暁闇夕暮れが嫌いだ。いや、正確に言うなら日が沈んで夜が来るのが嫌なんだ。まだ宵のうちから、早く夜が明けちまえ、とすら思う。
昼間はましだ。やることがたくさんあるから。食べ物を探して、パピルスの面倒を見てやって、ニンゲンを……時間がいつのまにか過ぎていく。それが何であってもすることがあるっていうのは……いいもんだ。余計なことを考えずに済むからな。腹の虫が鳴くのさえ我慢すれば。
けど夜は嫌いだ。コアが壊れちまったホラーテールでは夜、急激に気温が下がる。スケルトンだって寒いものは寒いし、ソウルだって冷える。だから夜はこうしてベッドに腰かけたまま、失った眼のことを考え、明日の食べ物のことを考え、狂ったパピルスのことを考え……まんじりともせずに、凍えた気持ちでただ夜明けを待つのが癖になっちまった。
_____Knock,knock
ノック?こんな時間に、しかも律義にノックなんてするやつはここにはいない……いや、いるか。「入れよ」やっぱりだ。ドアのすき間からのっそりと顔をのぞかせたのはマーダーだった。
「飲むか」と手に持ったウイスキーの瓶をぶらぶらさせる。両のポケットが妙にふくらんでるのは、グラスが入ってるんだろ。マーダー、お前も眠れないのか。いや、眠らないのか。俺はうなずいて身体をずらし、隣に場所を空ける。
夜明けが嫌いだ。いや、正確に言うなら一日の始まりである朝が来るのが嫌だ。昨日も今日も、明日も延々と繰り返される日々にうんざりさせられる。
夜はましだ。EXP狩りは夜の方が捗るし、顔を見られないのも都合がいい。ニンゲンは昼間に来ることの方が多いから、夜のうちにLOVEを上げるのは合理的だ……なあ、パピルス?どうせ眠れないんだから、働いた方がいいに決まってるよな?兄ちゃん、怠けんボーンじゃないだろう?
だが朝は嫌いだ。殺して、殺して、殺して、誰もいなくなった俺のダストテールに、朝の光だけがまぶしく差し込む。まるでいつもの平和な一日が訪れでもしたように。俺の罪を暴き立て、断罪するような朝の陽の光が嫌いだ。俺は薄暗い部屋の中で身を縮こませて夕暮れを待つ。陽の光を浴びれば塵になってしまう吸血鬼のように、ずっと夜が続けばいいと願いながら。だが、おかまいなく夜明けはしらじらとやってくる。
だから……こんな夜でもない朝でもない、暁の時刻に俺は。
______Knock,knock
……やはり起きてたな、ホラー。お前は……起きてると思っていた。お前もまるで、俺が来るのをわかっていたようじゃないか。だがそんなこと、どうだっていいさ。今のこの時間を、お互い酩酊にまかせてやり過ごせれば、それでいい。そうだろう?ホラーの隣に腰かけ、琥珀色の液体を注いだグラスをチン、と鳴らせば。
黎明の時、それを焦がれるもの、忌み嫌うもの。酒を交わしながら、ひとときの夢を見る。決して重なることのない、それぞれの夢を。