私を導くかのように私の掌に彼のそれを重ねると、俗にいう恋人繋ぎをして呟いた。


    触れる

     「変わりゆく自分というものは、こんなにも愛おしいものですのに」彼は私の、栄養の偏りからかやや筋張っていて丸い爪に、指も大して長くもない、凡庸な手を取り彼のビスクドールのような頬へ導く。彼の白磁の肌は手に吸い付くようでいて、すべすべと手触りが良く、ほんのりと暖かかった。
     「羨ましいとは思いませんか、自由自在に変わる瞳の色」私の手が彼の目元に動かされると、砂糖を煮詰めた飴のような透き通った黄金色をしていた瞳が、幼い夏の日に眺めたプールの水面のような淡い水色に変わる。
     「質も長さも思うがままの髪」若いオリーブ色をしていた彼のほんの少しだけ癖のあるしなやかな髪は、導かれるままに私の手が触れると、新月の夜空のような漆黒へと変わった。
     「ね、どうです。変化を受け入れてみようという気にはなりませんか」彼は長い睫毛で縁取られた切れ長の瞳を細め、形のいい唇を柔らかに笑みの形に曲げながら私に問う。その顔はまるですべての宇宙の美を終結したような、見る極楽とも言うべきものだったが、私は動じない。動じてはいけない、と首を横に振る。
     「私はこの顔に満足してるんで」「それ故にアナタはモトコで在り続ける。だからこそ我々はモトコを求めるのでしょうか。我々の理解の及ばぬものとして」「さあ。理解できないものとして諦めてはくれませんかね」
     彼は極楽の笑みを湛えたまま緩々と首を横に振った。
     握られたままの私の手は彼の体温と混ざってほんの少し熱を持っていた。
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    spring10152

    DONE烏丸さんが芽衣ちゃんを育てて食べようと決意する話
    捕食者と被食者の出会い「おじさんあたしを隠して!」
    彼女との出会いはこの一言だった。私は彼女の通う小学校の学校医で、職務を終えて自分の病院へと帰ろうと丁度車のドアを開けたところに彼女が飛び込んできたのだ。何事かと事情を問おうにも彼女はしっかりと車に入り込んでしまい後部座席の足元に姿を隠して早く発車しろと怒鳴るばかりで取り付く島もないので、仕方なく私は彼女を車に乗せたまま出発した。
     到着するとひとまず彼女を病院に上げて事情を聴くことにした。何でも担任が気に食わなくて鋏で刺してきて追われていたところを私は保護してしまったらしい。そういえば健康診断の時に問題児が居るから怪我を負わされないよう注意しろと言われていたが、もしやこの子の事だったか、と面倒事を抱え込んでしまった事にため息を吐いた。食べて隠蔽しようかとも思ったが、事前準備もなく連れてきたのでは警察に捕まってしまうかもしれないし、聞いてみれば4年生だという彼女は食べるにはやや大きい。どうしたものか、とりあえず学校に帰そうかとすると「どうせ明日には処分が決まるんだから今日はここに居させてよ」とふてぶてしい態度の彼女は病院内の備品に張り付いて離れない。しぶしぶ私は彼女を病院に置いたままその日の診察を終わらせた。
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    spring10152

    DONEひなたに彼氏の肉を食わせる静さんの話
    幸福な食卓私はルームシェアをしているひなたの為に毎日食事の用意をする。それが私達の役割分担だったから。私は正直料理の腕には自信がある。毎日一汁三菜、ほかほかと湯気を立てる温かい食事を、愛を込めて用意していた。そう私は彼女の愛していた。
    私が彼女の愛していたというのは、友愛や親愛ではない。恋愛感情だ。私は彼女が欲しいと思っているし、彼女が他人と話していれば嫉妬する。正真正銘欲を持って愛していた。
    けれど彼女が同性愛者でない事は分かっていたし、私はこのルームシェア生活が続きさえすればそれで良かった。想いを伝えるつもりなどなかった。あの日までは。
    彼女が男の恋人を作ってきたのだ。今まで恋愛にはあまり興味が無い、彼氏はいらないと言っていた彼女が。私の見知らぬ男の隣で幸せそうに笑っていたのだ。許し難かった。そんな男の何がいいのだ。背なら私だってひなたよりも高いし、性格だって女の子に好かれやすい。顔だって悪くないはずだ。私の方がひなたの事を何でも知っていて気遣いができて最高の恋人になれる筈なのに。それなのに、あいつは男というだけで私からその座を奪い取ったのだ。
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    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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