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    パイプ

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    パイプ

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    つづき🐈‍⬛
    寒すぎて全然かけてない(言い訳が下手)ので激短い

    #ひよジュン
    Hiyojun

    怪我の功名、愛に触る「おひいさん、」
    「うん?」
    優しい声に絡め取られてしまえたらいいのに。
    「どうしてオレに優しくする...です?大事な時に怪我なんかしちまって、もう、要らない、でしょう?」
    要らないと言った自分の声が震えていると理解したと同時に思いが溢れだす。
    「捨てちまうんなら、優しくすんなよ…期待しちゃうだろ?これもアンタの貴族の慈悲ってやつ…ですか?余計に残酷じゃねぇか」
    日和の目を見て言えるはずもなく、足を上げた体勢のまま、自分の腹あたりをジッと睨むようにして吐き出す。啖呵をきるにはあまりに間抜けなポーズだ。
    はやく、早く要らないって突きつけて。怪我をしたうえに噛み付いてくる野生なんて、あんたは必要としていないでしょう?

    ぐるぐると内側で問い続けてもひと言も返さないどころか、小さな物音すらたてない日和に根気負けしたような気分で顔をあげる。この期に及んで怒らせちまったんだろうか、なんて考える自分に呆れながらももうジュンはこの空気に耐えられなかった。
    「、あの、」
    「やぁ〜っと顔をあげたね!おばかさん!」
    「は?おば、「おばかさんだねっ!ジュンくんはおばかさんのさらに上、おおばかさんだねっ」
    今までの静寂はなんだったのか。目が合った瞬間に眉を吊り上げて捲し立てる日和にジュンはたじろいだ。
    「きみがぼくのことを信頼していないということはこの一件で痛いほど分かったね。寂しいけれど、そんなものはこれからいくらでも培っていけるね。でも、きみが、ジュンくんがずっとそうして隠してしまうならそれも難しいね。なにより!ジュンくんはぼくを過小評価しすぎているねっ!怪我をしちゃったくらいでぼくはきみを捨てたりしない。…ましてや、誰かに加害されて負った怪我ならジュンくんを責めるのはお門違いだよね?」

    ひやりと、背筋が冷える感覚に息を呑む。
    レッスンルームでどうしたのかと聞かれた時、ジュンは階段から落ちた事実だけを話して誰かに突き飛ばされたということは伏せたのだ。なのに目の前の日和はそれを見ていたかのような顔で「加害された」と口にした。
    別に隠そうという気はなかったのだ。今から捨てられるのに言い訳してもなと思ったのと、あんたに拾われてから嫌がらせを受け続けているなんて言ったあとにこの人がどんな顔をするのか想像をしてしまって「突き飛ばされた」と言えなかっただけだ。それが結果として隠しているということになるとは思ってもみなかった。
    頭の中での言い訳を散々にしてから謝罪のために日和の顔を見て、ジュンはもう一度息を呑んだ。

    ———そう、あの日の日和は寂しいようなつらいような、悲しいような傷ついたような、そんな哀色をかんばせ一杯に浮かべていた。
    どうしてとか何か嫌なことがあったのかとか、確かそんなことを矢継ぎ早に聞いたジュンに日和はなんと答えただろうか。なんだか釈然としないような何も解決していないようなそんな回答だった気がする。
    結局、ジュンは今もなぜあの日の日和が怪我をしたジュンを捨てもせずに優しく介抱してくれたのか、あんなにつらそうな顔をしていたのかを知らないままだ。

    「ジュンくん、ただいま。お腹すいたでしょう?ぼくたちもお昼ご飯をいただこうね」
    かちゃり、ドアノブが音を立ててそこから顔を覗かせた日和がジュンを手招く。ここ数日で見慣れてしまった日和の貼り付けたような微笑みにうっと警戒指数が上がるも、その手招きを拒否することなどできないので大人しく立ち上がる。

    ケータリングコーナーではあぁだこうだ言い合っていた(声が響いていたのは茨だけだったが)Adamの二人が昼食のメニューを決定したところだったようで、現れた日和とジュンに「お先」と手を振って控え室に戻って行った。
    いつもならジュンが備え付けのトレーを取る前からあれが食べたいこれがいいと喧しい日和はいつもそうしていたとでも言うような自然な流れでトレーを手にして「ジュンくんはどれが食べたい?」と、先ほどと同じ笑顔で問うてくる。
    …そう、これだ。
    この日和の行動こそが控え室でジュンが茨と凪砂に泣きついた理由だった。
    日和はあの日からここまでずっと、この笑顔を顔に貼り付けたままジュンの世話をやき続けているのだ。

    「こはくくんには暫くの間ぼくの部屋に移動してもらったからね。大丈夫。ぼくの部屋の二人はいい子…んん、奏汰くんはいい子だね?もう一人は同じユニットだし問題ないでしょう?だから、怪我をしているジュンくんのお世話はぼくがしてあげるね」
    燐音に対して"いい子"という表現を使うことを許せない自分がいたのだろう、しっかりと訂正を入れながらも説明されたことをただ口をあんぐりと開けて聞くしかなかった。
    それからは着替えの手伝いに湿布の張り替え、食事の準備に朝の支度の手伝い——果ては入浴や食事を摂る行為さえも手伝おうとしてきたのでそれは丁重にお断りした。——
    とにかく、ジュンが何かをしようとすると日和が動いてしまう。安静も安静。ほとんど全くと言っていいほどに右手の出番はない。おかげで昨日の検診では早くもいい経過にあるとの診断をくだされた。なんともありがたい限りだ。
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    Replies from the creator

    パイプ

    PROGRESSひジ
    怪我をしたジュンくんが今と過去の怪我をとおして日和からの愛を自覚する話。途中。とても途中だけど、長めのお話は連載形式にしないと筆が進まないマンなのでぽい
    怪我の功名、愛に触る「ねぇ、ジュンくん。ぼく、怒ってるの。だからね、」
    今日からその怪我が治るまで、ぼくが君のお世話をしてあげるから存分に反省するといいね。


    とあるバラエティ番組の登山企画で手を滑らせた共演者を無理な体制で庇ったジュンは右手首の筋を損傷してしまい、技師に誂えてもらったサポーターをつけて最低でも一ヶ月の安静を言い渡された。
    Edenとしては新曲のフリ入れ期間でもライブ前のレッスン期間でもなかったし、個人としても冬の寒い時期は身体を張った企画はそう多く入ってこないので、仕事で迷惑をかけることは少なく済んだのが幸いだったのだが、右手首を動かしてはいけないというのは日常生活において不便なことばかりだ。
    医者には痛みは徐々に引いていくと言われているものの、昨日怪我したばかりのそこは未だにうっすら熱を持ち、ジクジクと痛みを訴える。身体が動かせないのだから英語の勉強をしようとペンを持っても指への力の入れ方次第では手首まで痛んでしまうのだからもうお手上げだ。
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