ふと意識が浮上して、雛乃秀は目を開けた。ぼんやりとした視界に、何度か瞬きをして辺りを見回す。
――どこだ、ここは。
見たことのない景色に雛乃は慌てて起き上がった。しかし激しい頭痛と眩暈に襲われて、ベッドに沈む。痛みで閉じた目をもう一度開いてみるが、変わらない視界に雛乃はため息を吐いた。
――調べるしかないか。
痛む頭を押さえながら、雛乃は身体を起こす。さらりと視界を遮るものがあり、手に掴んだところでノックする音が響いた。
「お嬢様、失礼いたします」
聞き慣れない女性の声と言葉に、雛乃は部屋を何度も見回す。何回見ても自分以外誰もいなかった。ではお嬢様とは誰のことだ。
「失礼いたします」
女性がもう一度声をかけながらドアを開けた。そしてその目が大きく開かれる。何かまずいことでもしただろうか。雛乃は固まったまま女性を見つめていると、女性は雛乃のところまで駆け寄ってきて膝をついた。
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