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    sasaanmaimai

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    sasaanmaimai

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    💎がいないミラジャの話
    カナダイカナ
    脱落ネタ含む。

     シンゾウ観覧車に乗ってから、ヒナタの声が聴こえなくなった。
     ずっと僕の味方で、そばにいてくれた大切な存在。
     ヒナタがいなくなってから僕は、上手な話し方も笑い方も忘れちゃった。ヒナタがいなきゃ、僕はなにも分からない。
     
     それに……ヒナタがいなくなった代わりに、悪意のある目が僕を見ているような気がする。
     じっと、いつまでも、どこまでも。

     背中から感じる視線に耐えきれなくて、僕は後ろを見た。
     そこには……ダイヤがいた。
     
    「な、なんだよ……」
    「……!!」

     ダイヤは、笑顔で僕を見てる。
     元気ないね、どうしたの? 
     ……そう伝えてきたダイヤに、構う余裕なんて僕にはなかった。

    「……今、君と話す時間なんてない」
    「……!」
    「君は他の子と話せばいいだろ……!」
    「……」

     ダイヤは困ったように笑って、すぐにどこかに行ってしまった。

     交わした会話なんて、それっぽっちだ。
     ダイヤは、誰とでも仲良くなりたいんだ。
     ダイヤは僕とは違う。ダイヤは僕と違って、誰とでも仲良くなれるんだ。ダイヤにはともだちがたくさんいる。ヒナタ以外、話せない僕とは違う。

     僕に話しかけてくるのは、ダイヤが優しいから。
     だって、それ以外に理由なんてない。
     そうだよね? だって、ダイヤは……ダイヤのそばには色んな子がいるから。誰からも信じてもらえない僕とは違う。



     


     ……数時間もたたずに、知らせがやってきた。

     シンゾウ観覧車で、ダイヤが脱落した。そんな知らせ。

    「ダイヤくんが、シンゾウ観覧車のゴンドラから落っこちちゃったの」

     涙がにじんだ目。本当に悲しくて仕方ないみたいに、そいつは話している。
     自分はなんとか無事だったけど、ダイヤは振り落とされちゃった。そんな、白々しい言葉。

    「……こんなことになるなら、もっとダイヤくんに声をかければよかった。ダイヤくん、ずっと何か悩んでたみたいだったから……ねえ、カナタくんは何か心当たりない?」

     じっと、あの悪意が僕を見てる。
     それが怖くて、なにも見たくなくて、僕は休憩所から出るトビラへと向かった。

    「あー、やっぱり知ってるんだ。ダイヤくんが脱落したのは、カナタくんのせいなんだね」

     あいつの横を通ったとき。ぼそりと、声が聴こえた。

     知らない。僕はなにも知らない。
     知らないけど……悩んでた?ダイヤが?どうして?
     もしかして、僕がダイヤを突き放したから?

     ……それが本当なら、ダイヤを脱落したのは……そのキッカケは、僕なの?

    「……ねえ、ヒナタ。応えてよ、君が話さなきゃ僕は……」

     ヒナタは、ずっと静か。
     怖いよ。守ってくれるヒナタはいない。
     僕は、一人で、ずっと一人でここにいなきゃならないの?

     考えて、逃げたくて……

     ……気がつけば、僕はシンゾウ観覧車の前にいた。

    「人数ガ足リナイデミ」

     いつも通りの無機質な顔で、カエルタマゴは告げてきた。

    「ヒナタも含めて二人!それでいいだろ……!」
    「ヨクナイデミ。ソレハヌイグルミデミ」
    「ヒナタはぬいぐるみなんかじゃない! ヒナタは……」
    「タダノ、クタクタノヌイグルミデミ」
    「……っ!!」


    「いい。僕だってこんなアトラクションもう参加しない」

    (カナタくんのせいなんだね)

     うるさい、うるさいうるさい!!

     頭に聴こえる声にフタをしたくて、僕は耳をふさぐ。
     でも……突然聞こえてきたアナウンスを防ぐことはできなかった。

    「……!」

     大音量で響く放送。

     ミラクルジャッジパレード。即脱出出来るアトラクション。

     

     脱出が出来るのなら……僕は、早くカエルタマゴたちを撃たないといけない。ずっしりと、重たい水鉄砲を持って、僕は走った。
     脱出したら……きっと、ヒナタだってまた話してくれる。
     そして、いつも通りになる、はずなんだ。

     でも、ヒナタが教えてくれなきゃ、僕は思うように動けない。
     
     ながされるぷーる。そう書かれた看板。
     準備中と書いてあるそこに、僕は足を踏み入れた。

     準備中の場所なら、きっとカエルタマゴも少ないと思った。……それは間違いじゃなかったみたいで、カエルタマゴの数は外よりも少ない。

     下へと続く道を歩いて、僕は考える。

     ダイヤのこと、ヒナタのこと、脱出のこと。
     頭の中で、ぐちゃぐちゃと際限なく言葉があふれて、手に力が入らなくなって……気がついたときには、ヒナタは僕の手から離れていた。

     そして、近くにいたカエルタマゴが、ヒナタを連れて奥へ奥へと進んでいく。
     
     今出たら、カエルタマゴに撃たれてやられる。
     わかってる。わかってるよ。

     でも……気がついたら僕は、ヒナタに手を伸ばしていた。

    「デミ?」

     ヒナタを持っていたカエルタマゴは、すぐに僕へと水鉄砲を向けた。そして、僕は銃口から出てくる黒い液体に濡れた。
     わかったのはそれだけ。そのあとに、僕の目の前は闇に覆われた。

     ……ヒナタ、取り返せなかったな。
     どうしてヒナタは喋らなくなっちゃったのかな。ヒナタがいないなんて……そんなのウソだ。ヒナタはいる。いるはずなのに……僕の近くには何もない。
     でも……一瞬、青色が僕の目の前に現れた気がした。
     ダイヤ。なんで君はシンゾウ観覧車に乗ったの?
     なんで脱落しちゃったの。
     あいつの言うように、僕のせいなのかな。

     ……さみしいよ。僕の周りは、もう誰もいないんだ。

     もし、僕が君の話を聞いていれば。
     僕らは、ともだちになれたのかな。
     
     ちゃんと、君の話を聞いていれば良かった。

      
     考えても仕方ない。
     僕も君も、もう以前には戻れないから。

     目をつぶって諦めると、僕の意識も黒色に塗りつぶされた。
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