見送る側 春は出会いと別れの季節とよく言うが、三月は卒業シーズンなのもあって、出会いより別れの気配を色濃く感じる。
かくいう俺も、この時期になると決まって、幼い頃海外に引っ越す幼なじみを空港で見送った日のことを思い出してしんみりしてしまう。今でも手紙やメッセージのやり取りは続いているけれど、直接会えないのはやはり寂しいものだ。
(二度と会えないとなると、なおさらだろうな……)
猫又は何百年と生きてきたのだ。
途方もない時間の中、何度大切なものを見送ってきたのだろう。
いつも散々からかわれている身としては仕返しできるネタは大変貴重だが、猫又の瞳に時おり寂しさが滲むのを、俺は気づかないふりをしておいてやろうと決めた。
お題【おくる】
(三〇〇字)