②記憶喪失(1人大切な人の記憶を失う) 「キラ!」
慌ててアスランが駆け込んだ先は、プラントにあるザフトの軍基地内にある医療施設だ。かつてアスランがザフトに居る頃、何度か世話になった事もある場所だ。
「アスラン、お静かに」
「貴様ここを何処だと思っている!? いくら心配だからと言って駆け込むな!」
「いや、イザーク、お前の声も大きすぎるからな?」
先に到着していたラクス、イザーク、ディアッカがそれぞれアスランを注意する。ディアッカはイザークの注意ではあったが。
「⋯⋯す、すまない。それで? キラは?」
「まだ治療中ですわ。私達もまだ知らされておりません」
「そうか⋯⋯それで、何故こんなことに? 確か今日は軍での重要会議があったんじゃないのか?」
「そうだ。その会議前に自爆テロを起こした奴が居てな。それにキラが巻き込まれた」
「お前が着いていながら何故キラが巻き込まれたんだ!」
思わずイザークに詰め寄ると、イザークも負けず大きな声を上げる。
「そんな事は俺が一番分かっている! 言い訳もするつもりは無い! キラを守れなかったのは事実だからな 」
「まぁまぁ、アスランも落ち着けって。イザークも警戒は強めてたんだぜ? ただタイミングが悪かった。当初からテロの目的がラクスだと言う情報が入って、キラもイザークも厳重な警戒をしてたんだ。ラクス達評議会メンバーも軍の重要会議に参加すべく来た時に」
「私が連れていた1人がテロの首謀者でした。あの方は初めから私ではなくキラを狙っていたのです。私がもっと早くに気が付いていれば⋯⋯」
ラクスを守る為に、至近距離で爆発に巻き込まれたキラは、爆発の衝撃で倒れた拍子に頭を打ち付けたそうだ。 爆発はしたが威力はそう大したものでは無かったようで、首謀者も火傷を負い治療を受けているそうだ。
「とにかく今はキラの事だな。首謀者の件はイザークに頼む」
「当たり前だ!オーブ所属の奴にザフト内で起こった処理をさせられる筈がないだろうが!」
「だから、イザーク、声が大きいって」
丁度その時キラを治療していた医師が処置室から出てきた。
「申し訳ないのですが、ここは医療機関ですので、静かにお願いします」
ふふせ
「ヤマト准将でしたら目を覚まされてますよ。頭を打った為少し混乱はしている様ですが、怪我も大したことは無さそうです。検査もひと通りしましたが、特に異常は無さそうでした。ただ、少し記憶の混濁があるかもしれません」
「⋯⋯例えば?」
「一時的な記憶の欠如の可能性も捨てきれません。まぁあくまでも可能性ですので、なにか異常が見られるようなら我々を呼んでください。今日は念の為入院をして頂ければ」
医師の言葉にラクスが頷く。
「分かりましたわ。キラのに振られているか仕事は⋯⋯」
「それはジュール隊で引き継ぎますよ。それで、今もうキラには会っても問題ないのか?」
「ええ、構いませんよ。私は入院の手続きなど準備をして参りますので」
医師はそう言い残し、慌ただしくその場を後にした。
「とにかくキラに会ってみないとハッキリした状態は分からないな」
4人は顔を見合せて頷くと処置室へ入る。椅子に座るキラの頭には包帯が巻かれ、手にも包帯が見えた。点滴の針も二の腕に刺されている為痛々しい姿だった。
「あ、ラクスにイザーク、ディアッカ! ごめんね。心配かけて」
キラは特に痛がる様子もなく3人に声をかける。そこで全員違和感を覚えた。
「キラ、怪我もそう酷くなくて安心しましたわ」
「うん。少し倒れた時に頭をぶつけた際切ったみたいで、ここ縫って貰ったんだ」
キラはラクスに話をする。キラからの視線はアスランに届いている。届いているのだが、何故かキラの口からアスランの名前が出る事がなかった。
気にしながらも、イザークとディアッカはキラの無事を喜ぶ。しばらく話をしていたが、ふとキラが沈黙した。
「⋯⋯あのさ、ラクス。あの人、誰?ラクスの知り合い?」
アスランの方を見つめ、キラはそんなことを言った。
これが医師の言っていた“一時的な記憶の欠如”なのだろうか。だとしたら、オレはどうしたらいいんだ?
直ぐに医師を呼び、キラに検査を行う。
結果はキラの記憶から、アスランに対する記憶が消えていた。
今までの記憶はある。フリーダムに乗った事も、ザフトにいる事も。幼少期の記憶もあるにはあったが、トリィをくれた人の顔が思い出せないとキラは泣きそうな顔をする。
「無くしちゃいけない、大切な人なのに⋯⋯僕は」
アスランは泣きそうなキラの手を握る。今のキラにはアスランへの記憶が無い。だが、泣きそうなキラを放っておけなかった。
「えーと⋯⋯君は?」
「アスラン・ザラだ。キラの幼馴染だ」
「え? 幼馴染⋯⋯?」
困惑な表情を浮かべたキラだったが、アスランの名前を言った瞬間、ズキリと頭が痛んだ様子で顔を歪める。
「キラ、大丈夫か?」
「アスラン⋯⋯、アスラン⋯⋯。そうだ、君はアスランだ」
キラははっきとアスランの名前を呼んだ。顔を見て、キラの目から涙が零れる。
「アスラン! アスランッ! 僕、君の事! 忘れっ!」
「大丈夫だよ、キラ。直ぐに思い出してくれたんだ。一時的に混乱してただけだよ」
「君は、僕にとって、大切な人なのに! 忘れてごめんねっ!」
「いいよ。思い出してくれたからそれで」
本当はキラに忘れられて辛かったが、直ぐに思い出した為すぐに立ち直ることが出来た。
ちらりとラクス達を見ると、はぁーとため息をつかれ、治療室にはキラとアスランのみ残ることになった。
「キラ、顔を上げて」
静かに泣くキラの顔を、両手ではさみ上向かせそのまま口にキスを落とす。
いきなりのアスランの行動に、キラは驚きの余り涙が止まり固まった。
「⋯⋯これで許してやる。でも、キラに誰?なんて言われるのは二度とごめんだからな」
そう言ってまたアスランはキラにキスを送ったのだった。
その後、アスランの歯止めが効かなくなる前に部屋に突入してきたラクスとイザークによって引き剥がされ、キラの怪我が治るまでアスランは立ち入り禁止になったのだった。
ラクスいわく、アスランがオオカミになる可能性が高いからですわ!との事で、キラが復帰する前に休暇をもぎ取らせることを決めたアスランだった。
性癖パネル②は記憶喪失で想い人だけ忘れちゃうという物でした。運命後~種自由までのあいだのアスキラという事でこんな仕上がりに。多分キラの怪我が完治したら、アスランに喰われます。(断言)
まるぽさん、参加ありがとうございました!