ハーデスは、家路を急いでいる。
遅くなってしまった。
もう日付も変わろうかという時間だ。
先に寝ているようにと伝えたが、彼女のことだ。おそらく、起きて待っていることだろう。
オートロックのエントランスをくぐり、エレベーターを降りて、ようやっと我が家に到着する。
もしかしたら寝ているかもしれないと考えて、いつもより静かに玄関を開ける。
廊下の奥。リビングのドアから明かりが漏れている。やはり、まだ起きていた。
「おかえりなさい、ハーデス」
「ああ。今帰った。……なんだそれは」
しかし、珍しく玄関までの迎えがないことを訝しみながら足を運べば、見覚えのないそれに彼女は捕らえられていた。
都内のタワーマンションに彼女と共に暮らすようになって早半年。
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