よひらのおわりに 紫陽花の花終わりは夏の始まりだ。
たとえバスケ部にとっての夏は事実上終わってしまったとしても、だ。
仙道は、花後の剪定をされた紫陽花を眺め、これから落とされるであろう田岡の雷と、最近どこか俯くことが多くなった越野の姿を目に浮かべ、晴れ渡る早朝の空を見上げた。
「あ、ここもボウズにされてら」
港町の鎮守神社は相模湾を望む岬の最先端に鎮座する。参道のド真ん中をノシノシと歩む仙道の言葉に、端を歩く越野は首を傾げる。駱駝のように濃く長い睫毛を持つ視線の先には花を落とされ枝葉だけのさびしい紫陽花の姿があった。
「落とした花は捨てちまうのか?」
「落とされても最期の役割があるんだよ」
ほれ、と越野の指が先にある手水舎に向かう。昨日か今日、落としたのだろう。未だにみずみずしいが少し退色を始めた花だけがところ狭しと手水鉢に盛られている。
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