覚めて、秘めて④ どうしてこんなことをしているのだろう。そう思うのは今日だけでもう何度めか。手のひらに乗せたスティック状のリンゴを囓って持っていくウサギの毛並みを撫でながら、三宙は辺りを見回した。
とりあえず知った顔が居なくて安心するのも不思議な感じだ。少し前までなら誘えそうな相手が居たら声を掛けていたはずだった。賑やかなのは楽しい。
それが今はその逆で。目の前にあるのは癒しの空間に違いないけれど。
「ほーら。みんなで分けあって食うんだぞ」
どうにも落ち着かない。
「やっぱこうやって小動物に餌やったりすんのは楽しいっすね」
空回りな言葉が木の葉のさざめきに溶けていく。
ふれあいコーナーの木陰のベンチに並んで座っているが、餌をやっているのは三宙だけ。四季はといえば、隣でそんな三宙とウサギの様子を黙ってぼんやり眺めている。
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