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    Asahikawa_kamo

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    Asahikawa_kamo

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    リプきたセリフで一コマ描く のタグで和鳥さん(@.sof_watori)から頂いたセリフ「大丈夫ですよ、全部夢なので!」で書きました。fwがrfの死をループし続ける話です。

     指折り数えていた結末など、もういくつあったかなんて覚えていない。ジョーカーしかないババ抜きなんて最初からゲームも選択肢も与えられていないも同然だった。それでも、醒めることのない悪夢を見続けていたのだと思う。
     はじめってどこだったっけ。おわりってなんだったっけ。忘れることって、どんなことだったっけ。

    「……あー……」

     目の前には、見慣れた鮮血が広がっている。嫌というほど記憶にある、最早この瞼の裏さえ赤色に染まっているに違いない。やったのは誰なんだ、と視線を揺蕩わせれば、鮮血の溜まりの端で知らない顔の男が倒れていた。腹から万能ナイフの柄をちらつかせて、もうきっと黙した後のようだった。
     鈍った思考の中で、とりあえず人を呼ぶべきかと気付く。どうせ数時間後には『なかったことになる』とはいえ、流石にそのままにしておきたくはないと血溜まりの中で靴裏を蠢かせると、誰かが呻いた声がした。

    「ふ、わ、く……?」

     零れた音は、もちさんのものだった。

    「もちさん」
    「ああ、あ……ぶじ、」
    「……ん、俺は無事だよ。大丈夫」
    「よか、った」

     どう見たって一番無事じゃないのは自分のはずなのに。ひゅうひゅうと風穴の空いた喉で、もちさんが笑う。なんでだよ、なんて言葉がかけられるわけがない。救えなかったのは俺の方だから。

    「……大丈夫よ、もちさん。全部夢やから」
    「……ゆめ、」
    「そう、夢。やから、ゆっくりおやすみ」

     薄まった黄緑の光が、徐々に色を失いながら閉じられていく。生が喪われていく。何もできやしない俺の前で、無力さをまざまざと見せつけながら。
     嘘しか吐けない男に思い出をくれた人々が死んでいく。じゃあ、俺は何も返せないまま独りを嘆くことしか出来ないのか。──その答えは否だった。薄い情だけで息ができるほど、俺は生きることが上手でなかった。
     だから覚えなどなくなるほど、それでも忘れることもかなわないほど、俺はまたここを起点に繰り返す。もちさんを、社長を、甲斐田を生かすための明日を探すために。

    「俺が死ぬ分には構わんのになぁ」

     百点の取れないテスト用紙。足りないあと一点が自分だと気付くには、まだ時間がかかりそうだった。
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    Asahikawa_kamo

    DONE
    第四本目 加賀美ハヤト 「ホテルの最上階」 昔、まだライバーになる前の話をひとつ、話させてください。
     仕事の出張の折に、とある地方のビジネスホテルへ滞在したことがありまして。一泊二日程度の短いものだったんですが、いかんせん地方ということもあってホテルが少なかったようで、少し駅から離れたところに取っていただいたんですね。総務の方がせめてと最上階の部屋を抑えてくださって、チェックインしてエレベーターを降りると部屋が一部屋しかなかったんです。
     実際広くて綺麗ないいホテルでしたよ。眺めも良くて、よく手入れが行き届いているなと感じました。……ただ、少し不自然なところがいくつかありまして。
     まずひとつすぐに思ったのは、廊下の広さと部屋の広がり方がおかしいと感じたんです。私が当時泊まった部屋はエレベーターを出て真横に伸びた廊下の右突き当たりにありました。部屋の扉を開くと目の前に部屋があるわけですが、扉がある壁が扉に対して平行に伸びてるんですよね。四角形の面にある、と言えばいいでしょうか。扉の横の空間がへこんでいて、そこにまた部屋があるなら構造上理解出来るんですが、最上階はテラスなどもなかったので、不思議な形をしているなと思ったんです。
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