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    SD仙越小説倉庫です。
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    2024.6.7
    仙越SS ひらブー用 仙(→←)越
    高校二年の仙越未満。

    #仙越

    トンビにアジフライ そのかっぱらいは仙道の好物を光の速さで持ち去った。
     ピーヒョロロロと、あえなく。
     
     
     駅沿いの国道から浜に降りると早朝から散々走り込まされた記憶がよみがり、みめよきともっぱら評判の仙道もこれには苦い顔になる。江ノ島を背に七里ヶ浜まで約1キロ半。これを数往復した後はサーファー横目にラントレ三昧。出勤前に波乗りとは、なんて贅沢な時間の使い方。自分も登校前に堤防釣りとでも洒落こみたいものだ、なんてぼんやりしつつもノルマをこなし終えた時には膝が笑っていたのはもう数時間も前の話。今は三浦半島を背にだらだら向かう先は隣駅の腰越港。部活が休みの放課後は、二人か四人で何処か連れ立って遊びに行くことが多かった。船揚場が見えてきて、今日は何が揚がったのかな、なんて予想し合う。仙道は、ここの直売所で売られるアジフライが好物だ。一人で訪れる時は白飯持参でそのまま店内で食べてしまうが、今日は皆で持ち帰りにしてもらい仙道の部屋でBリーグファイナルを観ながら晩飯前の腹ごしらえだ。ホワイトボードのお品書きに目当ての魚と価格を見とめると、いつもより安値が付けられていて顔がほころぶ。保存容器に入れてもらい店をあとにして、行儀悪いとわかっているがまぁまぁひと口、と齧ったところでこんなに大きなアジフライは久しぶりだと思い立ち、高波に挑む勇猛果敢なサーファーたちを背景にスマートフォンで記念にひとつ。
    「仙道っ」
     越野の声と同時に頭と背を屈められて、気付いた時には手にしていたアジフライは空の彼方へ。
    「あーあ」
    「ばか!ここでは食うなって言っただろ!」
    「ひと口だけだったんだよ…」
     まるで母親に叱られる小学生だ。
     鳶に奪われたアジフライを見送るハメになりしょんぼりしてたら越野が自分の分のアジフライを半分こしてくれた。
    「優しいなぁ。チュウしてやろーか」
    「ぶんなぐるぞ」
     
     
     日が長くなり、この時間でもまだまだ太陽は沈まないが気温と日差しは和らいでくる。
     サンセットサーフィン。
     日が沈むまで波に挑み続けるサーファーたち。穏やかなひとときだ。
     ぼんやりと、少し先を歩く越野と植草をなんとも無しに眺める。監督田岡の秘蔵っ子、陵南のガードコンビはフォワードコンビと違って意外とおしゃべりだ。部活のこと、クラスのこと、来週から始まる映画のこと。映画か…最後まで起きてたためしがねぇ。仙道がぼそっとこぼした言葉に福田は無言で肯定した。
    「越野って最近あれ言わないよな、彼女ほし~って」
    「…そんなに言ってたか?…言ってたか…」
    「どうした、好きなこでもできた?」
    「好きっていうか」
    「へぇ、だれ」
    「……」
     越野は黙って空を見上げていた。植草もそれに習ってみるが空に答えがあるわけでもない。仙道は、夕日に染まった越野の後ろ姿を、ただただじっと、穴のあくほど見つめていた。
    「トンビに油揚げでもかっさらわれたような顔している」
    「…そんな顔してるか」
    「あぁ、油揚げじゃなくてアジフライだったか」
    「エー…」
     ひと口しか食ってないアジフライ。
     越野なんて、越野なんて。
     俺はまだ、手も繋いだこともないのに。
     
     ピーヒョロロロと、にくい捕食者はゆっくりと越野の遥か上空を旋回する。

     あぁだめだ、これ以上は。

    「越野」
     呼びかけると夕日よりも赤い顔が振り返る。
    「俺、食い足りねえんだけど」
    「また持ってかれるぞ!」
    「大丈夫大丈夫」
     仙道は越野の手を取り強く握りしめる。
     越野は突然の行為に何事かと思うより、見慣れたはずの仙道の綺麗な顔に息を呑む。
     
    「今度は、丸ごと全部食っちまうから」
     
    (お読みいただきありがとうございました!)
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    775

    DOODLE2024.8.7
    ひらブー
    1年生の仙越未満です。
    ⚠️少し嫌な先輩がいますが説明だけで出てきません。
    【お題】
    ななこさんには「夏が始まる」で始まり、「素敵な色になれたらいい」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。
    いろづくまえに 夏が始まる。
     例年よりも長く続いた梅雨が明け、学生達の待ちに待った夏休み。
     陵南史上初の県大会ベスト4の成績をおさめた男子バスケットボール部は今季より他校から練習試合の申し込みが殺到した。目的は天才ルーキー仙道彰。どの高校も仙道攻略に余念が無い。
     今日は市内の市民体育館で練習試合。スクールバスから備品を運ぶ一年生とレギュラー落ちした二年生も、夏を迎える前に監督田岡の課す厳しい練習内容に付いていけず半数以下になっていた。
     窮屈な座席な上に同じスタメンの上級生から五月蝿く絡まれて少しばかり荒んだ気持ちでバスを降りた仙道の目の前に、小さな身体で大容量のウォータージャグを抱え持つ越野がいた。同級の植草と部内でいちばん小柄なチームメイト。だが誰よりも、それこそいけ好かないスタメンよりも負けん気だけは強かった。仙道はいつも、気付けばその姿を探していた。なぜかしら、どこか放っておけなくて、持つよと声をかけるが越野はそれに首を振った。
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    775

    DOODLE2024.6.7
    仙越SS ひらブー用 仙(→←)越
    高校二年の仙越未満。
    トンビにアジフライ そのかっぱらいは仙道の好物を光の速さで持ち去った。
     ピーヒョロロロと、あえなく。
     
     
     駅沿いの国道から浜に降りると早朝から散々走り込まされた記憶がよみがり、みめよきともっぱら評判の仙道もこれには苦い顔になる。江ノ島を背に七里ヶ浜まで約1キロ半。これを数往復した後はサーファー横目にラントレ三昧。出勤前に波乗りとは、なんて贅沢な時間の使い方。自分も登校前に堤防釣りとでも洒落こみたいものだ、なんてぼんやりしつつもノルマをこなし終えた時には膝が笑っていたのはもう数時間も前の話。今は三浦半島を背にだらだら向かう先は隣駅の腰越港。部活が休みの放課後は、二人か四人で何処か連れ立って遊びに行くことが多かった。船揚場が見えてきて、今日は何が揚がったのかな、なんて予想し合う。仙道は、ここの直売所で売られるアジフライが好物だ。一人で訪れる時は白飯持参でそのまま店内で食べてしまうが、今日は皆で持ち帰りにしてもらい仙道の部屋でBリーグファイナルを観ながら晩飯前の腹ごしらえだ。ホワイトボードのお品書きに目当ての魚と価格を見とめると、いつもより安値が付けられていて顔がほころぶ。保存容器に入れてもらい店をあとにして、行儀悪いとわかっているがまぁまぁひと口、と齧ったところでこんなに大きなアジフライは久しぶりだと思い立ち、高波に挑む勇猛果敢なサーファーたちを背景にスマートフォンで記念にひとつ。
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    DOODLE2024.4.17
    高校三年生の仙にょ越です。
    『それは、クラゲだけが知っていた』の続きです。
    ⚠️越野くんが女の子になっていますがあんまり女の子らしくないので普通に読めると思います。
    診断メーカー【あなたに書いてほしい物語】
    ななこさんには「海に向かって叫ぶ夢を見た」で始まり、「どうかお幸せに」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。
    いぬもくわない海に向かって叫ぶ夢を見た。
    「ばかセンドー!!」
    あれ、こんなに高かったかな、声。


    遊泳禁止の七里ヶ浜は波が高く泳ぎには適さないが、サーフィンやヨットといったマリンスポーツを楽しむ者たちには隠れた名所として人気がある。右手にはライトアップされた江ノ島のシンボルタワー、左手には三浦半島。マジックアワーの幻想的な空。そんな絶好のロケーションにそぐわない罵倒の叫び。
    「浮気者ー!!今度こそ別れてやるー!!」
    これは夢だ。そして先程から叫んでいるのは自分であると越野は理解していた。だが、それにしては声が高い。そして何よりも、
    『なんでスカートはいてんだ』
    スカートどころかセーラー服なのだが。
    「はっ?!」
    海面に浮上したかのように唐突に意識が戻った。
    1935

    775

    DOODLE2024.4.14
    高校一年生の仙越未満です。
    ⚠️仙道さんに適当に遊んでいる女性がいます(説明だけで出てきません)
    診断メーカー【あなたに書いてほしい物語】
    ななこさんには「小さな嘘をついた」で始まり、「本当は知っていた」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字)以上でお願いします。
    それは、クラゲだけが知っていた 小さな嘘をついた。
     ほんの出来心。
     引き止めたくて出た、咄嗟の苦し紛れのそれ。


    「事故物件?!」
     作文用紙に走らせたシャーペンの先がボキリと折れた。夏休みも終盤を迎える八月下旬、越野が仙道の部屋で課題の読書感想文を終わらせるべく奮闘していた時だった。あらすじと結末部分しか読んでいない本の感想を捻り出すのは容易では無く、うんうん唸っている時にそういえばさぁ、とひどくのんきに仙道が話し始めた。
    「うわ、ほんとだ……」
     越野はスマホで事故物件を集めたサイトを開き、少し緊張しつつ住所を入力して検索をかけると見事にこのアパートが引っ掛かった。
    「よく決めたな」
    「母さんにも言われたよ」
     田岡の熱心なアプローチのおかげで陵南へ進学を決めた仙道は、物件探しに父親と鎌倉へ訪れた。そこで案内された曰く付きのアパートは、築年数はそこそこ経っているがこの部屋だけはリフォーム仕立ての新築同然の内装で、しかも賃料は他の部屋に比べて驚きの格安物件だった。高校からも最寄り駅からも近く何より安い、おまけにリフォーム仕立てとくれば特段に断る理由は無かった。その場で諸々の契約書を交わし、東京へ帰る前に海岸沿いの定食屋で湘南名物のしらす丼を食べながら「掘り出し物件だったなぁ。母さんも喜ぶぞ」と笑っていた父だったが詳細を聞いて角を生やした母に雷を落とされていた。
    2037

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    DOODLE2024.6.7
    仙越SS ひらブー用 仙(→←)越
    高校二年の仙越未満。
    トンビにアジフライ そのかっぱらいは仙道の好物を光の速さで持ち去った。
     ピーヒョロロロと、あえなく。
     
     
     駅沿いの国道から浜に降りると早朝から散々走り込まされた記憶がよみがり、みめよきともっぱら評判の仙道もこれには苦い顔になる。江ノ島を背に七里ヶ浜まで約1キロ半。これを数往復した後はサーファー横目にラントレ三昧。出勤前に波乗りとは、なんて贅沢な時間の使い方。自分も登校前に堤防釣りとでも洒落こみたいものだ、なんてぼんやりしつつもノルマをこなし終えた時には膝が笑っていたのはもう数時間も前の話。今は三浦半島を背にだらだら向かう先は隣駅の腰越港。部活が休みの放課後は、二人か四人で何処か連れ立って遊びに行くことが多かった。船揚場が見えてきて、今日は何が揚がったのかな、なんて予想し合う。仙道は、ここの直売所で売られるアジフライが好物だ。一人で訪れる時は白飯持参でそのまま店内で食べてしまうが、今日は皆で持ち帰りにしてもらい仙道の部屋でBリーグファイナルを観ながら晩飯前の腹ごしらえだ。ホワイトボードのお品書きに目当ての魚と価格を見とめると、いつもより安値が付けられていて顔がほころぶ。保存容器に入れてもらい店をあとにして、行儀悪いとわかっているがまぁまぁひと口、と齧ったところでこんなに大きなアジフライは久しぶりだと思い立ち、高波に挑む勇猛果敢なサーファーたちを背景にスマートフォンで記念にひとつ。
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    775

    DOODLE2024.4.14
    高校一年生の仙越未満です。
    ⚠️仙道さんに適当に遊んでいる女性がいます(説明だけで出てきません)
    診断メーカー【あなたに書いてほしい物語】
    ななこさんには「小さな嘘をついた」で始まり、「本当は知っていた」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば7ツイート(980字)以上でお願いします。
    それは、クラゲだけが知っていた 小さな嘘をついた。
     ほんの出来心。
     引き止めたくて出た、咄嗟の苦し紛れのそれ。


    「事故物件?!」
     作文用紙に走らせたシャーペンの先がボキリと折れた。夏休みも終盤を迎える八月下旬、越野が仙道の部屋で課題の読書感想文を終わらせるべく奮闘していた時だった。あらすじと結末部分しか読んでいない本の感想を捻り出すのは容易では無く、うんうん唸っている時にそういえばさぁ、とひどくのんきに仙道が話し始めた。
    「うわ、ほんとだ……」
     越野はスマホで事故物件を集めたサイトを開き、少し緊張しつつ住所を入力して検索をかけると見事にこのアパートが引っ掛かった。
    「よく決めたな」
    「母さんにも言われたよ」
     田岡の熱心なアプローチのおかげで陵南へ進学を決めた仙道は、物件探しに父親と鎌倉へ訪れた。そこで案内された曰く付きのアパートは、築年数はそこそこ経っているがこの部屋だけはリフォーム仕立ての新築同然の内装で、しかも賃料は他の部屋に比べて驚きの格安物件だった。高校からも最寄り駅からも近く何より安い、おまけにリフォーム仕立てとくれば特段に断る理由は無かった。その場で諸々の契約書を交わし、東京へ帰る前に海岸沿いの定食屋で湘南名物のしらす丼を食べながら「掘り出し物件だったなぁ。母さんも喜ぶぞ」と笑っていた父だったが詳細を聞いて角を生やした母に雷を落とされていた。
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    DOODLE2024.8.7
    ひらブー
    1年生の仙越未満です。
    ⚠️少し嫌な先輩がいますが説明だけで出てきません。
    【お題】
    ななこさんには「夏が始まる」で始まり、「素敵な色になれたらいい」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以上でお願いします。
    いろづくまえに 夏が始まる。
     例年よりも長く続いた梅雨が明け、学生達の待ちに待った夏休み。
     陵南史上初の県大会ベスト4の成績をおさめた男子バスケットボール部は今季より他校から練習試合の申し込みが殺到した。目的は天才ルーキー仙道彰。どの高校も仙道攻略に余念が無い。
     今日は市内の市民体育館で練習試合。スクールバスから備品を運ぶ一年生とレギュラー落ちした二年生も、夏を迎える前に監督田岡の課す厳しい練習内容に付いていけず半数以下になっていた。
     窮屈な座席な上に同じスタメンの上級生から五月蝿く絡まれて少しばかり荒んだ気持ちでバスを降りた仙道の目の前に、小さな身体で大容量のウォータージャグを抱え持つ越野がいた。同級の植草と部内でいちばん小柄なチームメイト。だが誰よりも、それこそいけ好かないスタメンよりも負けん気だけは強かった。仙道はいつも、気付けばその姿を探していた。なぜかしら、どこか放っておけなくて、持つよと声をかけるが越野はそれに首を振った。
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