たまたま入ったコンビニで、凪はもうすぐ七夕であることを知った。児戯のようなデコレーションで「七月七日は七夕」と書かれた棚には小さな笹と、折り紙だの限定パッケージの菓子だのが陳列されている。凪は季節や日付の概念が薄く気温の変化くらいしか普段感じないが、昨今は商魂たくましいコンビニのおかげで、季節の移り変わりやイベント事も嫌でも知らされる羽目になる。
七夕でもいまは一大イベントのように取り上げられていて、大出世じゃんなどと七夕のことを見直しながらスルーしようとしたところで、ひょいと玲王が顔を出した。
「へー、そういやもうすぐ七夕か」
「……玲王」
玲王に突然サッカーに誘われて、無理矢理練習させられて、面倒だし疲れるのに何故か続けていて。こうやって練習帰りに連れ立ってコンビニに寄るくらいには、玲王と一緒にいる時間が増えている。少し前の自分からは考えられない事態が次々と起こっているが、玲王と一緒に過ごすのは悪くなかった。
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