彼について、その他あとがきなど・『彼』について
本名の「PEN-GWYN」の意味は作中にもあったように「白い頭」、及び大海鴉を指す言葉です。発音がちょっとややこしいので、「カラス君」とか「ペン君」等お好きなようにお呼び下さい。あえて発音しようとすると「ペングゥイン」みたいな感じになります。日本人には若干言いづらい…。
ジェルマ王国出身のペンギンの複製(コピー)。なのでDNAレベルでは一応ペンギンと同一の存在です。
作中ではアルビノと言っていますが、瞳の色素はそのままなので正しくは白変体だと思われます。ホワイトタイガーみたいな感じ。アルビノって言葉が使いやすくてつい使ってしまいましたが、正しくアルビノである場合は瞳の色は赤くならないといけないんですよね。ややこしくてすみません。
トシトシの実の能力者ですが、ボニーちゃんみたいに使いこなしている訳でも使いこなすつもりもありません。あくまで自分のアンチエイジング+シャチを若返らせる為だけに使いました。戦闘ではあくまで自身の戦闘能力のみで戦っています。槍使いなのは体が一番馴染む武器だからです。
年齢は二十歳ですが、劣化がかなり進んでいるのでトシトシの実の能力を解除すると一気に老化が進みます。なのでトシトシの実でとりあえず実年齢と同じくらいの年齢まで抑えてました。外見は髪が白い事と傷とか刺青とかピアスとかが無い以外はほぼ元のペンギンと同じです。
ペンギンが入り込んだのはあの兵士たちが生み出されるカプセルに入ってる時から。自我が強すぎて捨て駒にならない+髪が白い事から欠陥品扱いされて破棄されました。唯一情をかけてくれたのがジェルマの女王になったレイジュです。ジェルマの事はあまり快く思っていませんが、名前をくれたレイジュに関してはほんの少し感謝しています。
ジェルマ王国に葬儀の文化が無い、というよりジェルマ王国は超合理的主義なだけだと思ってます。ジャッジが居なくなった後だと特に合理主義的になりそうな気がして。
あと、ベガパンク製のクローンと違って特に自我は必要無い&捨て駒のような存在なので10年稼働すると劣化します。なのでクローンではなくコピーと呼んでいました。
生まれて10年ほどは素体であるペンギンと同じくらいの肉体年齢(およそ30歳前後)です。その後一年ごとに大体5~6年くらいのペースで肉体年齢が衰えると考えて頂けると丁度良いかと。彼の年齢は二十歳ですが、肉体年齢は90超えです。
ペンギンが入り込んでた当初は自我と言ってもそこまではっきりとした自我があった訳ではありませんが、ジェルマから脱出しなければ、という思いはありました。なので破棄されそうになったのは却って渡りに船状態だったと思います。
作中で一番最初に現れた時からシャチを強姦した辺りまで、彼ではなくペンギンが喋ってるセリフは結構あります。シャチがツナギを着続ける理由を言い当てた辺りが特に顕著かと。前半のシャチ強姦シーンは彼が表に出たままペンギンが襲ってるという構図だったりします。内側から操った感じに近い。シャチに接近した時点で彼自身にも止められなくてどうしようもなくなってました。フェラしたのはせめてもの抵抗です(うちのペンギンはフェラ苦手なので)自身を止められなくて結果的にシャチを傷つけてしまったので、その後めちゃくちゃ落ち込んでました。
ペンギンが眠ってからはほぼ彼のターンです。とはいえ情緒が育ち切ってなかったので、作中で書きながら少しずつ彼の情緒を育てていった感じです。ペンギンと違うと意識してから彼の口調も若干幼くなりました。やたら拗ねやすい上に拗ねると唇尖らせるクセは完全に彼のものです(ペンギンの場合はますます口をへの字にする)他にも甘いもの大好きだったりするのも彼の特徴(ペンギンは甘いもの得意じゃない&果物は極力そのまま食べたい派。シャチが作ったスイーツは無表情のまま完食する)逆に、照れるポイントはペンギンと一緒だったりします。
シャチが彼を襲うシーンは…うん、書いてる最中ずっと「概念えちおね」とか「未亡人」とかそんな単語がずっと浮かんでました(笑)彼のプレイスタイルはペンギンに比べるとかなり紳士的、でもシャチがしっかり満足する程度には激しめです。
ペンギンの願いについては彼は最初から分かっていました。ペンギンの願いを知った上で、シャチの願いを知った時にペンギンが望んでいた本当の願いについても察しました。なので、彼が現れた時点であの結末は決まっていたと言っても過言ではないです。
ツナギを欲しがったのは、彼の願いであると同時にペンギンの願いでもありました。
最期までシャチを独りにしない、というのは「ハートの海賊団」としても独りにしない、という意味もあります。逆に言えば、旗揚げの時からずっとハートの海賊団だったシャチと共にハートの海賊団を終わらせる事こそがペンギンの本当の願いだったとも言えるかもしれません。
ある意味ペンギンとシャチの二人に巻き込まれたような彼ですが、それでも(肉体の限界が近いという事を踏まえても)彼にとってもあの結末は彼自身が望んだものでもありました。二人分の苦悩を知り、二人分の願いを叶える為に生まれたような彼ですが、だからこそ二人を苦悩から解放する事が彼の本当の願いだったんだと思います。
彼とシャチの関係ですが、名前の無い関係、というのが一番しっくりくるかと思います。
恋人でもなく、親子でもなく、友人でもなく、相棒でもなく。
何と言うか名前は付けられません。でも確かにそこに愛情は存在します。
彼はシャチの一番には絶対になれないと分かった上でシャチを深く愛していましたし、シャチもまた、ペンギンという存在を超える事は無くても彼の事を深く愛していました。
そこに名前を付けるのは無粋かな、と思います。
ペンギンについてはまあ振り回されていい迷惑、と思ってます。でもシャチに会えたのは自分にとって一番の幸せだったしそれについて感謝している、というのは本当です。
でもちょっと腹立たしいし妬ましいとも思ってます。
こう書き出してみるとかなり不憫な彼ですが、それでも少しは報われているんだと思います。
正直書いててかなり愛着湧いたのでまた何処かで書いてみたいな、と…。書くかどうかは不明ですが。
・ペンギンについて
作中では渦潮に呑まれて実質行方不明状態でした。でも状況が状況なだけにハートの全員が諦めていたし、何よりシャチが精神崩壊状態でそれどころじゃなかったのが大きい。なので碌に捜索もされないままジェルマで素体にされました。
仮にジェルマにペンギンの死体が上がっていた事をサンジが知ったら絶対に素体になんかしなかったしどうにかしてハートの面々に連絡付けて(それこそ何年もかかっても)シャチの元にペンギンの死体を送り届けるくらいはしてたかもしれません。あくまでIFですが。
ジェルマの兵士がペンギンを基にしてると知ったらサンジ間違いなくガチギレ案件なんですが、生憎と絶縁状態なんだなぁ…。
死後地縛霊状態でジェルマに縛られているうちに段々シャチへの執着心とかそういったものが歪んでいきました。そんな状態でたまたまペンギンと魂としっくり馴染んじゃったのが彼です。ジェルマの軛から離れられたので、それからどうにか彼を動かして彼をシャチの元まで導きました。彼と分離しなかったらそのまますぐにシャチ連れて海に飛び込んでた可能性あります。それくらい歪んでました。シャチの呼びかけで何とか正気に戻ったという感じです。
彼と分離したのは、シャチとの接触(強姦ともいう)で一旦は満足しちゃったからです。つまりあそこはペンギンだけ満足してたという…うん、改めて書き出してみると最低だな、と思います。歪んでるから仕方ない。
彼の事は憎からず思ってますが、何だかんだ振り回したことについてはほんの少し悪かったな、と思ってます(あくまでほんの少し)
シャチの一番は絶対に譲りません(大人げない)
・ローとベポについて
二人ともそれぞれローとベポの生まれ変わり。ベポは何なら本編ベポの子孫でもあります。
ローは北の海で比較的平和な街で医者の父様の元で生まれました。
最初にベポを探してゾウに向かい、その後ローを探してからシャチの元に向かった、という感じ。
死にゆく二人とは対照的に、これからの未来を担うキャラとして描きました。
あと、ジョリーロジャーを燃やすのはやはりローじゃないと駄目かな、と。
その後は書いていませんが何となく想像はつくかな、と思います。
・自警団について
シャチに憧れて最初に一人武術を教えてもらったのをきっかけに、シャチに憧れる人たちで結成されました。
最初の一人がリーダー格の壮年の男です。シャチを倣って鯱のキャスケットを記章にしたのもこの人。最初にシャチを守り神と呼んだのもこの人です。
多分シャチに助けられた人も結構いるんだと思われます。
・ヴォルフとハートの海賊団の皆さま
シャチを置いて逝く事をきっと最後まで悔やんでいたと思います。
ウニが最後まで生き残っていた理由は、ウニも(天敵が多いという弱点を除けば)生物としての寿命がめちゃくちゃ長いからです。
因みに鯱も哺乳類の中ではかなり寿命長いというかほぼ人間と同じくらいの寿命。しかも自然界で、って考えると相当体も丈夫。それでいて天敵もいないとなれば、と考えたのが今回の話を書く最初のきっかけでした。
・プレジャータウンの人々
最初にシャチが海賊を撃退した時に怯えたのはシャチが強すぎた事と、それ以上にシャチが半ば正気を失っていたが故に死体蹴りのような凄惨な光景になっていたからです。
あの後ラッドが皆の説得に当たったりヴォルフの家を訪ねたりとアフターケアしてくれてました。それでも世代交代するまでシャチに芽生えた恐怖心は中々取れなかったと思います。
ヴォルフの発明品をシャチが街に広めた事によってプレジャータウンは結構発展しています。シャチはあくまでヴォルフの功績だと思ってますが、如何せんヴォルフ自身が名前を出すことを禁じたため全部シャチの功績になってます。それがシャチにとっては却って心苦しい模様。
・ラストに出てきた黄色い潜水艦
個人的な見解ではありますが、何となくハートの海賊団の皆にとっての天国はやはりポーラータング号なんじゃないかと。
海賊だった自分たちが天国に行くなんて烏滸がましいし、何より海底という時点である意味地獄みたいなもので、そうなるとやはり彼らの中の天国=ポーラータング号が相応しいんじゃないかと思います。
あの後シャチの後に二人のペンギンもポーラータング号に辿り着いてるといい。多分生まれ変わったローとベポ以外全員いる。彼は最初遠慮しそうだけどハートの皆はきっと受け入れてくれると信じてる。
海底のポーラータング号で暫く羽を休めて、それから一人ずつまた来世に旅立っていくんだと思います。
シャチの死後、物語の視点がシャチ→彼→ローと繋がっていく構成はアイヌ文学を参考にしました。
シャチの神様といえば一番に思い浮かぶのはやはりレプンカムイだったので。
シャチ君に対して夢見すぎな気がしないでもないですが、まあいつもの事なので気にしないでやって下さい(笑)
ラスト2ページはこの作品のテーマを象徴するものです。
「手を繋ぐ」「ゆりかごから墓場まで」この二つが今回のテーマでした。
ラストページの対比は特にそれが顕著だと思います。あそこを書きたいが故に書いた話でしたので、ラストページを書ききった後の達成感と虚無感半端なかったです。
ラストページに出てきた赤ちゃん二人は過去の二人でも生まれ変わった二人でもどちらとも取れるし、どちらでもいいと思います。
それでは、ここまで長々としたあとがき(という名の良い訳)にお付き合い下さりありがとうございました