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    ゆりお

    WEBオンリー展示用 @yurio800
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    ゆりお

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    ロサの首を絞めてあげるズィマー。

    ズィマロサ/アークナイツ グムは夜中に目を覚ました。
     喉が渇いている。一度そう感じると堪らなくなってグムはベッドから這い出た。簡易キッチンで水を汲んで、ごくごくと一息で飲む。もう一杯。大丈夫、もう飢えたり渇いたりなんかしない。
     人心地付いたグムは部屋の中を見渡した。うす暗い視界に、空のズィマーのベッドが見える。
    「……グム?」
     反対側からイースチナの声がした。
    「どうしたんですか?」
    「イースチナお姉ちゃん、ズィマーお姉ちゃんがいないよ」
    「きっとトイレですよ」
     返答は素っ気なかった。イースチナが手招きするのが見えて、グムは彼女のベッドの中に潜り込んだ。
     安心する温かさと匂いに包まれて、グムはそのまま眠ってしまった。

               *

     なんて最悪の感触だろう。
     冷静にそう思う。まるでもう一人のソニアが自分を見ていたように。
     のけぞる曲線、なめらかな感触。白く浮かび上がった喉に手を当てる。力を込めれば、彼女の身体が大きく跳ねる。
     闇の中で蠢くロサの豊満な肢体は、自分たちと違い、熟した大人のそれだった。きっと、見る人が見れば美しいのだろう。けれどもズィマーの下でのたうつ姿は、まるで巨大な芋虫のようで、醜悪にしか思えなかった。
     ロサの体が激しく痙攣し出した。内部がうねって熱を持つ。しとどに蜜が溢れ出し、絶頂に達したのだと気づくと、ズィマーは怯えた獣のように彼女の上から飛び退いた。
     途端に気持ちが悪くなって、ズィマーは裸のままトイレに飛び込んだ。便器の中に顔を突っ込んで思い切り嘔吐する。跳ね返った吐瀉が顔を汚す。まるで自分が排泄物になったような気持ちになる。
    (何にも変わんねぇ)
     眠っても、眠らなくても、何も変わらないじゃないか。この世は悪夢ばっかりだ。全てに嫌気がさしながら戻ると、ロサは嬉しそうに鏡を覗き込んでいた。
    「この痕を見ると、私、とても安心するのよ」
     ズィマーの指の痕がついた喉を愛おしげに撫ぜる。すっかり彼女は落ち着いた様子だった。けれどもその口から滑り出るのは、壊れた心の破片だけだ。
    「……マゾヒストじゃないんだろ」
     こんな言葉の意味も知りたくなかった。ズィマーは勝手に冷蔵庫を開けた。その中には、かつてロサが使って、死に損ねたウォトカが入っていることを知っている。
     瓶に直接口をつけて、一口飲む。一気に身体が熱くなって、視界がぐにゃりと歪む。
     床に座り込んで、ズィマーは顔を上げた。ベッドの上で、ロサが笑っている。それはもう貴族の笑みではない。憐れな女、もしくは淫婦と呼ぶのが相応しい。
    「罰を受けているみたいだから」
    「いつだって殺してやるよ」
     ズィマーはいつものように答えた。それは本心だった。突き詰めてしまえば、生も死も同価値だ。生きているのが悪くないと思うように、死んだ方が救いだと思うこともあるだろう。
    「あなたに殺されるのは、とても、貴族らしいことだと思うわ」
     ロサは貴族らしく、美しく微笑んでいた。
     ズィマーは昔、歴史の授業で習った、革命のことを思い出していた。平民に襲われて、ボロ雑巾のように死んでいった王様のこと。
     もううんざりだ。反吐が出る。ズィマーは口の中の反吐の残りを床に吐いた。
     ズィマーには分からない。きっと、ロサにも分かっていない。ずっとずっと分かっていない。こんなの、意味のない行為だ。けれどもそうやって切り捨ててしまえば、きっと生きていることだって意味がないことだ。
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