まだみぬきみへ「あ」
思わず声が出た。
見慣れたアパートの階段からこれまた見慣れた高校指定ジャージを着た大男が大きく足音を立てて降りてきた。慌てているように見えて、実はそれほど慌てていないのは短い付き合いでもよく分かる。
ふらふら、よたよた、と。
その足取りは限りなく危うい。
今なら小学生でも勝てそうだ。
大きな図体のわりに普段の生活では基礎能力の半分も発揮していないように見える。今だってこんな時間にこんなところでぐずぐずしているところをみると朝寝坊に違いない。紅葉の見ごろも過ぎ去ろうとしているこの時期、全国と冬の選抜を逃した陵南高校バスケットボール部は、部員一丸となって切磋琢磨し年明けの新人戦に向かっていた。だが夏季の最盛期と比べれば多少はペースは緩やかだ。
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