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    「いつから気づいてたの?」と言うムウマリュをかきましょう。
    #shindanmaker
    診断メーカーのお題から。

    健全です。無印時空のつもりだったけど 細かいこと忘れてるしわかんないしでガバガバだと思います。
    両片想いの時期を沢山見たくて書きました。
    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ムウマリュ.
    清潔な寝台の上に、鶸色が鮮やかに広がっている。
    そこはアークエンジェル内、搭乗員用の一室。
    時に、キラを初めとした年若い彼らが 其の心境を吐露し合っていた。そして時には、人に晒せない思いが澱のように閉じ込められたりもした場所。
    そこで​──
    「居ないと思ったら、こんな処に隠れているなんて」
    マリュー・ラミアスは一人、嘆息した。

    寝台にて長身を横たえていたのは、同艦乗組員のムウ・ラ・フラガであった。
    青白くさえ思える簡素な敷布に広がる鶸色は、彼のものだ。 一息つく為の時間は、作らなければなかなか取れないものとはいえ、まるでここが戦争などしていない別荘でもあるかの如く、こうも気持ち良さげに昼寝をされては、指揮を執る重圧を背負うマリューからあらゆる気が抜けていく。
    地球連合とプラントの対立の只中ではあるが、四六時中 闘いに出ている訳ではない。
    艦内だけでも幾人もの思いがせわしく交錯し、パイロットの召集令はしょっちゅうかかり、まとまった時間では無いものの、搭乗している者達が息を付く間は、見かけだけでも少しだけでも、確かにある。前述の通り、上手く作ったり、作らせてあげられたりが出来れば。
    とは云え、彼女が改めて目を落とす其の寝姿はあまりに、
    「​ちょっと無防備じゃないかしら」
    ​───色々な意味で。


    マリューがムウを捜していたのは、今後のことで話したいことが諸々あったからだ。
    その頃の彼女と云えば、共に搭乗している繊細な少年少女をも導き、戦闘時には己の判断が全てを担う艦長職に精神のすり減らざるを得ない環境に身を置いていた。
    今は呑気に寝姿を見せているが、眼前の男の存在は いつからか、そんな彼女にとって不可欠な存在となり始めていたのである。
    これもまた、色々な、意味で。

    ともかく。
    ばっちりと見つけてしまったそんな彼の姿に見なかったふりをして、何食わぬ顔で再び通り過ぎる、という器用なことも出来ず、マリューはおずおずと寝台の横に屈み、改めて其の端正なかんばせを見つめた。​
    彼がキラ達に温かい言葉をかけていたことも、時に発破をかけたりとしてくれていることは何となく知りながら、そうした役割が無い折の表情は何故だか幼くさえある。起こそうか起こすまいか躊躇うほどに。
    穏やかで規則的な寝息は耳に心地好く、ことん、と傾いだ首に合わせて額にかかる髪を そっと除けてやれば、目蓋を閉じたままのムウは無意識ながらに、指先へと額を寄せてくる。起きたのかと思いきや、そうではないらしい。
    髪を分けた延長で、マリューは、寝台の端から垂れていた彼の長い隻腕をも、そっと其の身体の上に載せてやる。
    いつも捲られた袖から覗く 滑らかな筋肉が隆起するのがわかり、掌の先の無骨な指先が ぴくりと震え、それでも、起きない。呼吸に胸が上下する。
    いつまでだって見ていられる気がした。


    自分達を取り巻く情勢も何も、マリューには今だけ全てが嘘のように思えた。まるで、この寝台の周囲だけが そうしたものの全てから切り離されているかのような気になってくる。
    「……本当に屈託の無い人、」
    そして思うのは、
    「もし 通りかかったのが私じゃなくても、……貴方は寝顔をひとつ晒すくらい、相手が誰であれ抵抗が無いんでしょうね、」

    そこが、裏表の無い貴方の、良い処でもあるのだけど。
    力強くもすんなりとしたムウの隻手に目を落としつつ、唇からも そんな言葉がぽつんと転げ落ちる。
    戦闘時の、強かながら逼迫した険しい姿と、静かな部屋で斯様な過ごし方をしている彼との差​──それは裏表ではなく、いつだって真っ直ぐな彼故に見られる一面のひとつだ​──を味わう一方で、それが仮に誰かだけのものになることを思ってみれば、マリューの胸中は翳る。
    彼を見留めたとて素通り出来なかった理由は、本当は彼女自身、半ばわかっていた。乗組員には等しく接しているつもりでありながら、何故この人に対しての己は、こんなにも違うのだろう。


    ​───と、その時だった。
    「さて、どうだか」
    身動ぎも、伸びをする様子も無く、寝台上のムウがいつの間にか其の目を開き、優しげ、かつ悪戯な色を湛えてこちらを眺めているではないか。
    まるで、未だ悪戯に気づかれていないと思い込んでいる子供を見守りでもするかのような眼差しと、はたと視線がかち合った。

    「​おはよう、艦長さん?俺の顔も見回り対象か?」
    「っ、……! い、いつから気づいていたの?」
    瞬間、マリューは弾かれるように手を離した。
    幾許か大きくなってしまった彼女の声に較べ、柔く笑う息の音が、穏やかに鼓膜を撫でる声が、白い制服に隠れた胸の奥深くをも撫でてゆく。

    「ん?ああ、……君が俺に、遠回しなお説教をくれた時。"ちょっと、無防備じゃないかしら" ​ って、言ったろ?」

    「​ッ最初から、……」
    思わず言葉が途切れる。眠ってなど居なかったのだ。となると、髪に触れていた時のことも、零した呟きも、全部。
    「最初からも何も、君が来る前から 眠ってなんか居ないさ。目を閉じていただけで」
    「最初から気づいていながら 寝たふりするなんて」

    責められている訳でもないのに、きまりの悪さと、寝顔を黙って眺めては手を伸ばしていた気恥しさとで あたふたとしているのをありありと自覚して、そこには艦長職としてではなく、歳相応の一人の女性としてのマリューが居た。
    そして、そんな彼女をも余所に、ふわあ、と欠伸をひとつ浮かべれば、そこにはもう、幼い寝顔から一転しっかりとした "ムウ・ラ・フラガ" が居る。

    後ろに両肘をついて半身を起こした彼は、楽しげにマリューを見つめて言う。
    「……それで?俺が 他の人間にも易々と寝顔を見せていたとしたら、どう思うって?」
    「……っ、それは……もういいの。 そうじゃなくて、他に話があって 貴方を捜していたんだから、」
    「話したいことがあるんなら、今でも良いと思うけど」
    応えられずに立ち上がったマリューがそのまま踵を返すと、今度はムウが嘆息するのが背後に聞こえた。
    くつりと喉奥で笑う、仕方がないな、と言うような其れは、こちらが幾ら足掻いたって、何もかも全てをとうに分かられているかのような気にさせてくる。

    「……本当に、後でいいわ。適度に人の気配が無いと、貴方に、……、思っていることをなんでもかんでも言ってしまいそうになるんだもの」
    それはマリューが彼女自身にかける統制である。
    昨今の厳しい情勢間では、いつ何があるか分からない。
    もし​───アークエンジェルの指揮に関する本来の相談事ではなく、たった今 思わず口走りかけた至極個人的なことを、己にとって特別な位置になりつつある彼に全てを話してしまって、そして、その後 失ったら?
    そうならない保証は何処にも無い。
    だから、マリューは廊下を移動しながら己の胸中を仕切り直す。
    今の時間は、なんでもないのだ。
    見かけないと思ったら子供みたいな顔をして、同じく子供みたいな悪戯をしてきた彼に、もう一度話すだけの、きちんとした約束を取り付けただけ。
    額に流れ掛かっていた髪を除けてあげて、寝台からはみ出していた腕を、戻してあげただけ。

    けれどもきっと彼のことだから、忘れた頃にああして不意打ちの如く、個人的な気持ちにならざるを得ない瞬間を差し込んで来るかもしれない。
    淡白な色をした制服の中で抱える其の動揺は、この限られた世界に居る彼女の中で それでも唯一、仄かに擽ったく甘いものであった。


    一方で。
    凛とした猫が時折見せる仕草の如く こっそりとした接触を、目蓋を閉じたまま受けていたムウは、寝台に残されたまま、隻手で頬をなぞる。額に掛かっていたのをふわりと除けられた、鶸色の髪も。
    昼寝でもしたかったのは本当だが、こんな時の こんな処で、本気で ぐうぐう眠ってなど居られない。
    目だけを閉じていた中で触れられた其処を 再び自らの手で辿ってみても、先程と較べて何の甘さも心地好さも無かった。
    そんな己の正直さと、未だ少女のような彼女の名残に苦笑する。
    ​──人の髪やら顔やらに こっそり触っておいて、慌てて飛び跳ねて、適度に人の気配が無いと、だって?


    「あんなこと言ったら、全部話しちまってるのと同じだってのに」
    弾みをつけて、ムウは怠かった長躯を寝台から起こした。
    「さて」
    逃げた猫を、追いかけるとしますか。

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