怪我の功名、愛に触る「やだ、愛に決まってるじゃないそんなの!」
ジュンの父と同世代だというメイクさんはバシンと左肩のあたりを叩いてから豪快に笑った。
ふくよかな体躯で相手が大物芸能人であれスタッフであれその姿勢を崩さないその人は他のメイクさんの言葉を借りるのであれば"THE、オバチャン"といった親しみやすい人で、彼女自身も一人称は「オバチャン」であるしそのキャラクターからジュンも気づいた時にはポロリと小さな悩みを溢していたなんてことも少なくなかった。
日和の午前の仕事が押しているということと"オバチャン"と二人きりのメイクルームだというシチュエーションから気の緩んだジュンは掻い摘んで怪我をしたことと日和に世話をやかれていること、それが何故だか分からず困惑しているということを話した。
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